夏の富山でそぞろ食べ歩き。
甘酒・蜂蜜・ソーセージ……。

(2011.08.29)

都会で暮らす方々が、遠路はるばる富山まで美味しいものを食べにやってくるというので、ご一緒したのが『にっぽんトラベルレストランin富山』『ニッポンを旅して、その時その場所で、その人達とだからこそ味わえる、一日限りのスペシャルな晩餐会』そこから都市と地域をつなぐきっかけを作るというのが旅のコンセプトです。

町屋造りの種麹屋さんで味わう夏の甘酒。

最初にやってきたのは南砺市・福光町。ここは戦時中、版画家の棟方志功が疎開した地としても知られます。山ひとつ越えれば金沢はすぐそこ。加賀文化の影響を受けて栄えた町で、かつて遊郭だったという旅館 『松風園』には、当時を忍ばせるような風情ある設えがみられます。

街歩きするなら小矢部川沿いからほど近い新町通りがおすすめ。江戸時代の商家の建物も残るこの通りには、隠れ道のような細い小路があったり、おばあちゃんたちが若い頃に野菜や衣類を洗ったという湧水があったり。


北陸で唯一の種麹屋さん『石黒種麹店』

ここに全国でたった12件。北陸では唯一の種麹屋さん『石黒種麹店』が店を構えます。創業は明治28年。種麹とは酒・味噌など醸造食品を作る時に使用する麹のタネとなるもの。作り方は代々引き継がれますが、七代目ご主人の石黒さん曰く、『跡継ぎ以外は兄弟にも教えない』のだとか。こちらで戴いた冷たい甘酒が驚きのおいしさでした!甘いけど砂糖不使用(天然のブドウ糖のみの甘さ)。よく冷えた甘酒はすっと喉を通ります。

『甘酒の苦手な方に……』と奥様が作ってくださった甘酒バナナジュースは輪をかけて美味でした。甘酒にはブドウ糖・アミノ酸・ビタミンなどの栄養がたくさん含まれるので、昔は暑い夏場の命をつなぐものとして飲まれたとか。甘酒が夏の季語だということもはじめて知りました。

この地域は冬になると、かぶら寿司(かぶらでブリを挟み麹で漬け込む)を作りますが、そもそも湿度の高い北陸は、昔から発酵文化が盛んだそうです。……そう言われて改めて気付く、北陸の夏のうだるような蒸し暑さ! これは甘酒でも飲まねば乗り切れません。

 

若手生産者リレー訪問。
蜂蜜→ビール→ソーセージ

午後は里山を下り、富山市で活動する若手生産者に会いに行きました。

最初に訪れたのは、昭和17年創業の『大場養蜂園』。純度100%の蜂蜜を昔から変わらない方法で作ります。お店に入ってまず、蜂蜜の色の豊富さに驚かされます。定番のレンゲ・アカシアのほか、トチの木・菩提樹・クローバー・そば・リンゴ・水島柿……と、瓶を並べて味比べするという、あのクマも羨ましがるであろう贅沢な体験をしました。花が変わると蜂蜜は色も、香りも、舌触りも、後味も変わってしまいます。蜂蜜って個性的だと思いました。

『大場さんが採ったレンゲ蜂蜜でビールを造っている人がいる』というので向かった先がビール工房『オオヤブラッスリー』の醸造所。

蜂蜜のほかリンゴや梨、大麦など地元素材でビールを仕込むオオヤさん。「個性的なビールではなく個人的なビールを造りたい」という言葉が印象的です。

ペールエール『越中風雅』を夕食で戴きました。地ビールの祭典『ジャパン・アジア・ビアカップ』で入賞した逸品です。一口飲んだフルーティさの後に、ちゃんと苦味がやってくる感じ……。一同大絶賛でした。遺伝的に大概のお酒が飲めてしまう私にも、このビールの繊細さは分かったような気がします美味しいです。生産量が限られるため、現在は地元ショップに卸すほかイベントでの販売が中心とのことですが、わざわざ飲みに行く価値ありです。


手作りハム・ソーセージの専門店『メッツゲライ・イケダ』

次に向かったのは手作りハム・ソーセージの専門店『メッツゲライ・イケダ』。こちらで扱うお肉は、店長村田さんが、お父様と弟さんとで営む牧場で育てた池多牛です。牛の排泄物を土に還元して牧草や稲わらを育てる循環型農法により粗飼料も自家生産。富山のおいしい空気と水で育った牛を、本場ドイツで修業した村田さんが加工します。店内にはドイツ最高賞を受賞した表彰状がズラリ。そしてこのソーセージのプリプリ感!皮が弾ける感じ! オオヤさんのビールとの組み合わせも最高でした。

富山の食は寒ブリ、白えび、ホタルイカばかりではありませぬ。ぜひお越しの際は、お店に足を運んでみてください!