from ヘルシンキ - 8 - 「今持っているものの中で出来ること」by Riikka
(2010.04.13)「フィンランド女性に学ぶ 幸せ力」
File.07 Riikka Pöyhönen(31歳)
勉強に、仕事に、趣味に、
幅広い活動を続けているRiikkaさん。
最近では、フィンランドで話題になった
テレビコマーシャルに出演されていました。
数年前に病気を経験して考え抜いた、
Riikkaさんの「幸せ」についてうかがいました。
Study and Work:今年は“果実”を収穫する年。
大学院で音声言語学、コミュニケーション学を学びながら、
ラジオシアターのアシスタントをしています。
大学に入学してから今までの10年間、様々な分野で挑戦をしました。
大学は教育学の勉強からスタートしましたが、社会学、心理学、演劇学と
興味が移り変わり、最終的に音声言語学、コミュニケーション学に辿り着きました。
勉強と並行して、仕事や創作活動にも取り組みました。
教育学を学んでいた頃は、学習障害の子どもたちに勉強を教える特別クラスを担当。
その後、障害があり生活するのが困難な女性のパーソナルアシスタントとして
3年間働きました。子どもたちに勉強を教える仕事からも多くのことを学びましたが、
パーソナルアシスタントとして、3年という長期間、1人の人と向き合い、
心を通わせる過程はすばらしい経験でした。
勉強や仕事のほかに、演劇に興味があったので劇団を結成。
プロデューサー兼ディレクターとして、50人のメンバーと協働して、
演劇を仕上げたときの達成感は、今でも忘れられません。
この10年はおもしろいと思ったことに何でも取り組んできましたが、
今年は「集大成=“果実”を収穫する年」にしたいです。
まずは、夏までに修士論文を書き終えて修士号を取得すること。これが大きな目標です。
旅先での写真。 |
Turning Point:病気が教えてくれたこと。
大きな転機は2つありました。
1つ目は、夫との出会い。大学のパーティーで出会いました。
交際1年後にプロポーズを受けましたが、彼が仕事で1年間ナミビアに行くことに。
帰国後に正式に結婚することを約束し、一緒にナミビアに行きました。
知っている人のいない土地での生活。自然と協力し合いました。
でも彼が家に帰ってくるまで、何もせずに待っているだけでは、退屈すぎる毎日。
ナミビア大学で研究員として働いたり、現地での人脈を少しずつ築いて、
生活を楽しむ努力をしました。帰国する頃には、ナミビアを離れるのが
さびしくて仕方なくなるほどになりました。
帰国後には、結婚し新婚旅行で3週間フランスに滞在しました。
そして、大きな幸せを感じていた矢先。ある朝突然、背中に大きな岩を
背負っているような重い倦怠感で、ベッドから起き上がれなくなってしまったのです。
これが2つ目の大きな転機です。
いくら検査をしてもはっきりした結果が出ず、神経性の病気と分かるまでに
1年かかりました。
その間は、効果的な治療もできなかったため、本当に苦しかったです。
勉強も仕事も何もすることができない。自分の体に何が起きているのか分からない。
夫がいなければ、あの時期を乗り越えることはできなかったと思います。
自分を支えてくれる家族や、親しい友人たちがどれほど大切か、実感しました。
それまでは、目の前のことに夢中になる生活。
でも、どんなに忙しくても、立ち止まり自分の体の声に耳を傾けること。
そして、家族や大切な人との時間を疎かにしないこと。
これは病気が私に教えてくれたことです。
旅先での写真。 |
Happiness:「あなたがいてくれるだけで、うれしい」という言葉。
自分ひとりの時間を持つことや、一生懸命学び、働き、何かを達成することは重要です。
でも、大きな病気を経験して分かったことは、どんなにすばらしい成果も、
「あなたがいてくれるだけで、うれしい」と言ってくれる家族や友人がいる幸せには
かなわないということです。
がむしゃらに走り続けるだけで、気づいたら、周りに自分を想ってくれる人、
苦しみや喜びを分かち合ってくれる人がいなかったら……。
自分を愛してくれる人を愛すること。大切にしていきたいです。
夫Olliさんと2人で。 |
Dream For Next 10 years:日常の中にも喜びを見つけられるように。
今は夫と2人の家族ですが、この10年で家族が増えているといいなと思います。
そして、これまで学んできた、音声言語、演劇、コミュニケーション関連分野で
本格的に仕事をしたい。家事や日常のしなければいけないことの中にも、
喜びを見つけられるようになっていたいです。
Olliさんからの贈り物のチョコレート。素敵なメッセージ入り。 |
Message:今持っているものの中で出来ること。
女性が働きやすい、生きやすい社会だと言われるフィンランドでも、
女性たちは悩んでいます。
でも、私たちは、今持っているものの中で出来ることを考えるしかありません。
「今出来ることの中でベストを尽くせばいい」
病気に苦しんでいたときに、夫が言ってくれた言葉です。
ギブアップしたらそこでおしまいです。
有名な言葉ですが、コップの中に水が半分入っているとき、
「もう半分しかない」と考えるか「まだ半分もある」と考えるか。
私はいつも後者でありたいと思っています。
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自分の体の声に耳を傾けること。そして、家族や大切な人との時間を疎かにしないこと。
Riikkaさんの体験から紡ぎ出されたメッセージ。私も大事にしていきたいです。
この内容は、2010年4月6日取材当時の情報です。