from 北海道(道央) – 6 - 「そらぷちキッズキャンプ」。難病の子供たちの「夢」を叶えたい。

(2009.09.03)

「難病にかかる」ということ。

滝川市・丸加高原全景。

私事で恐縮ですが、少々お付き合いください。
 
私は高校生の頃、自分の関心がある科目以外真面目に授業に出席しませんでした。「自律」を理念として掲げる高校で、その意味を自分に都合よく捉えた結果による軽率な行動だったのです。卒業式当日、現代国語を受け持っていた担任が、「よく卒業できた。本当によかった」と目に涙を浮かべて喜んでいる姿を拝見し、「そこまで自分のことを心配してくれていたのか」と気付かされ、赤面と同時に、その後彼が亡くなるまでの数年間、手紙のやりとりを通じて多くのことを学ばせていただいたことに深く感謝しています。
 
私がローマ皇帝であったマルクス・アウレーリウス(Marcus Aurelius、121-180)に関心を抱いたのは、「倫理社会」を担当していた教諭との、何気ない会話からだったように微かに覚えています。関心があった倫理社会に関しては、思えば欠かさず授業に出席していたはずです。
 
マルクス・アウレーリウスのことを知ろうとすれば、著作である『自省録』を読まなければなりません。ギリシャ語原文からこの本を翻訳された神谷美恵子(かみや・みえこ、1914-1979)さんのことを「知りたい」と思うようになったのは、ある意味必然だったのでしょう。

彼女の著作の一つである『生きがいについて』(みすず書房)。長島愛生園でハンセン病患者の皆さんと向き合ってきた彼女は、その書で「生きがいをうばい去るもの」という章の中に「難病にかかること」を取り上げています。読み応えのある本ですので、時間があれば是非ご一読ください。

 

約20万人いると言われる国内の難病の子供たち。

 
多少病気がちであった幼少期ではありましたが、大病を患うことなく成長した自分にとって、「難病にかかること」の意味を掘り下げて考えるようになったのは、その文章との出会いからでした。

日本には小児癌や血液、循環器、消化器、免疫不全、肝不全などの「難病」とたたかっている子供さんたちが約20万人いると言われていることを、皆さんはご存知でしたでしょうか?
 
国内に難病児を受け入れることのできる医療施設の整った自然体験施設がないことから、難病児は自由に野山を駆け巡ったり、友だちや家族の皆さんと自然の中でゆったりとした時間を過ごすことができないという「制約」を抱えています。

そのような子供たちが、自然の中で、安心して、安全に楽しく過ごせるように医師や看護師が見守っている特別に配慮されたキャンプ施設を作ろうという動きは、1999年にスタートし、2004年3月に「そらぷちキッズキャンプを創る会」が任意団体として創設され、昨年(2008年)12月に「一般財団法人そらぷちキッズキャンプ」(代表理事は、聖路加国際病院副院長である細谷亮太さん)が法人として動き始めました。

今年8月に実施された「サマーキャンプ」に集まった皆さん。

  
「そらぷちキッズキャンプ」。

 
「そらぷちキッズキャンプ」は、前回ご紹介した北海道・空知にある滝川市の丸加(まるか)高原に整備され始めたところです。

「そらぷち」とは、石狩川と空知川に囲まれた滝川市が、昔アイヌ語で「滝のある川」と呼ばれていたところから、また、「Solar=太陽」、「Petit=小さな」という2つの言葉をかけ合わせた「小さな太陽」という造語でもあり、この場所が子供たちの笑顔が太陽のように光一杯に輝くことを願って名付けられたそうです。
 
選任スタッフとして滝川市に常駐しているのが、佐々木健一郎さん(一般財団法人そらぷちキッズキャンプ 事務局長代理)。関西からご家族で滝川に移住されスタッフとしてご活躍されていますが、「滝川に移り住んだ最初の年は、さすがに冬が辛かったです」と笑顔で語られる佐々木さん。
 
丸加高原に出来上がる予定のキャンプ場で、子供たちが夏はグライダー、乗馬、農作物の収穫体験、冬はスキー、スノーボード、かまくら作りなどを通して満面の笑顔で時間を過ごしていただくことを、佐々木さんをはじめとして、地元では理事を努められている田村滝川市長、また多くの滝川市民の皆さまが願っています。

収穫体験。
乗馬体験。
佐々木事務局長代理(左)と世話役も務める柳滝川市副主幹(右)。

そらぷちキッズキャンプ http://www.solaputi.jp/
 
 

「外で遊びたい」という子供たちの「夢」を叶えるために。

 
今年(2009年)8月に「サマーキャンプ2009」が行われ、全国から17人の子供たちが参加しました。

子供たちがグライダー、乗馬体験、収穫体験、野外炊飯などを行うことを支援するため、道内外から医師や看護師を含めた40人程度がボランティアスタッフとして参加し、このキャンプを支えました。

野外炊飯。
スイカ割りを楽しむ。

現在のところ、「プレキャンプ」という形でキャンプは実施されていますが、数年後の本格的な開園を目指しています。本格的な開園に向けて我々にできることは、この取組みについて多くの皆さまに知っていただくための広報活動を行うこと(ブログなどで呼びかける、作家の蜂谷涼先生はレギュラーの地方ラジオ番組にて紹介してくださいましたなど)、会員になること、ボランティア名簿に登録すること、また募金を行うことも可能です(日本チェーンドラッグストア協会加盟店に「募金箱」が置かれています)。

田村滝川市長(左)に職場で集まった募金を手渡す筆者(右)。

皆さんにも何かできるお手伝いがあれば、「外で遊びたい」という子供たちの「夢」を叶えるため、一緒にご協力いただけないでしょうか?
 
「ある人は他人に善事を施した場合、ともすればその恩を返してもらうつもりになりやすい。第二の人はそういうふうになりがちではないが、それでもなお心ひそかに相手を負債者のように考え、自分のしたことを意識している。ところが第三の人は自分のしたことをいわば意識していない。彼は葡萄の房をつけた葡萄の樹に似ている。葡萄の樹はひとたび自分の実を結んでしまえば、それ以上なんら求むるところはない。」
*マルクス・アウレーリウス『自省録』岩波文庫)第5巻第6節から引用。
 

今年整備された車椅子も通ることができる「木道」。