from パリ(田中) – 33 - ノートルダムのクリスマスツリーとミサ曲。

(2009.12.14)
写真を撮ったら、ポンピドーセンターの裏を通って、中華屋へ行く、はずだったのが……。

パリでも新型インフルエンザ(こちらではla grippe Aラ・グリップ・アーと呼んでいる)のニュースが毎晩テレビで流れている。その割に街でマスクをしてる人を見かけるのは皆無だが。私のフランス語の先生の友人がグリップ・アーに罹り、その手伝いなどでレッスンの時間が変更になった。昨晩、先生と電話で予定変更の確認を、なんとか出来た! 私のフランス語、少しは進歩している?のだろうか?そのレッスンが終わって、21番のバスでサン・ミッシェルへ帰ると7時半過ぎ。きょうの晩めしは3区の中華街で湯麺でも食べようか、と一休みしながら考える。C’est une bonne idée!(グッド・アイデア!)ってきょう習ったなあ。そういえば昨日の午後、ノートルダム前にツリーが飾ってあったのを思い出した。夜のイルミネーションも見たいし、サン・ミッシェルから3区まで歩いてもたいした距離じゃないし。

月夜の大聖堂とクリスマスツリーが何やら宇宙的なスケール。セーヌを行く船のライトに冬の木立が白く浮かぶ。
青いツリーのてっぺんには銀の星、大聖堂の上には十四夜の月。上の写真から2時間経過。

シテ島に渡る橋の上からノートルダムを眺めると、昼間見たときよりもツリーが高く見える。ライトアップされた大聖堂の上には冬の青い月が! うーむ、ひとつ俳句でもひねるか。ツリーの下までいって写真を撮っていたら、なんか行列が出来ているのに気づいた。昼間の行列は見慣れているが、夜に鐘楼まで登る観光客もいないだろうし? 先頭に行けば何かわかるかも知れない、と野次馬根性で行ってみる。と、門が開いて並んでいた人が流れ出した。整理券みたいなチケットを入口で見せてる人もいるが、テキトーなだれ込んでる人もいて、なんだか判らないまま紛れ込んだ。聖堂の中に入ってみたら、どうやらコンサートがあるらしい様子。タダで聞けるかと思ったが甘い考えで、係りの人に聞くとあっちでチケットを売ってるよと教えてくれた。何のコンサートだかも知らないまま、まあクラシック音楽からは外れないだろうと、18ユーロ払って会場に入る。

月夜の聖堂には、狸なんか出ない、パリでは。
聖堂の奥の院には、荘厳な雰囲気。

聖堂の真ん中に四角い舞台があって、周囲を囲むように教会の椅子が並んでいた。舞台には小さなオルガンと、見るからに中世の古楽器が置いてある。リュートやガンバ、ビオラ・ダモーレなど。うーむ、これはバロックの室内楽かもしれない、やったー! C’est bien!  ズルして早く入れたので、前のいい席に陣取る。開演は8時半。時間になって牧師さんが何か挨拶して、いよいよ演奏者の入場。指揮者、オルガニスト、弦楽器が7~8人、トロンボーンが4人、ブロックフレーテみたいな管楽器奏者も2人、結構な数のオーケストラだ。ところが、まだ続々と楽譜を持った聖歌隊が続き、舞台の四方にあった15~6×4=60以上の椅子に着席した。そうか、ミサ曲のコンサートだったのか。

12月、ノエルにちなんだミサ曲を聞くには最高の舞台だ。おそろしく天井の高い空間は、思ったほどは残響がない。古楽器の控えめな音色と人の声の天国的なポリフォニックな響きが耳に心地よい。足元がちょっと寒いので、いい気持ちでも眠くはならない。音楽は生に限るなあ。どうやらドイツバロックの曲らしいが、時々イスラム風も混ざる。もちろん初めて聞くものばかり。曲に合わせて、合唱隊がパートごとに舞台を移動するのが面白かった。ソプラノのブロンドの女性が天使に見えてきた。私の目の前に座った合唱隊の少女の楽譜を覗いたら、自分が歌うパートにマーカーでチェックしてあったのが微笑ましい。それにしても、聴衆に背中を向けたままの演奏会というのは、初めての経験だった。

ノートルダム聖歌隊のマントの青がフランス風。
円陣を組んで、何やら秘密結社の儀式みたいな。
カウンターテナーとソプラノがとても美しい。
演奏が終わって、ようやく演奏者の顔が見えた。レ・サックブーティエ・ド・トゥールーズのメンバー。(ポスターで知った)
正面入口横に貼ってあった今晩のポスター。あとから見てもねえ。でも普通は何も知らないまま聞いたりはしないか。

演奏が終わり、舞台のオルガンが珍しくて見に行ったら、オルガニストが蓋を取り外して中を見せてくれた。こんな四角いトコロテンの筒(にしか見えない)から、あんな優しい音が出るなんて、信じられない。たぶんポジティフ・オルガンというタイプだと思う。きょうは通奏低音のパートを受け持っていたのでオルガンの音は目立たなかったが、弦楽器とのデュオも聞きたいものだ。コンサートが終わり教会を出たら、外は急速に冷えていた。氷点下まではないが5℃くらいかな、大陸の寒さだ。もう10時、晩めしの計画は変更だな、家に帰って出前一丁でも作るか。
 

気になっていたオルガン。
どう見ても、心太の突き棒。足踏み式ふいごではなく、モーターで風を送っていたようなので、古い楽器ではなさそうだが、デコっぽくていい感じ。