from 山梨 – 1 - 山梨の桃、今年は……。

(2009.09.02)

先日、東京に住む知人から「山梨県産の桃を買ったんだけど柔らかくない。りんごの皮をむくようにしかむけないし、歯ごたえがシャキシャキしている。甘みはある。この桃はどうやって食べると美味しいのか」という内容のメールが届きました。

手渡された大きな桃

山梨に引っ越してきて最初の夏、こちらで懇意にしてもらっている知人に甲州市塩山にある果物農園を紹介してもらって桃を買いに行ったのですが、そこで初めて食べた桃の事。

農園にお邪魔するとすぐに「さあさあ、食べて食べて。そこの流しで細かいうぶ毛をキレイに洗って、横に包丁とお皿があるから、適当にセルフサービスでどうぞどうぞ」と、農家さんから桃を手渡されました。
言われるがままに桃を持って流しへ行き、細かいうぶ毛をキレイに洗って包丁で皮をむこうとすると、これが「いつもの」桃のようにするりとむけない。
桃の皮に包丁を入れ、そのまま包丁の刃と右手の親指で皮をはさんで引っ張ってむこうとしても、皮はすぐに切れてしまう。
仕方ないので、りんごのように桃をくるくる回しながら皮をむく。

皮をむき終わった桃の果肉を包丁でカットして、ひと切れ食べる。
と、これがびっくりするくらい甘くて美味しい。
みずみずしいりんごのようなシャキシャキした歯ごたえと桃の甘味の組み合わせは、今まで食べたことのない桃の美味しさ。

これ、硬い桃なんですって。
桃の発送をお願いする時には「硬い桃を○個、柔らかい桃を○個」という風にお願いしています。
ですが、硬い桃を受け取った県外の人には「熟してない」と思われてしまうことが多いらしく、農家さんでは「完熟した食べ頃を収穫して発送しているので、届いたらすぐに食べてください」という説明書を箱に同梱しています。

ということで、冒頭の知人からのメールには「そのまま食べるのが一番美味しい」とお返事したのでありました。

桃は4月頃にその可憐な花で甲府盆地を彩ってくれて、品種によって7月頃から収穫期を迎えます。

4月上旬に満開になる桃の花が
7月にはこんなにおいしそうに!

今年も農園に行って来ました。
出荷作業に追われる農家さんとの一年ぶりの挨拶が終わるか終わらないかのうちに、いつものようにズシリと重い大きな桃を手渡されました。

そしていつものように流しへ行き、桃を洗って皮をむいて、ベンチに座ってシャクシャクと頂く。

その間も農家さんのところへは、私たちのように桃を買いに来るお客さんが次々とやってくるし、注文の電話やファックスも次々入ってきます。

農家さんのお仕事を眺めながら桃を食べていたら、「これも食べてって」とプラムを持ってきてくださった。
「貴陽ですね!」「そうそう。熟しちゃってるけどね」
「貴陽」というのは、高級プラムの品種なのです。

食べ応え十分のもぎたて「貴陽」
農園にはキウイ畑もあります。

いそいそと流しで洗ってかぶりつくと、頭が痛くなるんじゃないかというくらいに甘い。そして酸っぱい。
プラムはこの甘味と酸味の共存がたまらない。
今回は「貴陽」も目当てだったんだけど、すでに出荷は終了してしまったとの事。
「今、木になってる実も、もう出荷も発送もできないし、あとは熟して落ちるだけだから取って食べてってよ。こっちこっち」と手招きされて収穫用の道具とカゴを渡され、プラム畑に案内されました。
おっしゃる通り、鳥にやられたり熟して落下している実も見受けられたものの、木で完熟したおいしそうな実を次々と収穫。
収穫する作業が楽しくて、思わず取りすぎてしまったのでした。

発送先の住所を書きかけた送り状をほったらかしにしたまま、農園のあちこちをうろうろしながら桃やプラムを満喫。
お腹いっぱいになって発送の依頼を済ませて帰り際、桃とプラムのお土産を頂きました。
傷んでしまっているとか形が悪いとか熟しすぎとかで出荷できない、いわゆる”規格外品”なのですが、自宅で食べる分には全く問題ありません。

多くの山梨県民が「知り合い数珠つなぎマップ(仮称)」を作ると、かなり近い部分に果物農家さんが存在しているようです。それも複数。
そのため果物の収穫時期は多くの家庭に、知り合いの果物農家さんから”出荷できない規格外品”がおすそ分けとして回ってくるのです。
特に桃は日持ちしません(傷んでいるものは傷みがすすんでしまう)から、早く食べなくちゃいけないし、食べきれないならご近所さんなどに配らなくちゃいけない。
知り合いの山梨県民は「果物って、りんごとみかんくらいしか買わないなあ……。」とつぶやいてました。

そんな山梨県民のみなさんに先日、市の健康診断の結果説明会で管理栄養士さんからこんなお言葉がありました。
「果物の食べすぎにも注意してくださいね。この時期は桃ですね。”早く食べないと傷んじゃうから”というお気持ちはわかりますが、桃は1日1個までにしてくださいね」
…桃1個に、プラム2個くらい足してもいいかしら。

我が家では朝食時に、桃やプラムにヨーグルトをかけて食べることが多いです。
ヨーグルトは桃やプラムの味を引き立たせるようで、もともと美味しい桃やプラムが、ヨーグルトをかけることでますます美味しくなるんだということに山梨に来てから気付きました。

山盛りの「貴陽」
桃+「貴陽」にヨーグルトをトッピング
「黄金桃」にヨーグルトをトッピング

7月から盛り上がる桃も、一部の晩成品種以外の出荷は終了。
ですが、まだまだ。
8月中旬あたりから収穫期を迎える晩成品種に「黄金桃」という黄色い桃があります。
これがマンゴーのような味で非常に美味しく、毎年とっても楽しみにしている桃なのです。
今日の朝食の食卓に、今年初めての「黄金桃」が並びました。
春からの天候不順のせいなのか個体差なのか、甘味が少し足りなかったけど、これこれ、この桃にかぶさるマンゴーの味。
「黄金桃」が我が家にとって桃シーズンの大団円です。

大事そうに出荷されていく桃

天候不順。そうなのです。
今年は春からの天候不順で、山梨の果物たちはかなりのダメージを受けてしまった模様。
昨日の地元ニュースを引用すると

JAふえふきではモモが不作となった要因について、今年は5月の気温が高い日が多かったため、出荷が例年より1週間以上早くなり、育成期間が短く、モモが全体的に小ぶりになったこと。
さらに梅雨の時期に、あまり雨が降らなかった一方で、梅雨明けに雨が降り、果肉が柔らかくなりすぎたモモが、多くなってしまったことをあげています。

<引用元:UTYニュースの星>

だそうです。
農家さんは安定供給のために頑張っているとはいえ、天候に左右されてしまうのは農作物の宿命ですね。
来年は、今年の分まで豊作になりますように。