from 鳥取 - 98 –「民藝」を今に伝える鳥取の手仕事
因州・中井窯をたずねて

(2013.06.12)

山陰を代表する民窯「因州・中井窯」

鳥取市河原町中井、周囲を美しい山々や田畑に囲まれた緑ゆたかな地に、1945(昭和20)年に開かれた因州・中井窯。すぐそばを流れる曳田川はカジカ蛙の住む清流。赤い瓦が印象的な、佇まいの美しい窯元です。

陶工は二代目 坂本實男(ちかお)さんと息子の三代目の坂本章(あきら)さん。實男さんは、1948年に作陶の道に入り、1952年、吉田璋也氏の導きにより牛ノ戸焼脇窯として新作民芸に取り組むことになります。それから、40年余りを経て、1996年、因州・中井窯と改称。2000年には、世界的工業デザイナー柳宗理氏にデザイン指導を受け、縁抜きの染め分け皿などの柳宗理ディレクションの製品を復刻製作。現在、中井窯の器は全国のショップで取り扱われ、今の民芸を代表する窯元となっています。
工房に入ると静かな空気の中、實男さんが黙々とろくろに向かっていました。棚には製作中の器が多数、整然と並んでいます。今年オープンした工房となりの展示室には、大きさ形様々の染分の器がディスプレイされています。2色の染分皿は4寸から尺皿まであり、ほかにも少し深みのある「うべの皿」や「角切角皿」などがあり、大きさ、種類が豊富です。カップ類も、掛分コーヒー碗皿やスープ碗皿、切立マグカップなどがあります。色は、緑黒のものと緑白のものがあります。

さて、三代目の章さんは陶工として新作民芸を制作する一方、30代の頃から日本民藝館展に出展、2001年に日本民藝館賞を、2005年には日本陶芸展で優秀作品賞を受賞しました。

その後、作家として陶芸の幅を広げたいという思いから、公募展の最高峰である日本伝統工芸展に挑戦。民芸の考え方とは異なる伝統工芸というジャンルで、試行錯誤を繰り返しながら、2012年に初入選を果たしました。初出展から6年たち、ようやく伝統工芸の世界が見えてきたと語る章さん、これからの作品がとても楽しみです。


左:美しい佇まいの因州・中井窯。     
右:すっきりと整頓されている工房。2代目の實男さんがろくろに向かう。


左:様々な掛分けの器。展示室にて。
右:因州・中井窯三代目 坂本 章さん

料理を引き立てる染め分けデザイン

人気の高い染分皿ですが、どんな料理に合わせれば良い?と聞かれることがあります。続いては、中井窯の食器の素敵な使い方についてご紹介します。

鳥取県八頭町の緑ゆたかなロケーションにある『大江ノ郷自然牧場 ココガーデン』 。こちらは、たまごと牧場スイーツ専門店。連日にぎわうカフェではコーヒーやスイーツなどに中井窯の染分の器が使われます。染分を選んだ理由は、地元のものを使いたかったこと、お店の北欧風のインテリアとマッチしたことだったそう。使ってみると、黒と緑の色味に卵の黄色がとっても映えて見えますとのこと。なるほど! 黒緑の染分けにスイーツが引き立っています。

お客様の反応も良く、染分皿のメニューを尋ねて注文されたり、使い心地をほめられることもあるそうです。実際に使ってみると、カップの持ち手の部分の太さや丸みが手になじみ、口にふれる部分が少し薄くなっていて口当たりが良くとても飲みやすいものでした。カプチーノやカフェオレにはふんわり泡立てたミルクもたっぷり入る、大き目のカップが使われています。ちなみに、こちらのカフェと中井窯は車でおよそ20分の距離にあり、あわせて立ち寄ることも可能です。

次は、普段の食卓での一例。染分皿に、鳥取の名産品「とうふちくわ」や「あごちくわ」を盛り付けると、おもてなしにもぴったりの目で楽しめる鳥取メニューに。新鮮な野菜や果物をのせるだけでお洒落に見えます。黒と緑が素材を引き立ててくれるので、毎日の食卓にもとても重宝します。


縁抜き染分皿×とうふちくわ・あごちくわ


縁抜き染分皿×鳥取のくだもの


ココガーデン「大江ノ郷バウムクーヘン」と「カプチーノ」

因州・中井窯
住所:鳥取県鳥取市河原町中井243-5
お問い合わせ先:Tel.0858-85-0239

大江ノ郷自然牧場 ココガーデン
住所:鳥取県八頭郡八頭町橋本877
お問い合わせ先:Tel.0120-505-606

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