from パリ(たなか) – 15 - トラムに乗って、ブラッサンス公園の古本市へ。

(2009.08.10)

パリに来て驚いたことの一つに骨董市がある。有名なクリニャンクールの常設の市場(といおうか古道具屋の集合体)とは別に、あちこちの公園広場や駅前通りなどで定期的に開催される骨董市が多いのにはびっくりした。歩道にテントを張って500メートルほど道具屋が並ぶ。郊外のボロ市では露天商も多く、俄雨が降るとシートを掛けたりして大変だ。濡れてもどうってことないガラクタだったりするのだが。そんな市に並んでいる商品の多様さには驚くというよりは、あきれた。こんなガラクタ同然のゴミ、欲しいと思う人がいるのか?誰がどうして捨てないでとっておいたんだ? どこで拾って来た? もしかして盗品では? と、?マークが100個くらい付きそうな“逸品”が平気で並んでいるのだ。

垂れ幕には、古本市、掘り出し物あり! 年中土曜と日曜開催、と書いてある。素見しながら歩いていると、パイプ煙草の匂いがあちこちに漂う。古本屋のオヤジはパイプ好き?なのかな。1時間ほど楽しんで私は収穫なし、イナバさんは2冊お買い上げ。16ユーロを10ユーロだかにまけてもらったようです、さすが地元ピープル。

骨董市には必ず古本専門店がある。私はフランス語の小説は読めないので、ビジュアル系の本を立ち読みして楽しむ。ある日曜日の午後、週末だけ開く常設の古本市にイナバさんに連れて行ってもらった。パリの南、15区のブラッサンス公園Parc G.Brassensだ。イナバさんとは若い頃に日本で骨董めぐりをした仲間だが、掘り出し物を探す楽しみはパリに居ても健在だった。二人とも今や骨董の域にさしかかりつつあるが(イナバさん、失礼)古くなったものでも大事に使い続けて現代に生かすのが骨董の心なのです。

ブラッサンス公園へは、トラムを利用した。パリの電車や地下鉄は使い古しが多く、椅子は壊れてる、窓には落書き、最悪なのは空調が無いのに窓は開かないから夏は蒸し風呂状態。文明国の乗り物とは言えないシロモノ。だけど、郊外を走っているトラムだけは別。最新デザインで、車両のモーター音は静かだし、床も低く乗りやすいし、インテリアも明るい暖色系で気分良し、なんと冷房完備!パリ中がトラムに変ってほしい。公共の乗り物は新しいほうが好きだ。

公園の名前のブラッサンスは、この近くに住んでいたフランスの国民的歌手の名前からとった、とイナバさんに教えてもらった。馬市場があった名残で、付近には馬肉料理の店も残っているらしい。パリのレストランでよく見る人気メニューのタルタルステーキも、そもそもは馬肉を使ったそうだ。
何軒か覗いているうちに、店ごとに(微妙に)ジャンル分けされているのがわかる。1939年版の赤い表紙のミシュランブックを発見。14ユーロ。いくらなんでも道路も変っているだろうし、ホテルやレストランが残っていたとしてもタイムマシンがないと使えないしなあ。

それはともかく、気持ちよくトラムを降りて、公園まで歩く。この公園は50年くらい前まで屠殺場だったらしい。その一角にある馬市場として使われた屋根付きのオープンスペースが、今では古本市の会場に。パリは建物の再利用が得意技だ。隣接する公園から吹き抜ける風を受けながら、のんびりと本のページをめくる。パリに来て興味を持ったバンド・デシネ(漫画)の本でも探してみようか。

駅のホームみたいな鉄屋根。古いものを壊さないで再利用するというのは、環境優先の今の時代にぴったりだけど、一度作ったものを簡単には捨てないという、骨董の心に通じるものがある。ま、ケチ!の一言かも知れないけれど。建物の奥が広い公園になっている。本あさりに疲れたので、公園の散歩までは今回パス。
古本市のそばの通りに可愛いパン屋があったので、葡萄パンを買って帰る。パイもあったが、ぐっとがまん。昔ながらのパン屋は、店先を伝統的なガラス絵で飾ったそうで、(日本の銭湯の富士山みたいなもの?)パリ下町でも時々見かける。葡萄パンは翌朝食べたら、しっとりと重みもあって、風味絶佳でありました。天然酵母?かな。