Par-delà le Pont – 4 - トゥルネル橋(Pont Tournelle)パリの守護聖人が、優しく見守っている橋。

(2011.01.01)

明けましておめでとうございます!
Bonne année !
今年もよろしくお願いいたします。

お正月は、何かとやることの多い年末を乗り切って、やれやれという感じでもあります。
年末の忙しい中、クリスマスツリーの片づけやお正月の飾りつけなんかもして、もう本当にお疲れさまですよね。
フランスでは、クリスマスツリーが年始まで出したままで、お正月の飾りつけもないので、少しだけ気楽かもしれません。
日本も、門松とツリーを兼用にすればいいのにね。ってそうはいきませんかね、やっぱり。

年末年始にパリに行かれる方、今年は例年より寒いみたいなので暖かくしていってくださいね。
そして、少し長めに滞在される方、冬のセールは1月12日の朝8時からだそうです。
お買いもの楽しんでください。

さて、セーヌ川に架かる、パリ市内30本の橋を追っていく連載。
「マレ/シテ島地区」シリーズ・第4回目の今回は、トゥルネル橋を渡ります。
どうぞよろしく、お付き合いいただけたら嬉しいです。

トゥルネル橋の西にある、アルケヴィッシュ橋から。左の岸はサン・ルイ島。

右岸からマリー橋をサン・ルイ島に渡り島を横切ると、左岸に続くトゥルネル橋が見えてきます。この二つの橋を繋いでいる通りの名前は、「二つ橋通り(Rue des deux ponts)」。そのままですね。二つ橋通りは狭いですが、お店が並びカフェやバーもあって人通りのある明るい通りであります。

さて、1928年に着工して、1930年に完成した比較的新しいトゥルネル橋の特徴の一つは、非対称のデザイン。「西洋人(中国人もそうらしいですが)は偶数を好む」と言われるように、左右対称が美しいとされるヨーロッパでは珍しいデザインです。

逆に、日本人は非対称を美しいと思うらしいですが、いかがなんでしょうか。まあ確かに、左右対称の生け花とか見たことないですね……やっぱりそうですかね? だとすると、非対称のトゥルネル橋は、もしかしたら日本人こそが美しさを理解できる橋なのかもしれないです。なんて言うと、パリジャンたちに怒られちゃうかな?
 

この近くには、ポンピドゥー・センターに名前を残す、かつての大統領ポンピドゥー氏が住んでいたそう。
橋の塔。左は、北東から。後ろ姿になっている右は、西から。

トゥルネル橋のもう一つの特徴は、橋の南寄りに塔が建っていること。この塔の上には、パリの守護聖人である聖ジュヌヴィエーヴの像があります。

聖ジュヌヴィエーヴが何故、パリの守護聖人になったか。それは、451年にさかのぼります。ヨーロッパで帝国を築いていたフン族が、ついにパリを攻めてきます。もちろんパリの住民は逃げようとしますが、このジュヌヴィエーヴが彼らを説得します。「逃げずに残りましょう。神を信じて悔い改めれば、パリは必ず救われますよ」。ジュヌヴィエーヴの言葉で住民たちはパリに残ることにして、そしてジュヌヴィエーヴがひたすら祈っているうちに、何とフン族はパリを攻めるのを止めて、オルレアンへ向かっていったというのです。

すごいですね。いったいどうなっているんでしょうか。

そんなことで、ジュヌヴィエーヴはパリの守護聖人になります。そしてフン族が東から攻めて来たことから、トゥルネル橋ではジュヌヴィエーヴ像は、東を向いて立つことになります。

ところで、ジュヌヴィエーヴ像がどっちを向いて立つか、というどっちでもいいように思える問題について、建立当時に大変もめたらしいです。「パリの守護聖人なんだから、パリの中心を向いて立つべきでは?」「いやいや、やっぱりここは東向きでしょう」と、こだわる二派。結局は東を向くことになったわけですが、「東を向く」ということは、橋側ではなく、橋の外側を向くことになります。東反対派の中には、「東向きにしやがって。橋渡っても、ジュヌヴィエーヴの服のしわしか見えねえだろ」なんて言っていた人もいるらしいですね。わりとしつこいかもー。

ジュヌヴィエーヴ像の前には、小さな少女が立っています。この少女はパリの象徴。彼女の抱えている船は、「たゆたえど沈まず」というパリのスローガンを意味しているそうです。

パリという船の航海は、いつも美しい聖人に見守られているんですね。人間も、いろんな自分にとっての守護聖人のような人たちに見守られながら、人生を渡っているのかもしれないですね。

サン・ルイ島から左岸に架かるトゥルネル橋、いかがでしたでしょうか。次回は、サン・ルイ島と、シテ島をつなぐ、サン・ルイ橋を渡ります。

みなさまにとって、素敵な2011年となりますように☆

 

Pont Tournelle
トゥルネル橋

竣工:1928年
長さ:122m
幅:23m
建築家:ルイ・ギデッチ、ピエール・ギデッチ
形式:アーチ橋
素材:鉄筋コンクリート
最寄駅:Pont Marie駅(メトロ7号線)、Cardinal Lemoine駅(メトロ10号線)
付近の観光スポット:アラブ世界研究所