from 山梨 – 22 - 縁起を担いで、景気良く!
新春の京都 上賀茂神社、下鴨神社。

(2012.01.14)


 

平成24年、辰の年。
昨年は、年末恒例の「今年は様々な出来事がありました。来年は良い年になりますように」なんてセリフが軽々しく感じられる一年でした。

良い年になりますように、被災地が元気になりますように、成績が上がりますように、景気が良くなりますように、世界が平和になりますように……こんなふうに神仏に丸投げするというよりも、そのために自分自身が頑張り、努力しますのでお守りください、お力をお貸しください、と年初の決意を伝え、神仏のご加護をお願いするのが正しい初詣、正しい神頼みなのよねえ、なんてことを今更ながら思う今日この頃。
色々思うところのあった今年の初詣は、恵方詣り(恵方参り)としてみました。

今年の恵方は壬の方向。北北西よりやや右です。
恵方というのは歳徳神がその年にいらっしゃる方角で、何事もその方向に向かって行なえば吉である、というもの。
関係業界の努力によって関西から急激に全国に展開しつつある「節分に恵方を向いて目を閉じて黙って太巻きを1本食べきるとご利益がある」という恵方巻きも、今年は壬の方向を向いて、ということになるわけですね。

年末年始の帰省から戻り、自宅から壬の方向にあたる地元の神社へ初詣に出かけ、今年最初の連休に予定した京都旅行では、私自身が常に京都での起点としている場所から恵方にあたる、上賀茂神社、下鴨神社を回ってきました。

 

上賀茂神社 白馬奏覧神事

賀茂別雷大神(かもわけいかづちのおおかみ)を御祭神としている神社です。
この日上賀茂神社では、年の始めに白馬(青馬)を見ると一年の邪気が祓われるという故事に則った宮中の儀式である、白馬節会(あおうまのせちえ)を神事化した『白馬奏覧神事(はくばそうらんしんじ)』が営まれていました。
白馬節会は1月7日に催される宴で、中国の陰陽五行説で「春に陽のものを見ると1年の邪気を祓う」とされていたことに基づく儀式だそうです(白馬節会についてはこちらのサイトに詳しく書かれていますので、参考までに)。
年の始めの白馬といえば、1月2日の皇居新年一般参賀の際に内堀通りで参賀者を出迎えてくれる白馬がいます。
皇宮警察騎馬隊の白馬です。
あの白馬には出迎えてもらって警備してもらった上に、邪気まで祓ってもらっているのかもしれません。

上賀茂神社は時代劇の撮影もよく行なわれていて、色々な作品に登場しています。
去年、時代劇専門チャンネルで放送された、CS放送製作の『鬼平外伝 夜兎の角右衛門』(原作:池波正太郎、主演:中村梅雀)では、上賀茂神社の境内を流れる小川のほとりで撮影されたシーンで一気に涙してしまったなあ……なんてことを思い出しつつ、のんびりと境内を散策してきました。

上賀茂神社の、龍の大絵馬。紫と緑の双龍です。
牽馬の儀で、神馬は神職さんと共に二ノ鳥居をくぐり、境内をまわります。


 

金閣寺 黄金色に輝く金閣

上賀茂神社を後にして、せっかくなのでものすごく景気の良いものを見に行こうと、金閣寺(鹿苑寺)へ。
京都へは何度も訪れているけれど、ここへ足を運ぶのは修学旅行以来かもしれません。
この日の京都は薄っすらとした晴れ間にも時々小雨のぱらつく不思議なお天気でしたが、舎利殿である金閣は景気良くぴかぴかと輝いていました。
この金閣、1950年に失火で全焼して、1955年に再建されたものなんですよね。
でも、今目の前で輝いているのはその時の金箔でもなく、1986年から1987年にかけての昭和大修復で張り替えられたもの(その後も一部張替えられているそうですが)。
1955年の再建時に使用されたのは、当時製箔技術の向上によって作る事が可能になっていた創建当時よりも薄い金箔で、薄いがために金箔も、そして下地の漆も早々に劣化することになってしまったのです。
そのことから、昭和大修復では1955年の再建時に比べて金箔は5倍の厚み(総重量20kg!)にし、金箔の下地になる漆も純度の高いものを選定して多層塗りにして仕上げたのだそうです。
創建時の金閣に使われていた金箔も、この時使用したものと同じ厚みの金箔だったと思われる痕跡もあるそうですから、昭和大修復で創建当時の金閣に近づいたことになるのですね。
なんとも興味深く、また景気の良いお話です。
1987年の昭和大改修以前に修学旅行で訪れてそれっきり、という方は、是非再訪されてみてはいかがでしょう。
「え、こんなに光ってたっけ?」とビックリするかもしれません。

