from 北海道(道央) – 16 - 「札幌の老舗」。その秘訣はどこに。

(2009.12.02)

札幌の「老舗中の老舗」。

「Monty Python」という名前を聞いて、1969(昭和44)年からイギリスのBBCで放映されていたコメディ番組をすぐさまイメージされる方も多いのではないでしょうか。

まさにこの番組のように「お客さまと従業員との間に、常に笑いの絶えないお店でありたい」という、初代オーナーである中村氏の命名により、札幌の地に店を構えて27年という「老舗中の老舗」レストラン。

それが札幌にある『Monty Python(モンティ・パイソン)』さんなのです。

住所と同じ「南3西4ビル」にある「Monty Python」さん。

 
『Monty Python』さんとの出会い。

「GLOBALING 21」(グローバリング21。通称「G21」。)という怪しい異業種交流の会が、18年ほど前に結成されました(ただ今、活動休止中)。自分もその立ち上げメンバーの一人だったのですが、ちょうど会結成とときを同じして、札幌駅北口にとある高層ビルが新たに作られることに。

そのビルの「最上階をどのように利活用するか、アイデアを公募する」という自由発想のコンクールが行われることを偶然に我々は知り、会結成の最初のイベントとして、その「コンクールに参加して最優秀賞を受賞する」ことを目標とすることが即座に決定されました。要は、最優秀賞の賞金狙い(笑)=会主催の飲み会経費の節減が目的でした。

奇想天外な様々なアイデアが生み出されましたが、G21として正式に応募することとなった案は、「異星人との交流空間」として活用するというアイデアでした(笑)。

「ビルの最上階ということは、星との対話。異次元との対話だ!!」というコンセプトの下、真面目に考え抜いた(今から考えると、馬鹿らしい)アイデア(パーツ)の組み合わせだったかに憶えておりますが、結果として「努力賞」を受賞することができました。

努力賞だけでは到底満足しないメンバーたちは、「このアイデアを何とかして実現することはできないものか」と考え、今考えれば怖いもの知らずですが、凄いメンバー(TV局のディレクターさんや作家先生など)を相手に実現に向けたプレゼンテーションの機会を持つことになったのです。

その会場が、星に限りなく近い場所(すすきの方面のビル最上階)にあった『Monty Python』さんだったのです。当時のオーナーが、実現に向けて尽力してくださったのです。

実現に向けて、無我夢中に説明した我々ですが、お店のポリシーでもある「笑いの絶えない」というより、「失笑を買い続ける」という情けない場となってしまったことが、昨日のことのように懐かしく思い起こせます。

お店が入っているビルの斜め向かいには、すっかりススキノ名物となっている観覧車「ノルベサ」。

 
「ワイン文化史研究家」への着火点。

そのように出会った『モンティ・パイソン』さんですが、その当時のビルの北隣のビルへと移転してから、もう5年近くになるでしょうか。初代オーナーの後を継ぎ、さらに「賑わいのある空間」へと発展させたのが現在のオーナーシェフである白取祐(しらとり・ゆたか)さんです。

白取さんと自分との出会いはここで語り尽くせないほど運命的なものがあり、彼此10年来のお付き合いをさせていただいております。

当時まだ日本には馴染みの薄かったビオディナミ(Biodynamie)農法について、ニコラ・ジョリー(Nicolas Joly)氏のワインを閉店後に共に飲みながら語り合い、ワインの奥深さを学ぶ契機を作っていただいたのも、白取さんとの出会いがあったからこそと感謝しております。

そうなのです。自分の「ワイン文化史研究家」への着火点は、白取さんとの出会いにあったのです。
 

開店直後の店内。居心地のよい空間であることから、じっくりと腰を据えてワイングラスを傾けるお客さまも多い。
いつも陽気でありながら、実は「石橋を叩いても渡らない」性格の白取祐(しらとり・ゆたか)オーナー(写真左)と、チャーミングであり、気遣いが素晴らしいホール・マネージャーのソムリエ・空本悠里(そらもと・ゆり)さん(写真右)。
カウンターに座ると、料理の合間に冗談を語っては楽しませてくれる白取オーナー。
「ワイン文化史研究家」への着火点となった、ニコラ・ジョリー(Nicolas Joly)による「Coulee de Serrant(クーレ・ド・セラン)」。白ワインでありながら、「これって本当に白ワインなのか!!」と驚くワイン。異星人との神秘な対話は、この一本から始まる。飲み頃のヴィンテージになるまでじっくりと寝かせておかなければ、「もったいない投資」になってしまいます。

 
「老舗」であり続ける秘訣は、ここにある!!

