ハンドメイドな旅 1

(2008.06.17)
○月×日
朝、東京を発つときにはどんよりとした曇り空。甲州街道から中央高速に乗り、一路西へ。上諏訪まで出向いたみた。上諏訪で高速を降りて、甲州街道に再会。新宿で別れた(?)ときには往来の激しい大通りだったわけだが、ここでは静かな趣だ。

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「Cella MASUMI」を見に、上諏訪へ。

上諏訪にいくつかある造り酒屋のほとんどが、この甲州街道に沿っている。それらの中でリーダー的存在な「真澄」を手がける宮坂酒造さんがギャラリーとショップを兼ねた、サロンのような「Cella MASUMI」を開かれている。古い店舗を巧みに利用した店内で、知り合いの陶芸家が個展を開くとの知らせを聞いてやって来た。というのが、上諏訪訪問の理由。


島るり子さんの新作。


島さんの作品はふだんの暮らしを少し豊かにしてくれる器。

陶芸家の名は、島るり子。彼女の粉引や焼き締めは、ふだんの暮らしを少し豊かにしてくれる器として重宝する。そんな新作たちが畳の上に並ぶ姿をしばし鑑賞。そうしていると島さんがやって来た。ショートボブにナチュラルなワンピース、足元はビルケン。気取らない感じ。作品もそんな感じ。


ギャラリーの主宰者、宮坂公美さん。

近況報告なども交わししつつ、器を選ぶひととき。ギャラリーの主宰者である当主夫人の宮坂公美さんも、おしゃべりに仲間入り。毎月、刻印作家のアトリエをギャラリーの畳の間に再現したり、ジャスコンサートを開いたり、季節感たっぷりの催しをなさっているとか。朗らかな辣腕マダム。


今どきなブリキのバケツ。

ギャラリーを後にして、街道沿いをうろちょろ。古い金物屋さんの店先で、“今どきなブリキのバケツ”に遭遇。ワインボトルが1本入るサイズ? ワインクーラーにできそう。「端材として捨てられるブリキがたっくさん出るんですよ、何かに使えないかと思って」と、小さいバケツやスマートなジョウロなどが作られた模様。丸柳大津屋(ここのお店)の若旦那、北澤光彦さんってば、人懐っこく説明してくださる。話が弾んで、名刺までいただいたなら、肩書きに「rhythm&soul musical washborder」と。


丸柳大津屋のご主人で音楽家の北澤さん。

washborderとは、洗濯板。洗濯板を楽器として奏でるリズム&ブルースがあるそうで。北澤氏はそのプレイヤーなのだそう。これ、演奏姿です。丸柳大津屋さんは、金物屋として彼のお父上で4代目。それ以前は造り酒屋だったのだそう。店内は、なんと古い蔵と接続している。というか無理やりくっつけちゃったような? 入れてもらうと、さすが冷んやり。「ここ、ライブスペースに改装しようと思ってるんですよ」、と若旦那。夏の夕べの演奏など、気持ちよさそう。


酒ぬのや本金酒造さん。


酒蔵特有の香りの中へ。


本金の三階の滑車。

「実は、お連れしたいところがあるんです」と、若旦那。もちろん、ほいほいとついて行きます。「生産量が少ないから、上諏訪でしか手に入らないお酒で」と聞けば、ますます気になる。歩いて5分で着いたのは酒ぬのや本金酒造さん。若旦那2号(勝手に命名)、宮坂恒太朗さんに、若旦那1号(北澤さん)が、「東京からいらしたから、少し中を見せてあげてくれない?」なんて頼んでくれた。敷地内を奥へ、奥へを進むと、うわぁ。木造3階建ての堂々たる酒蔵が。中に入ってもいい、とまで! 「納豆食べてませんから」と、聞かれもしないのに宣言してから酒蔵特有の香りの中へ。


処女作と、太一。


新聞紙に包まれるところが気に入って。

「祖父も父も、僕に継げとは言わなかったんですけどね。東京の大学に通っていた頃、『やっぱり、閉めたくはない』と思ったんですよ」と。昨年、初めて自分で設計(どんな味わいの酒にするか、“設計する”と言うらしい)したのだそう。彼の処女作と、「杜氏さんの名前をつけた、うちの看板商品です。ぜひ」と薦められた「太一」を購入。新聞紙に包まれるところが気に入って「袋は要りませんー」とエコぶってみた。熱い気持ち、飲ませていただきます。