斎藤理子のミラノ万博から地中海まで - 1 – 食を未来につなげるために。
地球規模の課題がミラノ万博のテーマ。
(2015.07.03)
5月1日から始まったミラノ万博2015。10月31日までの半年間に渡り、ミラノ郊外北西部に広がる100万平方メートルの会場で、145カ国、5つの国際機関などの参加で開催されています。テーマは「地球に食料を、生命にエネルギーを」。各国がそれぞれの自然環境や食料事情に基づいたテーマを掲げ、工夫を凝らした展示を繰り広げる様子をお伝えします。
世界が集まって食を考えるミラノ万博2015。
問題定義から美味しい食事まで、内容は盛りだくさん。
ミラノで前回万博が開催されたのは、1906年。約100年ぶりの万博に、イタリア国内はもちろん、世界中から熱い視線が集まっています。万博と言えば、かつては、最先端技術や各国独自の文化を世界に知らしめる場でした。もちろん今もその側面がなくなったわけではありませんが、2005年の愛知万博をきっかけに、環境問題や食料問題といった人類共通の課題を解決するための模索の場としての意味合いがより大きくなってきています。ミラノ万博2015も、「地球に食料を、生命にエネルギーを」というテーマに基づき、それぞれの国がどのようにして食を未来につなげる模索をしているかを知ることができる万博になっています。
東京ドーム22個分という広大な会場は、周囲を人工運河に囲まれていて、魚のようなシェープをしています。その中央を貫くメインストリートは「デクマーノ」。全長1.5kmはあるこの通りを挟んで、各国のパビリオンが立ち並びます。ほぼ中央でそれと交差するもうひとつの大通りが「カルド」。そこが主催国イタリアのメインパビリオン「パラッツォ・イタリア」や、イタリア各州のパビリオン、ミラノ万博2015のシンボル「生命の樹」などがあるイタリアエリアになっていて、イタリアを満喫することができます。
「パラッツォ・イタリア」は、巨大な鳥の巣のような外観が特徴的。この巣に見える部分には、イタルチェメンティ社が開発した汚染物質を吸収する新特許のバイオダイナミクスセメントが使用されています。「都市にある森」をイメージしたというパビリオンのテーマは「苗床」。すべての生命の源や芽吹きを意味していますが、苗床=発芽というコンセプトは、若手の才能の芽が育つのを手助けするということにまで広げられています。若い才能を万博のいろいろなプロジェクトに起用し、その表現や活躍の場を広げる機会にもなっているようです。
本館と各州のパビリオンが並ぶイタリアエリア。
全州のワインが揃ったワインパビリオンは必見。
「カルド」には、イタリア各州の食文化を紹介するパビリオンが並んでいます。その中でも、個人的に興味深かったのが、ワインパビリオン。ここでは、イタリアの5000年にわたるワイン造りの歴史や、テロワールなどを五感で体験することができ、イタリアワインの奥深さを実感。館内の「ワインの図書館」と呼ばれる部屋には、イタリア全土からのワインやスピリッツが常時1400種以上も並び、10ユーロでワイングラスを購入すると3杯まで試飲できるシステムになっています。見たことも味わったこともないワインがずらりと並んでいるさまはまさに圧巻。イタリアワインに精通したソムリエたちの話もおもしろく、気を付けないとついつい長居をしてしまいます。
もちろんイタリアを始め各国のパビリオンで体験できる料理も見逃せません。会場の中心にある「イータリー」というお洒落なフードコートには、イタリア20州から郷土料理の店が出店。毎月月替わりで14のレストランが登場し、各州の料理やワインを味わいながら、その土地に密着したイタリア料理の魅力が気軽に楽しめるようになっています。「イータリー」を行ったり来たりして、何を食べようか迷うのも楽しいもの。人気パビリオンのレストランは待ち時間も長いので、よりどりみどりのイタリアンが揃っている「イータリー」はなかなかのおすすめです。
いつでも長い行列ができている人気ダントツの日本館。
最先端技術を駆使した映像は迫力と説得力満点。
壁面を全面的に野菜畑にしてしまったアメリカ館。麦畑が広がる奥にブーランジェリーがあるフランス館。見学コース全体が森になっていて歩きながら森林浴ができるオーストリア館。巨大なパビリオンで権勢を誇る中国館。パビリオンを見ただけで、その国の指向性や国風がわかるのは万博ならでは。大国はお金と威信をかけ立派なパビリオンを作っていますが、たとえば水の浄化と保全がテーマのベトナム館など、小さな国が頑張っているのにはより心を惹かれます。
