from 北海道(道央) – 33 - ぶらりと「小樽」の街中を歩いてみる。《3》

(2010.06.14)
天狗山には、2基のロープウェイが12分間隔で運行している。

北海道のスキー発祥の地「天狗山」。

ぶらりと「小樽」の街中を歩いてみるシリーズも、今シーズンは「佳境」。小樽地ビールを堪能し、しばし酔いを醒ましてから次の小旅行へと出かけてみることにした。
 
目的地は「天狗山(てんぐやま)」。実は、JR小樽駅から徒歩で山の麓まで頑張って歩いてみたが、約1時間10分かかった。しかも、斜度15度の急勾配を登るのだから、かなりの覚悟が必要である。お腹を空かせるにはちょうどよい運動ではあるのだが。

そういう覚悟をしたくないという方には、JR小樽駅から天狗山行バスが運行されていて、9時以降、1時間に3本運行されている。バスであれば、麓まで18分程度で行くことができるので、時間に余裕がない場合や「歩く根性が沸かない」という方にはバスの利用をお勧めしたい。
 
札幌で生まれ、札幌で育った筆者にしてみれば、小学生から高校生まで体育の授業であった冬場の「スキー授業」は大好きな時間であった。今冷静に考えれば、子供の成長に応じてスキーを2年置きに新調しなければならないことから、「スキー授業」は両親にとって大きな出費だっただろう。両親には感謝である。

脱線したが、「大好き」というのと「上手」というのは自ずと違うのだ。「小樽出身」という同級生が同じクラスにいたとすれば、俄然クラス全員の彼・彼女を見る目は変わる。それほど「小樽出身者」=「スキー上級者」というレッテルが、その頃の札幌では当たり前だったし、誰もが期待を裏切らない滑りを見せてくれた。
 
その理由は、天狗山にある「小樽天狗山スキー場」。北海道におけるスキー発祥の地であり、1923(大正12)年に「第1回全日本スキー選手権」がここで開催されたのだ。また、北海道で初めてのリフトが天狗山に設置されたのも1952(昭和27)年と古く、標高差332m、最大斜度42度の斜面を小学生時代から授業で滑るのだから、オリンピック選手も多数輩出したという「小樽出身者」=「スキー上級者」という言葉は、実に説得力に溢れている。
 

「坂の街・小樽」ではごく当たり前に見かける「斜度15%」の標識。今後、除雪経費が少なくなると、冬期間における市民生活への影響も心配される。
「ようこそおたる天狗山」の看板の先には、まだ薄っすらと雪が残る「小樽天狗山スキー場」。

なんと!「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン2009」で……。

さて、その天狗山だが、その地名の由来は諸説あり、はっきりしたことは分からない。
 
が、昨年、日本の代表的な観光地を星で評価する「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン2009」(The Michelin Green Guide Japan 2009)で、小樽天狗山ロープウェイ・展望台が「一つ星」を獲得したのだから、小樽市民は驚いた。大方の反応としては、何より「ミシュランって、料理店の評価本でしょ?なんで天狗山がミシュランなわけさ?」ってな感じの驚き方だった。

元々北海道内では、天狗山の夜景は「素晴らしい」という定評があり、函館山(函館市)、藻岩山(もいわやま・札幌市)とともに、「北海道3大夜景」と言われてきたのだから「一つ星くらい、とって当たり前」なのかも知れない。
 
麓から山頂へと向かうには「天狗山ロープウェイ」を利用する。さすがにここを歩いて登るには、体力が残っていなかった(笑)。

ロープウェイは12分間隔で運行しているし、夏季は22時まで、夏季を除く春から秋にかけては21時まで運行していて、JR小樽駅行きの帰りのバスへの乗車にも間に合うよう時間設定がされている。
 

「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン2009」の「一ツ星」受賞をPR。恐らく多くの皆さんが、「ミシュランにはそういう星もあったのね」と、新たな知識を得ることになる。。
説明書きによれば、「天狗には古くから超自然的存在による魔力があり、高くて赤い大きな鼻に触れることで『魔よけ』や『願いごと』が叶うと言われている」らしい。なお、鼻のどこをなでるかによって、効用が違うということを筆者は後日知り、自分のなでた場所は「安産」に効用ありとのこと(苦笑)。