北山文化を代表する建築物である金閣と、金閣にいながらにして金閣を見る事ができる鏡湖池、そして日本の国土を表す『豊葦原瑞穂国』がその名の由来であり、海に見立てた鏡湖池の中で日本国を表していると言われている葦原島。
冬だからこその、樹木の枝越しに見る金閣の後姿。


 

下鴨神社 初えと祭

翌日は朝から下鴨神社へ。
正式名称を『賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)』といい、平安京造営にあたってその成功祈願が行なわれたことから、国民の平安を祈願する神社として親しまれています。
こちらの御祭神は、西殿に賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)という古代の京都山城を開かれた神様、そして東殿にそのお子様の玉依媛命(たまよりひめのみこと)。
先の上賀茂神社の御祭神である賀茂別雷大神は、この玉依媛命のお子様です。
上賀茂神社と下鴨神社は『賀茂神社』と総称されて、両神社で催される有名なお祭りが、5月に催される葵祭(賀茂祭)ですね。

辰年最初の辰の日となった1月8日。
下鴨神社では朝11時から『初えと祭り』が催されました。
下鴨神社の本殿前には7つの『えとの社』があり、7つの名前の大国主命が十二支それぞれの守護神として祀られています(7つのうち、5つの社は2つの干支の守護神を兼ねています)。

初えと祭では神職さんから渡される玉串を自分のえとの社に捧げて拝礼し、この日だけ授かることができるらしい自分の干支の置物に入ったおみくじを500円を納めて授かり、お神酒を頂いてきました。
辰年の今年、八千矛神を守護神とする辰、申の社は年男、年女の皆さんで長蛇の列となっていました。
この日は神職さんが「毎年休日に行なっているわけではなく、今年はたまたま初えとの日が休日になったことで大変大勢の方にお越しいただくことになりました」「新年早々転ぶことのないよう、押さないで下さい」と何度もおっしゃるほど、大層な人出。
普段なら「人が多くて疲れるなあ」と思ってしまうところなのに、「大勢の人が神社に集まって、景気の良い風景だなあ」ととても気分が良かったのは、すでにご利益があったのかもしれません。

下鴨神社の、龍の大絵馬。
初えと祭のしつらえ。



 

今年のお正月は「縁起を担ごう、景気良くやろう(あくまで気持ち的に)」と決めていて、地元と京都での恵方詣りはそれゆえの事。
金ぴかの金閣は一目で景気が良いし、大勢の人が押すな押すなの大賑わいでみんなで干支みくじを買う光景だって、神職さんたちは大変でしょうけれども活気があってとても景気の良い印象です。

上賀茂神社でひいたおみくじは大吉、下鴨神社の干支みくじは末吉。
良いバランスです。
縁起も景気も、まずは気の持ちよう。
今年はきっと、良い年になる。
そんな気持ちを強く持って、頑張って1年間過ごして行きたいと思います。
辰年の今年、天空を飛翔する龍のごとく皆様にとっても素晴らしい年になりますように。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
 

上賀茂神社
http://www.kamigamojinja.jp/
金閣寺(鹿苑寺)
http://www.shokoku-ji.jp/
下鴨神社
http://www.shimogamo-jinja.or.jp/index.html