from ヘルシンキ - 2 - 「“今”しかできないことを選んで」by Sanna

(2010.02.10)

「フィンランド女性に学ぶ 幸せ力」File.01
 Sanna Vahtivuori-Hänninen(40歳)

 
今回は、2児(4歳と6歳)の子育てをしながら、
ヘルシンキ大学所属研究員・プロジェクトマネージャーとして活躍する
Sannaさんのライフヒストリーをお届けします。
Sannaさんの「幸せ力」のポイントは、「今」という視点を大事にすることでした。

 
Work:フィンランドの教育の質を高めたい!

現在の主な仕事は、フィンランドの学校教育における、
ICT(情報通信技術)活用を推進するプロジェクトのマネージャーです。
他大学の研究者や学校教員と連携しながら、国に対して教育政策提言を行うこと。
フィンランドの教育の質を高める活動に奔走しています。

 

History:教育現場でぶつかった問題がきっかけに。

私は以前は小学校の教員をしていました。
何年か教育現場で仕事をするうちに、私はある問題にぶつかったのです。
それは、地域や学校によって教育の質があまりにも違うこと。
教育の質の高さで世界から注目されるフィンランドでも、
地域間、学校間の格差問題は存在するのです。
すべての子どもが、より良い教育を受けられるようにしたい。
そのために、新たな教育ガイドラインやカリキュラムを
国に提案できる立場になろうと考えたのです。
大学院で、子どもの“学び”の可能性を広げてくれるICT活用について研究し、
修士号、博士号を取得して現在に至ります。

Sannaさんの職場であるヘルシンキ大学。
ヘルシンキ大学内の図書室。
ミーティングスペース。

 

Happiness:仕事と育児の両立は恐ろしく大変、同時に大きな喜び。

夫は20歳のときからのパートナー。
15年間、2人ともそれぞれのやりたいことをやってきました。
夫はミュージシャンとして世界中の国を旅し、私は研究者としての活動に夢中でした。
そして35歳で、子どもを授かりました。
子どもが生まれ、キャリアを中断して家にいなければならなくなったとき、
我慢できなくなる瞬間が何度もありました。自由に生きていた頃を度々振り返りました。
でも、重要なことに気づいたのです。
仕事は努力次第で後からでも挽回できるけれど、
子どもと密に過ごせる時間、子どもが幼い時間は、「今」しかない。
そう考えたら、子どもと一緒にいられる瞬間が最高の幸せだと分かったのです。
下の子が2歳になり仕事に復帰してからは、スケジュール管理との戦い。
睡眠やリフレッシュの時間は犠牲にしています。
でも、恐ろしく大変な仕事と育児の両立に、大きな喜びを感じる日々です。

*ある日のスケジュール

 06:30起床 仕事のメールチェック 朝食準備
 07:30子どもたちを起こして、朝食
 08:30子どもたちをデイケアセンター(フィンランドの幼児教育・保育施設)に送る
 09:00職場到着 仕事開始
 16:30子どもたちを迎えに行く(夫と交代で)
 17:30夕食準備 
 18:30子どもと団欒 夕食
 20:30子ども就寝後、仕事を再開
 24:00就寝

 

Dream for next 10 years:子どもたちと航海に出かけたい!

今はまだまだ、仕事と家庭のバランスがとれずに苦しんでいます。
もっと生活の中のハーモニー(調和)を大事にしていかなければ、と思っています。
今後10年の夢は、子どもたちと一緒に航海に行くこと!
大好きな海で、子どもたちと過ごせる時間を作っていきたいです。

趣味の航海を楽しむSannaさん。(Petri Flander氏撮影)

 

Message:「今」しかできないことを選んで。

福祉が充実しているフィンランドでも、依然として仕事とプライベート、
特に子育てとの両立は、女性にとって難しい問題です。
私の経験から1つ思うことは、「今」という視点の重要性です。
一度にすべてを手に入れることはできません。
子どもの幼い瞬間は、「今」しかない。
だから、私は一時キャリアを中断して、子どもといる時間を選びました。
後悔してからでは遅いから、「今」しかできないことは何か?を考えて選ぶこと。
これこそ、幸せになるための大切なポイントだと思っています。

 

—–

インタビューを終えると、Sannaさんはあるものを見せてくださいました。

オフィスに飾っているお子さんの塗り絵。

仕事に追われて行き詰ったとき、この絵を見るとホッとするそうです。
そして、Sannaさんは「今」という瞬間を駆け抜けるように、
笑顔でオフィスに戻っていきました。

 

※この内容は、2010年2月2日取材当時の情報です。