from 北海道(道央) – 7 - 小樽にあれば毎週通っているだろう、「滝川の若手オーナーシェフ」!

(2009.09.07)

「ウルグアイのワイン」を日本で!?

「ワイン文化史研究家」を自称する筆者であるが、グラスワインで「ウルグアイ(Uruguay)」産のワインを提供しているお店を発見したのは、生まれてこの方、始めてでした。

ウルグアイって、南米にあることは分かっていたとしても、実際にはどこにあるのかさえ見当がつかないという人も多いのではないでしょうか。実際には、ブラジルとアルゼンチンとの間に挟まれているウルグアイ。そう表現すれば、大西洋に面した面積が狭い国だろうという「想像」はつくかも知れません
 
「どうしてウルグアイのワインなんですか?」という質問が、オーナーシェフである老田弘基(おいた・ひろき)さんへの自分からの最初の質問でした。「単純に、自分が飲んでみて「美味しい!」と感じたからです」という回答が、老田さんの素直なお人柄を知る契機となりました。
 

『プティ・ラパン』。
オーナーシェフ・老田弘基さん。

33歳の若手オーナーシェフ。

その老田さんが営むお店は、今回3週連続で紹介することになる滝川市にあります。『Petit Lapin(プティ・ラパン)』という、フランス語で「小さい兎」という意味のお店です。
 
老田さんは北海道・北見市で生まれ、その後滝川、帯広、スイス、帯広、芦別と渡り歩き、2年前(2007年)の11月に滝川で今のお店をオープンさせたという、33歳伸び盛りの若手オーナーシェフなのです!
 
ウルグアイのグラスワインのセパージュは、白はソーヴィニョン・ブラン(Sauvignon Blanc)、赤はタナ(Tannat)。フランス・ボルドーのソーヴィニョン・ブランとは異なる、爽やかでありながら、ある種の重みを感じる仕上がりになっていて、「なるほど。これがウルグアイのソーヴィニョン・ブランか」という特徴を教えてもらえます。また、タナはフランス・南西地方の固有品種ですが、ウルグアイではフランス南西地方の赤ワイン以上に「ずしり」と感じる重さと余韻を感じることができるワインです。まさに、同じ南米であっても、チリやアルゼンチンとは異なるテロワールを感じることができるワインなのです。
 

ウルグアイワイン「トラヴェルサ2008」。

スイスで5年の修行を積む。

スイスには5年間修行で滞在され、首都であるベルン(Bern)に3年半、西隣のフリブール(Fribourg)に1年半。ドイツ語、フランス語、英語を駆使しなければ生活ができない環境の中で、よくぞ5年間も頑張ったというのが、英語とフランス語を少ししか理解できない自分の印象です。「料理については、フリブールにいたときに基本を学んだ」ということで、フランスとドイツの国境にも近い土地で、様々なことを学んだのだろうという期待感を持たせてくれます。
 
滝川は「羊」ということを前回お伝えしましたが、「合鴨」の産地としても有名で、また「SPF(Specific Pathogen Free:特定病原体不在)豚」の養豚も行われています。このSPF豚を前菜に使い、豚のリエットと美瑛産香麦(こうむぎ)を使用した自家製パンとの組み合わせは絶妙です。
 
また、デセール(Dessert)も素晴らしい!
「カヌレ・ド・ボルドー」は、本場ボルドーで買い求めたカヌレの型を用い、レシピも本格的ということで、お持ち帰りをすることもできます。「新十津川産のとうもろこしのアイス」は、香りとともに、食感が優れ、デセール好きな方にとっては涙ものの一品だと思います。

前菜盛り合わせ。手前には桜でスモークした新鮮な「サンマ」。奥右から「滝川産SPF豚リエット」、「生ハム」、「豚とレバーのテリーヌ」。
「香麦による自家製パン」。
デセールは手前「カヌレ・ド・ボルドー」、奥左「新十津川のとうもろこしのアイス」、奥右は深川市・増田農場の自然卵を使った「大人のやわらかプリン」。
フランス・ボルドーで入手した「カヌレ」の型。

「夢」を確かな形にしようと努力する若者たちを応援したい!!

料理はもちろん素晴らしいわけですが、自分にとってみると、「このワイン」をこの値段で飲むことができるんですか??」という、コスト・パフォーマンスにびっくり!!ある日のことですが、イタリア・ピエモンテ(Piemonte)のバルベーラ(Barbera)をいただいたのですが、思わず「この値段でワインが飲めるのなら、是非小樽に店を移してください!!」とお願いしたりするほどなのです。
 
「生意気なようですが、地産地消は当たり前であって、子供さんたちが安心して安全なものを食べることができる料理を提供したいです」と、瞳を輝かせ語る老田さん。
 
「今の若者は……」と自分自身のことを棚に上げて説教している大人をたまに見かけますが、若いうちに外国へと飛び立ち、学び、そして自分自身の「力」で努力しようとしている若者と接すると、自分としては自然と応援したくなってしまうのでした。

「野菜のトマトソーススパゲティ」。
「オヒョウとホタテのクリームソース煮」。
「北見産仔羊肩ロースのロースト」。