Par-delà le Pont – 16 - ベルシー橋(Pont de Bercy)CMにも出る超有名橋の、
対抗馬? ベルシー橋

(2012.11.30)

そろそろ、都内でも紅葉が見られるようになって、ますます寒くなってきましたね。夏が長かった今年ですが、冬は長くないといいですよね~。

ところでパリのセーヌ川には、トランポリンの橋ができるそうです。3つのトランポリンを連結してつくるのだとか。エッフェル塔のすぐ近くなので、エッフェル塔を見ながら巨大トランポリンを楽しんだりできるかもです。この連載が終わるまでに、完成するでしょうか?(詳しいイメージは、Atelier Zündel Cristeaの「Pont Paris」から)

パリのセーヌ川に架かる、30本の橋を紹介するこのシリーズ。「ベルシー/オーステルリッツ駅地区」3回目の今回は、ベルシー橋を渡ります。どうぞご一緒くださいませ。

パリ的都会度80%の橋

前回のトルビアック橋から、セーヌ川を下流に向かいます。右岸にベルシー公園、左岸にパリ新国立図書館を見ながら川沿いを歩いていくと、2006年完成のシモーヌ・ドゥ・ボーヴォワール遊歩道があり、水上プールのジョセフィン・ベーカーがあって、やがてベルシー橋に到着します。

この地域は下流(北西)に行くほど、ビル密度と都会っぽさが、アップしていきます。パリの最上流のナシオナル橋よりトルビアック橋、トルビアック橋よりベルシー橋、という感じ。次回ご紹介するシャルル・ド・ゴール橋で、いったんビル密度はピークに達することになります。といっても、パリ基準のピーク。新宿や汐留のようにビルに覆われた地区は、パリ市内にはないのでした。

さて、ベルシー橋は、左岸のヴァンサン・オリオール通り(13区)と、右岸のベルシー大通り(12区)を繋いでいます。

橋から左岸に見えるのは、前回ご紹介した国立国会図書館。右岸に見えるのは、ベルシー体育館の屋根。それから、セーヌ川に突き出している細長い大きな建物、フランス財務省。この財務省の屋上にはヘリポートがあって、セーヌ川には専用のボート「コンコルド」が、いつもスタンバっているそう。何だかちょっとかっこいい?

人気のビラケム橋に、エッフェル塔の分だけ負けた?

この橋はとても広く、歩道と、片側3車線の車道、さらに中央には高架が通っています。高架を走るのは、メトロ6号線。6号線はメトロと言いながら、ほとんど地上に出ています。確かに東京の地下鉄でも、丸ノ内線や銀座線なんかが地上に出ることはありますが、6号線はもっと露出度高いです。ほとんど出てる、っていう。

6号線はパリの街を、Uの字を描くようにして走ります。そして、Uの右側と左側で2回、セーヌ川を渡ります。今回のベルシー橋は、Uの右側。左側で渡るのは、ビラケム橋です。ビラケム橋はCMやPV、映画などに非常によく使われる橋です。日本でも、車や化粧品のCMに登場したり、映画「のだめカンタービレ」で天才指揮者の千秋くん(玉木宏)が走るシーンの背景になったりしています。「橋の上に高架がある風景」の素敵さは、人々をメロメロにするのかもしれません。

しかし、ところがです。同じように高架があって同じ6号線が走っているにもかかわらず、ベルシー橋はあまりCM・PV・映画に使用されません。この二つの橋が違うとすれば、人気のビラケム橋から見えるのは、エッフェル塔。ベルシー橋から見えるのは、ベルシー体育館……。体育館だっていいと思うのですが、やはりエッフェル塔の方が絵になるのでしょうか。それだけとも思えないですが、ここはベルシー橋を応援したいところです。判官びいきです。

ベルシー橋の下で、パリに恋をする

そんな憎めないベルシー橋ですが、実は超有名な歌に登場したりもしています。そう。「パリの空の下(”Sous le ciel de Paris”)」です。メトロに数回乗ると一度は、この曲を突然アコーディオンで弾きはじめるおじさんに出くわすので、超有名と言っていいかと思いますが、映画「巴里の空の下セーヌは流れる」のサントラで、ジュリエット・グレコが歌った曲です。ジュリエット・グレコは、セルジュ・ゲンスブールやボリス・ヴィアンの曲も歌っていますが、いま調べたら、85歳でまだ現役ということで、すごいですね。

それはともかく、この「パリの空の下」の中に、一度だけ出てくる橋の名前が、ベルシー橋です。映画が公開された1951年のベルシー橋は、6号線の通る高架はあったものの、今よりずっと狭い橋。フランス財務省の建物も、国立国会図書館も、ベルシー体育館も、まだありませんでした。「ベルシー橋の下」、という歌詞。作詞家のジャン・ドレジャックは、ベルシー橋のどんな風景に、惹かれていたんでしょうね。

Sous le pont de Bercy
Un philosophe assis
Deux musiciens quelques badauds
Puis les gens par milliers
Sous le ciel de Paris
Jusqu’au soir vont chanter
Hum Hum
L’hymne d’un peuple épris
De sa vieille cité

ベルシー橋の下
哲学者がひとり、座っている
二人のミュージシャン、何人かの野次馬
そして、たくさんの人々が
パリの空の下
日暮れまで歌うだろう
ル~ ル~
それは
この古い街を愛おしむ人々の、讃歌

シャルル・ド・ゴール橋へ

ベルシー橋、いかがでしたでしょうか。次回はベルシー橋の北西に架かる、シャルル・ド・ゴール橋を渡ります。

Pont de Bercy
ベルシー橋

建設:1863~1864年、1904年、1989~1991年
長さ:175m
幅:40m
建築家:E.J・フェリーヌ=ロマニ、ジャック・モンチュー、ジャン・レサル
形式:アーチ橋
素材:石・鉄筋コンクリート
最寄駅:Quai de la Gare駅(メトロ6号線)
付近の観光スポット:ベルシー公園、ベルシー体育館、ジョセフィン・ベーカー