from 北京 – 4 - ただいまアート街道爆進中!? 北京的芸術信息(北京アート事情)。

(2008.11.04)

自分が、いわゆる”アート”なるものを好きになったのはいつの頃からだったか??
デザインはずいぶん前から好き、むしろ大好きだったのですが、アートを好きになったのは、結構最近のコトだと思います。二つを自分なりに解釈すると、デザインは何かを解決する「手段」、アートは制作者の「感情の発露」。得てして二つは一括りにされがちだけど、ずいぶん違う。デザインは分かり易いけど、アートは分かり難い。アートには”余白”が多い、つまり受け手に委ねる部分が多いから、分かり難いのかな。私はアートを楽しめるようになるまでにはずいぶんと時間が掛かったワケですが、ここ中国では近年急速にアート熱が高まっています。

798の中でもスペースの広さで一二を争う”798 Space”。展示スペースの奥にある本屋も面白いですよ。

その先頭を走っているのは「798芸術区」と呼ばれるエリア。北京の中心部から北東にタクシーで20〜30分ほど、北京首都空港に向かうちょうど中間地点くらい「大山子」というエリアに位置します。もともとは人民解放軍の軍事工場が立ち並んでいた地区が再開発され、ギャラリーが広大な敷地内に点在しています。いや、点在という表現は誤りか。大小100以上のギャラリーが集まる、巨大アートゾーンなのです。1950年代に東ドイツの支援を受けて建てられた、当時の工場の建物をそのまま活かしたギャラリーが多く存在していて、建物内には「毛(毛沢東)主席万歳」というようなスローガンもそのまま残されたりと、独特な雰囲気を醸し出してます。

798も「北京のSOHO」などと呼ばれ、最近は観光地化してきています。昨年、私が初めて訪れた時からはずいぶん様変わりしました。ギャラリーの数も増えたし、良くも悪くも”洗練された”雰囲気が出てきた感じ。週末になると、海外からの観光客だけでなく中国人カップルなんかも多く見受けられますし、金・土の夜は著名ブランドが主催するパーティなんかが頻繁に開催されています。私も何度か行きましたが、なんつってもスケールがデカイのと、共産主義と資本主義の融合というか、いろんな要素がmixされた感じが今の中国を象徴していて、パーティスポットとして人気があるのも頷けるなと。そんな感じで、798は最近ではずいぶん有名なエリアとなったワケですが、その集客力を政府が黙って見ているワケは無く、近頃は国家主導も含めどんどんと芸術区が開発されています。勢いがあるのは、798の北側に位置する「草場地芸術区」と、国貿エリア南の「今日美術館(Today Art Museum)」を中心としたエリア。

「草場地芸術区」は残念ながらまだ未訪なのですが、「今日美術館」は比較的アクセスが良いこともあり、何度か足を運んでいます。この美術館は、ちょうど一年前くらいにオープンしたのですが、聞けば中国で初めての民間設立による美術館(近代美術館)とのこと。こんなトコからも現在のアート熱の高さが伺えます。

美術館入口の上に目を向けると、こちらを見る人影が…アレは何??

岳敏君の作品。この作品は798にも常設してあります。


美術館の前では、今や超売れっ子、私も一番好きな中国人アーティストである岳敏君(Yue MinJun)の作品がお出迎え。彼の作品は、ペイントも全て「この顔」が特徴なのですが、なんか好きなんですよね。体制に抑圧されながらも、外向きには笑顔でいなくてはいけないというか、中国人が抱える(抱えていた)悲哀がポジティブに表現された感じで。自分が中国にいて感じる「何か」に響く気がするのです。そんな彼の作品は、いまやオークションで数億円の値がつくそう。彼をはじめ、北京オリンピックで「足跡」の花火を手掛けた爆発作家 蔡国強(Cai GuoQian)や方力釣(Fang LiJun)なんかが、中国アートの価値を一気に引き上げたのですね。

中国でアート作品を見ていて思うのは、そりゃ日本よりも勢い良くアーティストが生まれてくるよな、というコト。良い意味でネガティブな要素が無いと、「感情の発露」たるアートって生まれてこないワケで。そういうことを考えると、まだまだ?ますます?中国アートは伸びて行くのかな。これからも要注目ですね、ってことで今回は終わり。ではまた、再見!