from 鳥取 – 45 - 和紙の優しさに触れてみませんか?

(2010.04.01)

ちらほらと春の草花が顔を出しはじめ、いよいよ春モードへ突入の鳥取です。     

この時期になるといつも思い出すのは“よもぎ団子”。子どものお散歩途中に見つけたよもぎ。はっきりいってただの雑草にしか見えなかったけれど、おばあちゃんがお団子にすると、あら不思議! なんとすがすがしい香りと優しいあじわいなんでしょう。豊かな自然に恵まれた鳥取ならではのおいしさです。そんなうららかな春の日差しのように、柔らかな風合いがステキな和紙の工房があると聞き、早速お邪魔してきました。

鳥取市青谷(あおや)町にある「あおや和紙工房」。この町では、和紙の原料となる楮(こうぞ)や三椏(みつまた)という木が多く、古くから紙漉きが盛んだったそうです。その紙は“因州和紙”と呼ばれ千年の歴史があり、現在でも東京・浅草の浅草寺にある大提灯の紙を制作するほど質の高い伝統工芸品となっています。この工房では、因州和紙の歴史を知ることができるほか、オリジナルの和紙作りが体験できる教室など、様々なコンテンツが揃っています。

体験=挑戦です! 「紙漉き」「ちぎり絵」から「ランプシェード」まで10種類以上の体験メニューがありますが、まずは基本の「紙漉き」にチャンレジです。だいたい賞状サイズ(30×45センチ)の和紙を漉くことができます。
 

予想よりも華奢な幹に『え~、これが?』なんて思いましたが、何千年もの間伝統をしっかり守ってくれてます。
すくう作業を繰り返すことで、厚みも調整OK。この液体に加える原料の分量によって、紙質も変化するそう。

 
まずは担当の栗本さんから原料についての説明を受けます。細くしなやかな木(楮・三椏)を煮て、皮のみをはがし材料とします。残った木はたきぎにしたり、ランプシェードの枠にしたり、リサイクルもバッチリ。

体験では、すでに水に溶け込んだ材料を網目のあるお盆<すけた>ですくいます。とろりとした液体を<すけた>で前後に動かしながら、均等にすくいあげます。<すけた>を動かすことによって、液体に溶けている木の繊維がお互いにしっかり絡み合い、強度が増します。

次にしっかり水切り。水の重みを利用してさらに強度を高めます。このときカラフルな和紙を使って文字や絵を描いたり、色水で彩色したりして、自分だけの和紙に仕上げることもできます。

そして最後の工程、乾燥へ。掃除機のような機械で一気に水分を抜き取り、その後80度に熱せられた鉄板に貼り付け、完全に乾かします。これで完成! あらっ、意外とすんなりできちゃいました。
 

金・銀片や水色の色水で、鳥取の海をイメージ。「ボクの卒業証書もこれに書いてもらおうかなぁ」と体験者の彼もとっても満足の出来です。

 
でも、出来上がりはとっても上々。しっかりと厚みがあり、ちょっとやそっとでは破れないとっても頑丈な紙です。そしてなんといってもその手触りのすばらしいこと。優しいけれど、どこかきりっとした風合いも持ち合わせ、なかなか奥深いものを感じます。

この日はさらに小さなお子さんでもできる「貼り絵」体験もしました。ちょうどお雛様の時期でしたので、かわいらしい作品になりました。型紙、材料、説明書が入ったキットで、なぞって・切って・貼るだけという簡単なもの。初めは私も余裕で見ていたのですが、柔らかな和紙を切ったり貼る作業は思いのほか難しく、最後には総動員で汗だくの制作となりました(笑)。
 

男の子ばかり(笑)の体験でしたが、なんとも愛らしい作品になりました。今後も季節の風景をテーマにした貼り絵のキットが登場予定。

 

最後に職員の栗本さんが「地元の小学校では自分で漉いた紙を卒業証書にするんですよ」と教えてくれました。確かに、体験工房の壁には校章入りの紙が展示されていました。また、工房近くの小学校では今春卒業の6年生が原料となる三椏を刈り取る作業から行い、木を煮たり皮をはいだりという職人さながらの作業も行ってきたそうです。一生の思い出になりますね~。また「孫の命名用」とか「結婚式のカード」など、オリジナル作品の制作を希望する人も多いそう。

工房では4月に『因州和紙版画展』が予定されていて、和紙の魅力が満開です。館内には売店もあり、職人さんによる手漉き和紙をはじめ、カードや便箋、書道や写経用半紙なども揃っています。

「和紙はとってもエコなんです」とおっしゃる栗本さん。溶かせば何度でも再生でき、原料の木も再利用可能。さらに原料の木を栽培することで地球温暖化の抑制にも貢献できると、環境にいいことばかりですね。環境によければ人にだってもちろんいい! なぜだか心がほぐされ、自然と笑顔になります。新しい季節を迎える今、和紙に触れるステキな体験をしてみませんか。
 

あおや和紙工房http://www.aoya.city.tottori.lg.jp/washikoubou/top.htm