そんな中、人気抜群で常に長〜い行列ができているのが、我らが日本館です。パビリオンは、法隆寺に代表される、釘を使わずに木を組み合わせて堅牢な建築物を作る日本の伝統的木材建築「立体木格子」によって作られています。テーマは「共存する多様性」。日本食や日本食文化に詰め込まれた多用な知恵や技が、人類共同の問題解決に貢献するというメッセージが込められています。サブメッセージは「いただきます、ごちそうさま、もったいない、おすそわけの日本精神が世界を救う」。
館内は、日本の食をさまざまな側面から紹介するいくつかの部屋に分かれ、順を追って見て行くうちに、日本の食文化やそのバックグラウンドがヴァーチャル体験でき、理解できる仕組みになっています。最新のプロジェクトマッピングで体感する四季折々の農村風景や、田んぼの1年間。「一汁三菜」「発酵・醸造・天日干し」「ダシ・うま味」など、日本独自ともいえる食文化が凝縮されたショーケース。食の地球的課題を可視化して、それに対する日本の取り組みがわかる“触れる地球”などなど、最新鋭の映像技術やCGを駆使した体験型の展示は臨場感満点。そして展示の最後には、未来のレストランで展開される参加型のライブ・パフォーマンスショーを、レストランスタイルのシアターで鑑賞。これもなかなか凝ったつくりですが、詳細は見てのお楽しみ!すべてを見終わると、カレーやすき焼き、蕎麦、寿司などが楽しめるフードコートが。その奥には「美濃吉」による本格的な高級割烹もあり、ファーストフードから会席まで、日本食の幅広さを実体験できるようになっています。
7月11日はジャパンデー。
ミラノ万博が、日本色に染まります。
食料問題に対する地球規模での取り組みと聞くと、なにやらお固い展示会を想像してしまいますが、そこは陽気なイタリアでの万博。お祭りムードは満載です。各国のパビリオンでは伝統音楽の演奏やダンス、ショーやイベントも盛りだくさんで、あちらこちらから聞こえて来る楽しげな音にワクワク。非日常感がたまりません。7月11日は「ジャパンデー」。東北各県の伝統的な祭りが「デクマーノ」をパレードする、東北復興祭りパレードや、きゃりーぱみゅぱみゅのライブ、伝統芸能パフォーマンスなど盛りだくさんな内容で、万博会場が日本一色になる予定です。
ミラノ万博に行くには、ミラノ万博のグローバル・オフィシャル・キャリアであり、日本とイタリアを直行便で結ぶ唯一のエアライン、アリタリアーイタリア航空が便利。ミラノへは成田から毎日1便。万博のロゴが入った機体もあります。ビジネスクラスは、高級革張りマッサージ機能付きのフルフラットベッドになるシートで、プライバシーが確保される独立型シートと、カップルに最適なペアシートより選べます。2016年1月から順次機体の塗装とキャビンがリニューアルされ、ビジネスクラスには、ポルトローナ・フラウ社デザインのシートが導入されます。アメニティーはフェラガモ、食器はリチャード・ジノリ、毛布と枕はフレッテなど、乗った瞬間からそこはイタリア。3ヶ月ごとに変わる著名イタリア人シェフが考案するフルコースの食事は、2010年~2014年、グローバルトラベラー誌のベスト・エアライン・キュイジーヌ賞(最優秀機内食賞)を5年連続受賞。優雅な食事のひとときが、旅をさらに快適なものにしてくれます。
ミラノ万博にはアリタリア・エティハド館「ソーシャル・ハブパビリオン」があり、1階は誰でも利用可能。アリタリア機とエティハド機、2機のフライトシュミレーションがあり、臨場感あふれる操縦体験ができます(ホームページより予約可能)。お料理デモが1日3回開催され、イタリア人シェフがすぐに作りたくなるイタリアンのレシピをわかりやすく教えてくれるのが人気です、ビジネスクラス搭乗券かVIPカードを提示すれば、各種飲み物、軽食が用意された2階のVIPルームの利用も。広いEXPO会場で歩き疲れた時に助かるスポットになっています。
さらに、EXPOの期間限定で、成田―ミラノの直行便ビジネスクラスを利用するお客様には、ミラノ・マルペンサ空港―ミラノ市内間の無料リムジン送迎サービスを提供しています。(要事前予約)
【関連リンク】
・2015年ミラノ国際博覧会公式サイト
・2015年ミラノ国際博覧会日本館公式サイト