from パリ(たなか) – 62 - B線を南へ。サン・レミの農場と中世の城跡。

(2010.07.12)
クーベルタン牧場の牛。柵に沿って緑の中をサイクリングロードが続く。

パリ郊外の北東部にあるシャルル・ドゴール空港からパリ市内へ移動するのに、私はいつもRER(高速郊外鉄道)のB線を利用する。空港が始発駅なので必ず座れるし、サン・ミッシェルまで乗り換えなしの直通で、早い、安い。B線はパリを抜けて、さらに南の郊外にある終着駅サン・レミ・レ・シュヴルーズ(Saint-Rémy lès- Chevreuse)まで走っている。この沿線にはソー公園があったり、友人が住んでいたりするので、途中の駅まではよく利用するのだが終点までは行ったことがなく、電車の先頭車両に表示されたサン・レミ(St-Remy)という駅名を見るたびに、どんな町だろうと時々気になっていたのでした。

初夏の気持ちよく晴れ渡った日に、念願(?)のサン・レミまで電車で行って、稲葉さんの案内で駅を起点にハイキングを楽しんで来ました。ソー公園を過ぎるあたりから窓の外の景色はどんどん田舎っぽくなっていき、終点のサン・レミ駅で降りると周りはすっかりのどかな田園風景、空が高く、広い。パリから小一時間で、駅前の広場の向こうはすぐに牧場みたいな変化にびっくり。道路と並行している快適なサイクリングロードを歩き始めると、すぐ左手にクーベルタン男爵(あの、近代オリンピック創立者)の屋敷が見えてくる。右は広大な牧場。この一帯はクーベルタン農場と呼ばれ、乳製品や農作物を生産しているらしい。朝と夕方だけ売店が開くそうなので、帰りに寄るとして、牧場沿いの田舎道の遠くに山羊を見ながら、近くに牛も見ながら、動物のなつかしい匂いも嗅ぎつつ、道端の草花(イラクサに触れると危険!)も観察しつつ、のんびりとハイキングというよりは、どこまで行っても上り下りがないから、だらだら歩きかな。

 
牧場を過ぎると小径に沿って小川が流れ、昔の洗濯場や、皮を鞣した作業場の跡、ときどき鴨に会いながら、やがてシュヴルーズという古い小さな町に到着、1時間歩いたかなあ。カフェや八百屋がある石畳の道を上って行くと教会の尖塔が見えてくる。教会の中は意外と明るく、直射日光で明るい外から突然入っても、何も見えない!というようなこともなかった。ひんやりと静まりかえった礼拝堂の床に、ステンドグラスの光が虹のように射していた。教会を出て、後方の丘に聳えるマドレーヌ城跡まで一気に登ろうと意気込んだけれど、思いのほか急な坂に息が切れる。ようやく城門をくぐって、塔の見張り台から眺める風景は、今歩いてきた町の家並と緑の牧場や農地、青い空の下に森がどこまでも際限なく続いていて、山のある風景を見慣れている私には、ポイントがない地平線はどこか落ち着かない。
 

川の水を、洗濯場や皮の鞣し作業に使っていたらしい。
シュヴルーズの町。この先を左に曲がると教会、正面の丘の上に見えるのがマドレーヌ城。
晴れた日は、ステンドグラスの光もきれい。
城の上からの眺めの美しさは、登ってくる時に消費したエネルギーに比例する。
クーベルタン牧場のガチョウ。美味しいフォアグラになるんだぞ。
うさぎ小屋の番犬は、人のいいオジサンみたい。しかし暑いなあ。

 

帰り道、緑の草原に寝転ぶと草と土の湿気が背中に伝わり、汗ばんだ体が気持ちいい。腕枕して青い空を見ていると、オルリー空港を発着する飛行機の白い筋雲が船の航跡のように流れて、空なのか海なのか、距離感も曖昧になり、なんだか空中に浮遊しているようで、疲れも手伝ってうとうと眠ってしまいました。一休みしたあと、クーベルタン農場の売店で飲んだ絞り立ての牛乳は、なんだか水のようにさらさらとして、美味しいのかどうか味わう間もなく喉を通過しました。それにしてもチーズケーキの大きかったこと。
 

農場で作ったジャム、チーズいろいろ、旨そう。ジャガイモや人参、卵なども売っています。
直径40センチちかくありそう。1ピース(1/8)1.9ユーロ(約200円)
絞りたての牛乳って、さっぱりしています。