from パリ(河) – 5 - 日曜日の朝市。

(2009.11.02)

パリの日曜日は、敬虔な信仰者であればまず教会のミサから、そうでなければ朝市(マルシェ)での買い物から始まります。9時頃からのそのそと起きだし、コーヒーで目を覚ました後、簡単に身支度をして、買い物かごを持って近所のマルシェへ。

15区のモット・ピケ・グルネルの朝市。この辺りでは地下鉄は地上を走っており、その高架下で毎週日曜日、大きな朝市が開かれる。これは果物を専門に扱う露店。

ほんの少し歴史の話をしますと、パリに最初の市場ができたのは5世紀、パリ発祥の地であるシテ島だったと言われています。1860年には約50軒の露天商が存在し、現在の市場の数は、蚤の市、古本市、ガラクタ市などを含めると91に及ぶのだそう。食材のマルシェは本来朝に出るものですが、最近では、パリジャンの生活スタイルの変化に合わせて、午後市が立つ地区も増えています。

ローストチキンは日曜日の晩餐の定番料理。
色とりどりの野菜。
秋はキノコが旬。日本では見たことのないキノコが並びます。

日曜日の朝市はパリ20区のあちこちで見かけますが、人口が最も多い区である15区には、地下鉄のコンヴァンション(Convention)駅周辺と、それからモット・ピケ・グルネル(Motte-Piquet-Grenelle)駅周辺に大きな市が立ち、とりわけ多くの買い物客で賑わいます。市場には肉屋、魚屋、八百屋、パン屋、チーズ屋、ワイン屋、花屋と全てが揃います。所々で、「ちょっとそこのマダム、このナイフ、トマトでもこんなによく切れるよー。今なら3点セットでお買い得!」と実演販売をやっているおじさんなどがいて「ああ、これは万国共通なんだね」、と親近感を覚えずにいられません。

数種類のりんごや梨が並ぶ店。秋から冬にかけて美味しいリンゴは北西部のノルマンディー地方のものが有名。フレッシュなリンゴジュースも並んでいる。

フランス人の食卓に欠かせないチーズ屋さん。どれも美味しそうで迷ってしまいます。

営業時間は9時から13時過ぎまで。特に新鮮な魚や肉を手に入れたい場合は、早めに出かけることが大切。魚と言えば、フランスでは10年前ほどまでは生で食べられるような新鮮な魚はなかなか手に入りませんでしたが、「すし、さしみ」の普及も一役買ってか、生魚を食べる人が多くなり、魚の鮮度がよくなっています。秋から冬にかけては新鮮な牡蠣やホタテなどの貝類がたくさん並びます。

前回紹介した大西洋沿岸のラ・ロシェルに近い、オレオン島産牡蠣の露店。フランスでは綴りに「R」の付く月が牡蠣の美味しい季節と言われている。つまり、9月(SEPTEMBRE)、10月(OCTOBRE)、11月(NOVEMBRE)、12月(DECEMBRE)、1月(JANVIER)、2月(FEVRIER)、3月(MARS)、4月(AVRIL)。なかでも真冬の牡蠣が最高。
牡蠣はダース売り。細長いのあり、平らで丸いのあり、大きくて分厚いのありと、
種類は実に豊富である。牡蠣の大きさは№0~№6と表記される。数字が小さくなるにつれて、身が大きくなる。つまり№0が最も大きい。

このマルシェで一番人気の魚屋。良い魚屋を選ぶコツは行列ができているかどうかを見ること。魚を一匹買うと、頼めば鱗や内臓を取り除いてくれ、おろしてくれる。さしみやカルパッチョにする場合は、念のために「生で食べられますか?」と聞くほうが安全。

マルシェの楽しみのひとつは、もちろんバラエティー豊かな旬の食材を選べることですが、
マルシェは大事な「会話」、「触れ合い」の場でもあります。フランス人は「コンヴィヴィアリテ(convivialité)」、つまり「親交」をとても大切にする国民。肉屋の主人にあれこれ相談したり、ワイン屋に献立に合うワインのアドバイスを受けたり、列に並んでいる隣の人と一緒に値引き交渉してみたり。皆、たわいのない会話を心から楽しんでいます。別れ際の合言葉は「Bon Dimanche(ボン・ディモンシュ)! —良い日曜日を!」。
さあ家に帰って、残り少ない安息日の時間を楽しむことにしましょうか。

牛肉専門店。骨付きロース、ヒレ肉、煮込み用など種類はいろいろ。
ワインのワゴン。