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向こう三軒両隣、シャッターが下りると何屋さんだったか思い出せなくなる。真ん中の店は確か、仕立て直し屋だったかな。サン・シュルピス通り。 |
8月中旬、灼熱地獄の東京をバスで成田へ向かい、エールフランス機に乗る。いつものようにランチが出て、映画を3本見て、デンマーク上空にさしかかった頃に機内アナウンスがあった。「パリの天候は曇り、気温は18度」。えっ、8月なのに? 東京は36度だったぞ。飛行機を降りる前に手荷物の鞄に入れたジャンパーを羽織る。シャルル・ド・ゴール空港の長い通路を、トランクを載せたカートを押して歩いても汗をかかない。快適だ。すれ違う旅行者にはセーターやコート姿も見かける。
翌朝、食料の買い物がてら近くを軽く散歩すると、なんだか街の様子が違う。サン・ジェルマン大通りにクルマが少ない。歩いている人も少ない。見るからに旅行者風の熟年カップルや家族連れが目立つ。いつもの、ちょっとハイテンションなパリの喧噪がない。しょっちゅう緊急車輌がサイレン鳴らして走っていたのに、この静けさはなんだ。
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サン・ジェルマン市場通りの額縁専門店。シトロエンの2CVが違和感なく停まっていた。 |
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サン・シュルピス通り。人通りが少ないから犬の散歩もらくちんだ。 |
裏道へ入ると、シャッターを下ろして休業中の店が目立つ。いつも利用するスーパーマーケット、モノプリはふだん通りに営業していたが、そうか、街中が夏休み真っただ中か。話には聞いていたが、シャッターに貼り紙一枚、2週間から長いところでは8月まるまる1カ月も休んじゃう。本屋、クリーニング屋、ブティック、カフェやレストラン……、なんだか日本の小学校の夏休みと同じだ。
確かに、休みを楽しむために仕事をしているわけだし、働きすぎて体こわしたら仕事もできないしね。8月の、住人が少なくなったパリで営業しても効率悪いし、でも、この休み方は大胆だと思いません? でも羨ましい。