金沢は日本の竜宮城や!

(2008.12.27)

今回、宿泊したのは日航ホテル。
金沢の駅前にあるので、めちゃくちゃ便利だ。
中でも一向がお気に入りだったのが、朝食。
アラフォー編集者は和食、隊長こまつさんは洋食。
しっかり時間をかけて楽しんでいた。
で、僕はと言うと……食べられなかった。
起きるのが集合時間の10分前だからだ。
ということで、このページで初めて対面と言うことに。
あー、食べたかった!

食べたかったと言えば、日本海とともに僕の心にずっと残っていた魚がある。
「のどぐろ」だ。
話は20年前にさかのぼる。

まだ独身時代、当時の彼女と1週間、苗場と軽井沢にスキーに行ったことがある。
苗場プリンスの安い部屋(駐車場ビュー)に5泊、軽井沢プリンスのスケートリンクの安いほうのホテルに2泊くらいしたと思う。
しかもホテル内のレストランは高いので、部屋にカセットコンロまで持ち込んで、せっせと自炊していた。(プリンスホテルの方、ごめんなさい! 20年前だから許して!)
とはいえ何泊目かに、たまには街で食べようと、越後湯沢まで降りることにした。
車でぐるぐるしていると、暗い道に1軒、暖簾がかかっている。人の出入りも多く繁盛していそうだ。
「あそこいいかも?」
と、近くの駐車場に車を止めて暖簾をくぐった。

ホテル日航の朝ごはん

ホテルから眺める金沢の夕景

結果的に、その店は名店だった。
どの魚もどの料理も安くて美味しかった。
山だと思っていた越後湯沢だが、新潟から車で1時間弱と言う立地の関係で、獲れたての魚介が上がってくる美食の地だったのだ。
今では高級食材だが、当時、まだ人気なく、畑の肥料代わりにまかれていたという紅ズワイガニなんか、1パイ1,000円!
その数多の美味しい魚介のなかで、それまで食べたことのなかった魚がのどぐろだった。

この辺の魚で、東京には出ていないが、焼いて食べると美味しいと説明されて、食べた。
油の乗ったアジと言うか、身のやわらかいカワハギと言うか、その淡白で濃厚な味わいは心にしみた。
結局その後、軽井沢に移動するまで毎晩その居酒屋に通うことになった。

看板にのどぐろを発見

それから久しく、のどぐろは食べていなかったが、金沢は日本海の魚の中心地。
きっと美味しいのどぐろが安くふんだんにあるに違いない。
そう思って臨んだ居酒屋で、その期待は軽く裏切られることになる。

いかにも日本海の魚介! という店で、金沢地元の方と飲みに行ったが、僕が「のどぐろですよね!」と主張しても、なにやら反応が薄い。
「ふーん、それで?」みたいな関心の薄さだ。
とはいえ僕はのどぐろに会わねば帰れない。
店の人に聞くと時価だという。今日は小さいので2,000円。
ちょっと高いかな、と思いつつ、ここで食べねば後悔すると注文。
出てきたのは‥‥ちょっと大き目のアジと言うか、小さめのタイと言うか、黒い焼き魚。
うーむ、これで2,000円か。
軽く気勢をそがれた感じで箸をつける。
味は‥‥おいしいけど、こんな感じかなー。正直、インパクトに欠ける。
アジの味わいもさばの濃厚さもタイの上品さとも違う、枯れたコクのようなものか。
「2,000円でこの大きさ、この味は納得いかん!」
どうやら、のどぐろはすっかり観光アイテムになっていたようだ。
観光客が通を気取って頼む、地元の人にとっては「あの値段では食べないよねー」みたいな魚になっていたようだ。

そのことを再認識したのは翌日、近江町市場に行ったとき。
店を冷やかして歩いていると、のどぐろの一夜干しを勧められた。
「こんなにいいのどぐろは他ではない!」と自慢して出してきた干物は、なんと冷凍だった。
しかも真空パックとかでもなく、凍った干物が裸で並んでいる。
でもって大き目のアジの干物みたいなものが2,500円。
ボリ過ぎでしょう!
本当においしい一夜干しっているのは、できたてを2,3日以内にいただくものだと思うがどうだろう?
のどぐろは金沢では怪しいアイテムになってしまっているのが悲しい。
思えば越後湯沢で食べたときに感動したのは、安くて美味しかったからだ。
そのことを忘れていた。

長々とマイナスイメージになるような話を書いてしまったが、金沢の魚は本当に美味しい。
夜の居酒屋も昼の回転寿司もみんな美味しかった。
で、思ったのは、店が高級か大衆的かということと、魚介の味は関係ないということ。
つまり「金沢の魚はどの店で食べてもかなり美味しい!」ということだ。
 

回転寿司屋の魚もおいしい
魚も楽しめるおでん屋
「東の茶屋」にて
情緒のある「東の茶屋」街

 
金沢では帰り際にはぜひ近江町市場を覗いてほしい。
金沢の魚介がここに一堂に会している。
再開発ビルが12月に営業をはじめ今まで休みだった日曜営業も始めた。
なんと初の日曜営業には2万人の客が来場。
金沢の観光の目玉となりそうだ。
 

近江町市場で紅ズワイガニを物色

日曜営業を始めた近江超市場

街角で見つけた工事中のガードレール

 
ちなみに僕はズワイガニ3バイを買って宅配してもらうことにした。
サービスで甘エビ、うに、いくらもつけてもらって5,000円+送料。
カメラのマッハくんは、お父様のリクエストとかでイカの丸干しを買っていた。
僕もしっかり買ってもらった。

最終日、空港に向かう前に向かったのは、菊姫本社。
やはり金沢と言えば美食と美酒。中でも菊姫は香り高さで並ぶものなしの銘酒。
いきなりのアポにも快く受け入れてくれた優しさも、酒の味わいに通じるものがありました。
しかも鏑木さん自らロンドンタクシーで連れていってくれるという。
まさに金沢最強、夢のような組み合わせ。

市内からクルマを走らせること30分。
川沿いの小さな街、白山市鶴来に菊姫の本社はある。
きれいな川が流れ、河原で子供や家族連れが遊び、遠くに立山山系を望む。
日本の田舎の原風景のようなさりげない美しさに育まれたお酒。
風景が最高の肴になりそうだ。 
 

鶴来町の菊姫酒造

菊姫酒造の蔵の中へ

菊姫酒造で試飲もさせてもらいました

 見事な古民家が本社になっている。
お酒の話を聞き、工程を見学し、試飲させていただいたお酒は万華鏡のような深い味わい。
思わず帰りにお酒を買い求めてしまったスタッフ一同でした。

翌日の東京、金沢から届いた宅急便からは白い煙が‥‥ではなく、赤いカニが詰まっていた。
袋を開けてみると、金沢の思い出の香りがした。
その晩、菊姫を開けて温燗にしてカニを食べた。
こんなにいい香りのお酒があるのか! こんなに味わい深いカニがあるのか!
最後に金沢から強烈なラブレターをもらった気がした。

東京に帰って思い出してみると、金沢の町は昔の懐かしい人に会っているような、懐かしい感覚に満ちていた。
まるで昭和の時代にタイムスリップしたかのような、ちょっと切ないわくわく感があった。
もう一度行ったら、もうそこに同じものはないかもしれない。そんなノスタルジックな気持ちにさせてくれる。
もしかして金沢は「日本の竜宮城」なのかもしれません。