さて、その『モンティ・パイソン』さん。毎年この時期になると道東・厚岸(あっけし)の溝畑さんが育てた牡蠣、また春・夏には、白取家の広大な菜園で収穫された新鮮な有機野菜など、安心・安全はもちろん、食材へのこだわりが随所に活かされた料理を提供してくださいます。溝畑さんの牡蠣は、まさに「絶品」です。

「料理に国境はない」という考えの下、人気の定番メニューが豊富な一方で、新たな料理への工夫とチャレンジは、札幌在住の多くの食通を唸らせています。また、ワインの種類も豊富で、肩肘張らずに好みのワインを提供してくださることから、「ワインともう少し親しくなりたい」というワイン初心者の方にも大人気のお店なのです。

多少自慢になりますが、自分が常連であり続ける北海道内のお店は、これまで一軒足りとも「閉店」に至った店はないのです。恐らくそれらのお店は、料理が美味しく、なおかつ「一人であっても気楽に楽しめる」居心地のよいお店であり、そうでありながら「親しき仲にも礼儀を欠かさない」といった、サービスの基本(ホスピタリティ)が成り立っているお店であるからなのだと、自分は考えています。

カウンター席には、男性・女性を問わず白取さんとの会話を楽しみに集まってくる方が多くいらっしゃっていますが、初めて店に足を踏み入れたとしても、「昔からそこにいる」かのようにくつろげる空間。

そういう空間である『Monty Python(モンティ・パイソン)』さんに、機会がありましたら是非一度立ち寄ってみてくださいませ!!

ワインセラーには、ワインのほかに、入手困難な日本酒なども眠っている。
店で扱っているビールはヱビスビール(小瓶)。
筆者の高校の先輩である吉崎先生がお店に持ち込んでくださった「C’ADEL BOSCO 2001」。レアな泡モノです。
北海道ワイン(株)で栽培技術指導を行っているグスタフ・グリュン(Gustav Grun)さんがドイツで栽培しているリースリング(Riesling)2007・Spatlese(シュペートレーゼ)。日本国内では購入できないが、ドイツの白ワインの底力を知ることができる一本。こちらは筆者が持ち込み(持ち込みしようとする場合には、料金を含めて事前にお店にご相談ください)。
仕上げには「ARMAGNAC 1958」(アルマニャック)。食前酒から食後酒まで、お客さまの好みに応じて揃えてくださいます。
前菜の盛り合わせ。手前から左、さらに奥へと超人気の「厚岸産溝畑さんの3年牡蠣・岩のり焼き」、「ベーコンと玉葱のキッシュ」、「プロシュート」、「アトランティックサーモンの軽いスモーク 薄切り大根のマリネ添え」、「鱈とジャガイモのブランダード」。
「うちの店のお客さまを、失礼ながら例えて言うとすれば・・・、「鮭」かな」と語る白取オーナー。札幌を離れたとしても、鮭のように戻ってくるお客さまが多いということを伝えたかったのでしょう。「アトランティックサーモンの軽いスモーク」で、表現してみたそうです(笑)。
この時期にしか食べることのできない「タチのムニエル 焦がしバターとバルサミコのソース」。「なまら美味い!!」。尿酸値が高い方は用心して食べましょう!!
Monty Pythonさんの定番メニューで一番人気。「岩のり(若草海苔)のクリームパスタ」。一度食べると確実に病み付きになります。
Monty Pythonさんの定番メニューの中でも人気が高い「三元豚のロースト」。焼き加減が絶妙です。
シンガポール・ラッフルズ(RAFFLES)ホテルの「ロング・バー」でお馴染みのフラスコ型の「ロング・ビールジョッキー」。吉崎先輩がお土産で購入し、持参したもの。店に常備している。ご希望があれば、こちらのジョッキーでヱビスビールを大量に飲むことができます!!
この日たまたまお一人で来店していた常連客さんがチャレンジすることに。「ジョッキーの中に「海」が見える」との名言(迷言)を残し、目を回されて帰宅されたようです(笑)。