from パリ(たなか) – 52 - サン・ルイは、カリブ気分の南の島。

(2010.05.03)
A・計画的に用意して来る人 B・敷物くらいは持って来る人 C・何も持たずにふらっと来る人 あなたはどのタイプ? 都会の島で、他人との適度な距離感が面白い。アイスランドからの火山灰は大丈夫?

去年12月だったか、テレビでミス・フランスを選ぶコンテストを中継していた。フランスの各地区代表が次々と登場して、ドレスやら水着やらで何度もお色直ししたり、地区の観光案内や代表の友人家族の紹介があったりして、フランス・ローカルの社会科勉強を半分、あとオヤジ目線の冷やかし半分で見ていたら、あることに気がついた。肌の色が褐色の女性が時々登場する。日焼けしているわけではない。そうか、フランス共和国はヨーロッパ本土だけでなく、地中海(コルシカ)やカリブ海(マルティニーク)、インド洋(レユニオン、マダガスカル)、太平洋(タヒチ)などの海外にも県や領土があり、どうやら海の向こうの代表らしい。ミス・フランスは結局ノルマンディー代表に決まったが(つい、最後まで見ちゃった)、いやあ南の島の代表もなかなか魅力的だったなあ、なんて、前フリが長過ぎるか。

フランスは、島国でもある。地図で見ると小さな島とはいえ、フランス領は世界の海に散らばっている。よって、フランス人は海や島が好きなんだと(強引だが)思う。サン・ルイ島Ile St-Louisはパリの真ん中にある川の中の島、パリの人にとっていちばん身近な島だ。中には教会もあれば、学校もあるし、パン屋も花屋もホテルもレストランもスーパーもある。平日は静かなところだが、週末の午後、お日様が出ていれば、サンドイッチと飲み物と本と敷物一式を大きな鞄に入れたリゾート客が、橋を渡って集まって来る。島を外周する道路際の階段を下りて川沿いのテラスを歩くと、カモメは川に浮かんでいるし、きらきら光る水面を見ていると、潮の香りこそしないが港の波打ち際にでもいるような、どこか遠くへ来た感がする。日常の面倒なことは橋の向こうに置いて来て、あっという間にお休み気分に切り替わる。
 

早い時間に来れば、好きな場所を独り占めできる。紺色のボーダーがリゾート気分。左はトゥールネル橋。4月になって川の水の濁りも取れ、緑色になってきた。
サン・ルイ島の下流先端(西側)。左はシテ島、右は4区のパリ市庁舎。ゴンドラでもあればベニスの風情。

この島に整然と並んだ白っぽい壁の建物や、明るいベージュの護岸に太陽が容赦なく反射して、辺り一面クラクラするように眩しい。この暴力的なほどの光に晒されることで、南の島へ行った気分になるのだろうか。4月のこの時期は川沿いの並木が芽吹き始めたばかりで、日よけも目隠しもないのだが、そんなこと全くおかまい無し、ごつごつした石畳のテラスに敷いた敷物の上は私の空間、ここで楽しい時間を過ごします、どうぞおかまいなく、という個人主義の世界。南側のテラスが陽当たりもよくセーヌの川幅もあるので、眼前の広い空間を独占できる特等席だ。午後2時を過ぎたあたりからグループ客も増え始め、場所取りも難しくなるが、そこは自由、平等、博愛の国、お互いに譲り合って楽しむ。それにしても、彼、彼女らの太陽への執着は異常なほどで、女性も日向で思い切り肌を露出する。日本では美白が美容の主流だと言うのに、スキンケアは大丈夫なのか、見ているこちらが心配になるほど。とはいえ太陽の下で見るブロンドの髪は目を見張るほど美しい。

陽当たりのいい南側はお祭り気分だが、島の中央を横断するサン・ルイ・アン・リル通りを挟んだ反対側は一転して落ち着いた風格ある佇まいで、さすが高級住宅街。カフェも静かだし、川沿いのテラスも人影まばら。狭い島の中で二面性が共存するのもサン・ルイ島の魅力かもしれない。

 

トゥールネル橋から望むサン・ルイ島南側。このあたりのテラスが特等席。左はシテ島とノートルダム。
休日の午後3時を過ぎると、テラスは満席、割り込みは厳しい。出足が遅い人は楽しみもそれなりに。後はシテ島、この辺りがいちばん混雑する。
バギーの家族連れ、わんこも一緒。カメラを向けたら吠えられて、これ以上近づけません。怪しいヤツではありませんが。対岸はノートルダムとサン・ルイ橋。