from 鳥取 - 92 - 神話に登場する神々の足跡を訪ねて
古事記ゆかりのパワースポットin鳥取

(2012.09.10)

古事記編纂1300年

2012年は、現存する最古の歴史書「古事記」が編纂されてから1300年を迎える年。鳥取県のお隣の島根県ではそれを記念した大規模イベント「神話博しまね」が開催されるなど、全国にあるゆかりの地ではさまざまなイベントなどが開催されています。古事記には数多くの神々が登場し、神話や歴史が書かれています。わたしも小学生レベルに訳された本を、ある程度大人になってから読んだことがありますが、こういう言い方は乱暴に聞こえるかもしれませんが、今の道徳観からすると内容がむちゃくちゃで、歴史の授業で存在だけは知っていたけど、こんな内容だったの!?と、ちょっとした衝撃を受けたのを覚えています。でも人間の原始的な感情といいましょうか(神様に対し感情というのは間違っているかもしれませんが)、本質的な部分が素直に表されている気がして、とても魅了されました。いつかまたもうちょっと原文に近い訳本を、じっくりと読んでみたいものです。

さて、このたびは鳥取県にある古事記ゆかりのパワースポットをご紹介させていただきたいと思います。みなさんご存知、因幡(いなば)の白うさぎ伝説の舞台・白兎(はくと)海岸をはじめ、鳥取県にもゆかりの地がたくさんあるんです。

因幡の白うさぎは愛のキューピット?

古事記に記されている神話の中のひとつ、因幡(いなば)の白うさぎ伝説。サメをだまして島から陸へ渡ろうとした白うさぎが、だました見返りに毛皮をはぎとられ、そこへ偶然通りかかった大国主命(おおくにぬしのみこと)に助けられるといった物語です。舞台となった白兎(はくと)海岸は、夏は海水浴客でにぎわう観光地です。近くにある白兎神社は古くから皮膚病や怪我にご利益があるとされ、境内には、白うさぎが身体を洗ったと伝えられる不増不滅の池があります。私は近くの出身なので、小さいころからこの物語はよく聞かされていましたし、小学校のときには学芸会で僭越(せんえつ)ながら大国主命役を演じたこともあります。ちなみに主役級の役を演じたのは後にも先にもこの時だけですが(笑)と、毛皮をはがれた白うさぎが大国主命のおかげで元の姿になったという、ここまでの物語はみなさんもよくご存知だと思います。でもこれにはまだ続きがあるのです。

諸説ありますが、なるべくわかりすい形でご紹介させていただきますと、そもそもこの物語は、大国主命が兄神(八十神)たちと一緒に、因幡の国八上の里(現鳥取市河原町)にいる八上姫(やかみひめ)という美しいと噂の娘に会いに行く途中の出来事。弟の大国主命に自分の荷物を押し付け、先を歩いていた兄神たちは、毛皮をはがれて泣いていた白うさぎに対し、わざと傷がひどくなるようなアドバイスをします。その後、遅れてやってきた大国主命の親切で適切なアドバイスにより回復するのですが、白うさぎはこのとき大国主命に「八上姫はあなたを選ぶでしょう」と告げます。そして白うさぎは先回りして八上姫に一連の出来事を伝えます。その結果、兄神たちは八上姫に求婚するもことごとくふられ、八上姫と大国主命はめでたく結ばれたというのもの。このことから、白兎神社は縁結びのパワースポットとしても人気を集めています。因幡の白うさぎがきっと素敵な出会いをとりもってくれる事でしょう。八上姫が祀られた売沼(めぬま)神社(鳥取市河原町)も、ぜひ訪れてみてくださいね。周辺にある道の駅では、縁結び関連グッズも販売されていますので、こちらも要チェックです。


左・白兎(はくと)神社
右・大きな耳と、しっぽをかたどったポンポンがとってもキュート な白兎神社の御守

左・道の駅白うさぎの名物「もさバーガー」。イカ墨入りで真っ黒 なハート型のバンズがインパクト大
右・八上姫ゆかりの鳥取市河原町にある道の駅かわはらで販売されている「恋うさぎ」
復活・再生パワーみなぎる赤猪岩神社、大石見神社