山頂で「天狗の館」「小樽スキー資料館」「展望レストラン」に満足。

本来は、夜景を見たかったのだが、残念ながら、この日は日本海側からの「海霧」が立ち込めつつある小樽の街を眺めることに。

約4分で麓から山頂まで登れば『展望レストランてんぐ』にて、ビールやワイン、食事を用意して待っていてくれる。眼下に広がる小樽の街並を眺めながらの食事は、また格別。
 
さらに、天狗山というだけあって山頂には、日本全国から集められた天狗のお面などが展示されている「天狗の館」、北海道のスキー発祥の地だけあって「小樽スキー資料館」、そのほかにも「シマリス公園」「レーザークレー射撃」「天狗山スライダー」など、ご家族で十分楽しむことのできる施設が充実している。
 
折角なので、夕方から『展望レストランてんぐ』で彼女とのデート、その後、最終のロープウェイとバスを乗り継いで小樽の繁華街へと出かけ、小樽で一日過ごすというのも、なかなか洒落た週末のデートプランなのではなかろうかと考えるが、いかがでしょうか。

天狗山山頂から眼下に小樽市内を見渡す。残念ながら「海霧」が晴れず。
『展望レストランてんぐ』にて、まずは北海道限定「サッポロクラシック生ビール」を注文。気分も爽快!!
「ふわふわ卵のオムハヤシライス」をいただく。
北海道に初めてスキーを伝えたオーストリア陸軍武官「レルヒ少佐」の功績が、「小樽スキー資料館」には写真とともに展示されている。
スキー板やビンディングの変遷を見てみると、「単板」という材質のスキー板と「カンダハー」という小学生の頃に使っていたビンディングを発見し、懐かしい想い出が甦る。
「天狗の館」には、全国各地から収集された様々な天狗が展示されていて、マニアでなくても楽しめる。

住宅街にある老舗『いぐれっくy5.3』さん。

ロープウェイで麓まで降り、その後は徒歩であっても登り坂より下り坂の方が楽であると言えば、その通り。

JR小樽駅方面へと歩き、第1回でご紹介した「カトリック富岡教会」近く。実は筆者の自宅から徒歩3分という絶好の場所でもあり、住宅街にぽつりと店を構える小樽の老舗がそこにはある。
 
『いぐれっくy5.3』さん。土日ともなれば、ランチ・ディナー問わず、JR小樽駅からタクシーで一区間の距離を乗り付けて、2人組、4人組の女性やカップルで賑わっている「北海道産・牛肉料理」に特に定評のあるお店。

オーナーシェフである安川眞美(やすかわ・まさみ)さんと奥さまが中心となり、店を営まれている。

「野菜類はやはり後志(しりべし)地方で作られたものが新鮮で美味しいので、車で常に新鮮な野菜を買い付けに出かけているんです」と、奥さまは語られる。

自分にとっては、近所にありながらも「予約」してから足を運ばなければならないという、とても大切かつ大事にしているお店でもあるのだ。

小樽には、繁華街から離れたところに「ぽつり」と店を構えている老舗も多い。

そういう意味からも、「ガイドブック」に頼ることなく小樽をぶらりと歩いてみると、「古くからそこにあるもの」であったとしても、旅人にとっては様々な新鮮な出会いが待っている。

是非ともこれからの観光シーズン、小樽の街の「違った魅力」に触れてみてはいかがでしょうか?

『いぐれっくy5.3』さんの店内。小樽市内では高級住宅街の中に位置する老舗。
「牛肉」は特に質の高いものを使っているだけあり、「前菜」のビーフジャーキーは絶品。さらにカマンベールチーズとベーコンがアクセントに。
「海老とアサリのチリソース スパゲティ」。新鮮な魚介をほどよい辛さで調理。パスタ系も常連客の人気抜群。
24年の歴史。自家製ベーコンソースが自慢。道産牛のF1のみを使用しているこだわりの「ハンバーグいぐれっく風」。一度この味を知ってしまうと、すっかりこの味の虜になること間違いなし。
フランスワインを中心に、コスト・パフォーマンスの高いワインをそろえている。
仕事には絶対に手抜きがない、オーナーシェフの安川眞美さん。「美味しい料理とともに、美味しいワインを、皆さんで楽しく召し上がっていただきたい」と語られる。