from ニューヨーク – 12 - 理解する、創造する、語学学校。

(2010.06.22)

渡米前に私が初めに取り組んだのはニューヨークでの語学学校選びでした。
ここニューヨークには留学生、移民向けの語学学校がたくさん存在します。
内容、価格もニーズに応じて様々。

その中で私が選択したのはニューヨーク市立大学付属のハンターカレッジ校でした。
 

アッパーイーストにあり、地下鉄の駅より直結!
創立当初は女子校でした。

この学校を選んだ理由は3つ。ライティングの授業に力を入れていること、同じマンハッタンにある大学付属のなかでもコロンビア大学やニューヨーク大学付属と比較して授業料が格安。また大学付属なので他大学で講師をしている先生も多く、授業の質が高いということでした。
この学校に出会って本当によかったと思っています。
先生と学生が熱心で、毎日膨大に出される宿題にも果敢に取り組んでいる姿勢に刺激をうけ、自分も負けまいと毎日図書館にこもる日々。平日は12時間学校に滞在し、何かを書いては提出。真っ赤になるまで添削されて間違いが無くなるまで再提出の繰り返し。こんな経験は受験勉強の時以来でした(笑)

ハンターカレッジの校訓は
“Use your imagination.”
想像力を使え。というもの。
1870年代に創立されたこの学校はもともと女子校で、女性が社会に出て活躍するためのキャリア支援を強みにして来た学校でした。そのため教職、看護、心理職などの分野に強く、キャリア志向の強い女性が多く集まるのも特徴です。また他の語学学校と違う点は、ライティングに力を入れている事。大学レベルのレポートスキルから童話の創作まで、学生は幅広く「書く」技術を学びます。このため学生は単なる知識吸収の作業ではなく、自らの想像力と経験の引き出しを形にする事が求められるのです。

またこの学校のカリキュラムでは、1ターム(2ヶ月間)の間に一つの小説を読みこみ、アメリカの歴史と文化について議論し合います。

“The Great Gatsby”を題材に2カ月の授業が進められました。

アメリカの歴史を深く理解するためにディープなテーマを描いた小説が選ばれます。この小説にはアメリカの階級社会、モノとカネ、地位と名声を追う人々、1920年代の女性にとって、結婚が何を意味していたか。そんな事を読み取りながら延々と議論します。

多くのアメリカ人の中に今でも深く根を張る「階級意識」を学ぶ事で、少しだけこの国を理解できたような気がしました。こんな贅沢な暮らしをできた1920年代あってこその、今のアメリカなのかもしれません。
 

晴れた日は徒歩3分の距離にあるセントラルパークでディスカッション。
小説の登場人物になりきって、プレゼン大会を開催。

最後にチームアクティビティとしてクラス全員で、その小説をモチーフにした映画を製作しました。

日々授業を受けるだけではなく、チームワークやリーダーシップ、意見をまとめることなど、様々な事を勉強します。当然、国も年齢も違う生徒が集まるので時には衝突もしました。私もやむを得ずクラスメイトに厳しい事を言わざるをえない場面がありましたが、なんとか遠慮せず自分の意志を伝えられ、その事がきっかけで関係も深められたと思います。学校が始まった当初は「カオリは何も意見を言わずにいつも笑っているけど、日本人て、そういうものなの?」と聞かれたりしていましたが、最後は「なんだ、言うときは言えるんじゃない」という評価に。これもアメリカが私にくれたひとつのスキルなのかもしれません。

ミシェル先生。

ミシェルは私たちを家族のように大切にしてくれました。英語の知識だけではなく、人を大切にする気持ちを、まっすぐに生徒に伝えようとしてくれた先生です。彼女の誕生日には皆でケーキとペンダントを皆でプレゼントしました。

ケイト先生。
ケイトは十人十色で意見のまとまらないクラスをいつもサクっとまとめてくれる偉大な人。ざっくばらんで頭のきれるかっこいい先生でした。
韓国人のイザベル。
中国に留学中で既に韓・中バイリンガルの大学生。就職難の韓国で語学武器にするため大学を休学して英語を勉強しに来ました。
アルゼンチン人のセルジオ。
母国では国語の先生でしたが、アルゼンチンの子供達に国際感覚を身につけてほしい、と英語の先生を目指して渡米。
ブラジル人のバレリア。
母国では看護婦をしていました。アメリカ人のフィアンセと間もなく結婚予定。ニューヨークで看護学校への入学準備中。

ここで勉強、仕事、恋愛、など何でも相談しているうちに何とか慣れない英語でも意思疎通ができるようになっていった気がします。使う言語の違う人と「親友」になれたことは奇跡のような経験でした。

一度社会に出てからする勉強はやはり学生時代とはひと味違った経験でした。それもニューヨークという世界から勉強したい人達が集まる都市で、色んな価値観と文化を吸収しながら皆で議論し合った経験は大切な宝物です。