from パリ(石黒) – 4 - パリ、アート散歩。《1》

(2009.09.25)
毎年9月の第三週末に行なわれる「ヨーロッパ文化遺産の日(Journées européennes du patrimoine)」。地図を片手に街を歩く人々で溢れかえります。今年は寒くもなく暑くもなく、街歩きには最適のお天気でした。

9月の新学期を迎えるのは、子供達だけではありません。アート業界も事始め。この時期、美術館の企画展も入れ替わるところが多く、ギャラリーもアートフェアに参加すべくヴァカンス明けからすぐに準備に取りかかります。そして、オークションも9月中旬から再開。オテル・ドゥルオ(Hôtel Drouot)には、待ってましたとばかりに、たくさんの人達が集まります。

オークション会社に会場を提供する、オテル・ドゥルオ。今年は9月14日から競売を再開。取り扱い品目は、実に多種多様。毎日何かしらオークションがあり、美術商から骨董愛好家、さらには生活用品を探し求める人達が肩を並べて、競売に参加します。

パリのアートフェアの先頭を切るのは、9月中旬にグランパレで行われるサロン。「ビエンナーレ(Biennale des Antiquaires au Grand Palais)」と「サロン・ドゥ・コレクショヌール(Salon du collectionneur)」が1年ごとに交互に行われます。基本的にはどちらも、美術商がスタンドで所蔵品を披露し、販売するというもの。今年は、サロン・ドゥ・コレクショヌールの年。

グランパレの、ガラスドームの下は、サロン専用の会場。2004年に修復を終えたこのドームは、外から見るのも美しいが、やはり中から見上げると、その歴史の重みが、ひときわ感じられる。1900年のパリ万国博覧会がここで行われ、日本からの訪仏団の様子をイメージすると、何とも不思議な気持ちがする。

ちなみにグランパレの屋上には、今年の5月から蜂の巣箱が2箱設置され、9月2日に初の蜜収集が行なわれました。収穫量は50キログラム。2010年春には、3つの巣箱を置き、秋からの販売を目指すとのこと。意外なことに、農薬が使われやすい田園部よりも、都市部の方が、蜂達にとっては良い環境なのだとか。オペラ座ハチミツに続き、グランパレ蜂蜜は、パリ名所蜂蜜の地位を築けるか。その味に期待。

グランパレでは引き続き、10月にはコンテンポラリー・アートフェア「FIAC」が開催され、別会場で様々なShow Offもあったり、ますますパリのアートシーンは活発に。毎年のトレンドをチェックする良い機会。

アートフェアに参加しないギャラリーも、店舗で企画展を開催。先週の木曜日は、沢山のギャラリーが、オープニングパーティーを開催していました。夏のようにはいかないけれど、まだ19時、20時までうっすらと明るい秋の夕暮れ時、道路にまで溢れ出て、シャンパーニュを片手に美術談義に花を咲かせる人達。

ギャラリーのオープニングパーティーは、木曜日に開催されることが多い。基本的には招待状があった方が無難だが、通りかかったギャラリーにすっと立ち寄る事も可能。

9月19日、20日の週末は、ヨーロッパ中の歴史的建造物がその扉を一般の人達に開く「ヨーロッパ文化遺産の日(Journées européennes du patrimoine)」。今年のパリの目玉は、モンマルトルにあるムーラン・ルージュ。19世紀末から20世紀初頭にかけて一斉を風靡し、フレンチ・カンカンを生み出した伝説的ダンスホール。トゥールーズ・ロートレックによるポスターはあまりにも有名。今年初めて一般見学を行うとのことで、日曜日に行こうと思っていたところ、土曜日初日は9時開場にも関わらず朝6時から既に200人程度の行列ができていた、とラジオで聞き、断念。

数年前にはこのイベントを利用して、エリゼ宮と、外国の賓客が宿泊するマリニー邸を見学。エリゼ宮は、これまでフランス大統領の住居だったが、サルコジ大統領はここには住まず、ヴェルサイユ宮殿近くの官邸を住まいとしている。公式晩餐会用テーブルは、フォークやナイフ、グラスの置き幅など、専門の係員が寸分違わず、計測しながらセッティングします。
今年は、40人の「不朽の人(Les Immortels)」と呼ばれる永久会員で構成されるアカデミー・フランセーズがあるフランス学士院を見学。建物は1795年のもの。
地下鉄10番線には、1930年代の車両が特別運行していた。当時は、赤が一等車、緑が二等車と分かれている。この車両目当てだった人も、偶然駅で乗り込んだ人も、乗客達は皆、初めて地下鉄に乗って喜ぶ子供のよう。

昨年秋、バルーンアートで有名なジェフ・クーンズ(Jeff Koons) の巨大オブジェを迎え、賛否両論を巻き起こしたヴェルサイユ宮殿。一般公開された翌朝の新聞には、『ベルばら』のイメージで宮殿を訪れた日本人観光客のブーイングコメントが記載されていました。今現在、世界一の高値で取引されているアーティストの作品とはいえ、このエビ浮輪が天井からぶら下がっているのを見せられたって、嬉しくないだろうなぁ……。いずれにせよ、沢山話題に取り上げられるのはとても大切なこと。そんなわけで、今年もコンテンポラリーとのコラボ展を開催します。フランス人アーティスト、グザヴィエ・ヴェイラン(Xavier Veilhan)の巨大彫刻群を9月13日から12月13日まで展示。さらに、宮殿内オペラ劇場がこの度、2年に渡る修復工事を終え、一般公開されることに。今季から音楽プログラムも用意され、ますますその活動から目が離せません。

2008年9月10日から1月4日までヴェルサイユ宮殿で開催されていたジェフ・クーンズ展。こうした新旧の取り合わせは、試みとしては面白いと思うけれど、難しいのは、イベントのその後の方向性。

 
芸術の秋、とは誰が言い出したのかわかりませんが、確かに9月の新学期には、夏のヴァカンスで途絶えていたイベント情報に、まるで乾いた喉を潤す水を求めるかのごとく、人々が群がります。これから開催される展覧会情報なども時折ご紹介していきますので、どうぞお楽しみに!