因幡の白うさぎの粋な計らい(?)によって結ばれた二人ですが、大国主命の兄神(八十神)達は、なかなかやっかいな人たちだったみたいで。八上姫のハートを射止めたことを逆恨みされた大国主命は、兄神達から迫害を受けます。それはひどいもんで、赤い猪(いのしし)を落とすから、下から受け止めろと嘘を言って、実際には真っ赤に焼けた大きな石を落とします。その結果、大国主命は命を落としてしまうのですが、それを嘆き悲しんだ大国主命の母は、天に昇ってカミムスビノミコトに訴え、大国主命は復活するのです。その舞台となったのが鳥取県西部の南部町にある赤猪岩(あかいいわ)神社だそうです。兄神達の迫害はこれだけで終わりません。今度は木の股に挟んで殺してやろうというのです。またもや大国主命は命を落としてしまいますが、その舞台となったのが同じく鳥取県西部にある日南町の大石見(おおいわみ)神社です。しかし、ここでも母の力により大国主命は再び復活します。そのことから、この2つの神社は“再生のパワースポット”として注目されています。2度復活した大国主命もそうですが、復活させた母のパワーもすごいもんだったろうなぁと、私も子を持つ一人の親として、この神話に共感に近い感銘を受けます。私もぜひいつかは訪れてみたい神社です。

赤猪岩(あかいいわ)神社
大石見(おおいわみ)神社
倭文神社のかほり袋で女子力アップ!

次にご紹介するのは鳥取県中部にある倭文(しとり)神社。ここでは最近新たな開運グッズが登場し、話題をよんでいます。

伯耆国(ほうきのくに)一ノ宮として古くから信仰をあつめてきた倭文神社は、かつてこの地方に織物(倭文織、しずおり)を生業とする倭文族が住んでいたことから、織物の祖神といわれる武葉槌神(たけはづちのみこと)をお祀りするために創建されたと考えられています。また、大国主命(おおくにぬしのみこと)の娘で、安産の神として知られる下照姫(したてるひめ)なども祭神として祀られています。参道の途中には、まるで妊婦さんのお腹のようにぽっこり丸い安産岩とよばれる岩がありますが、これは昔むかし、難産で苦しむ婦人が安産祈願の帰りに下照姫の霊夢を感じ、この岩で無事出産したという言い伝えがあるそうです。下照姫は、それはそれは光り輝くばかりに美しく容姿端麗だったことから、その名が付けられたそうです。きっと男性のみならず、女性も憧れる存在だったのではないでしょうか。そんな下照姫が祀られた倭文神社は、 “女子力アップのパワースポット”として、女性にありがたいご利益のある神社です。

お参りの際、ぜひ手に入れて欲しいのが「かほり袋」。「かほり袋」は、先にご紹介した倭文織をモチーフに、麻でできた素朴な風合いの小さな袋で、その名の通り、中には香りのするオリジナルブレンドのハーブが入っています。「願い札」が同封されており、お願いごとを書いたら2枚(複写式)のうち一枚は神社へ奉納し、一枚は袋に入れてお守りのように持ち歩きます。もちろん、大切に保管しておいてもよいでしょう。香りは「ぬくもり」「みやび」「こころ」と名づけられた3種類の中から選ぶことができ、私も先日お参りしてきたのですが、悩んだ末、「こころ」を選びました。ちょっぴりスパイシーで、心和む香りです。これで私も女子力アップできそうな予感!?

※「かほり袋」の販売については、文末にあるURLをご覧ください。また、団体または個人向けのツアーもございますので、ぜひご利用ください。

倭文(しとり)神社
女子力アップの開運グッズ「かほり袋」
今も語り継がれる神々の足跡

鳥取県にある古事記ゆかりのスポットをいくつかご紹介しましたが、これはほんの一部で、まだまだたくさんあります。それらひとつひとつの伝承を調べてみると、ほんとにおもしろいです。

例えば、鳥取県西部の南部町には清水井(しみずい)という美しい水の湧き出る場所があります。大国主命が兄神達の陰謀で赤い大きな焼け石により命を落としたとき、母が母乳とここの水で練った薬を塗ったところ、息を吹き返したという伝説が残されています。他にも、天照大神が征西のために降臨されたと伝わる鳥取市河原町の霊石山(れいせきざん)には、案内役をした猿田彦が冠をおいて休んだと伝わる御子岩などの遺跡が残されています。このような細かな伝承も、今もなお語り継がれ各地に残されているんですね。そういったところにも古事記の魅力があるのかもしれません。私も自分の気づかないうちに、すっかり“歴女”こと歴史好き女子気取りです。みなさんもぜひ、古事記ゆかりの地をめぐる旅へ出かけてみませんか?鳥取県内にある古事記ゆかりの地ガイドマップもありますので、ぜひご利用ください。(ガイドマップの詳細については、文末の参考URLをご覧ください。)

清水井
霊石山山頂からの眺め。現在はパラグライダーなどのフライト エリアとして人気。

【参考URL】
古事記編さん1300年記念企画(鳥取県観光情報HP)
道の駅神話の里白うさぎURL(もさバーガー)
道の駅清流茶屋かわはらURL(恋うさぎ)

【倭文神社「かほり袋」について】
女神下照姫とかほり袋〜倭文神社参拝ツアー〜(湯梨浜町観光協会HP)