from ハワイ – 5 - Driving Miss Aloha 1 アメリカ車のプライド。

(2009.06.19)

ハワイで免許を取って最初の車はダッジの古い大型バンでした。ブルドッグのようにノーズが短くグレーの車体が重たそうに唸って、埃っぽい赤ワイン色のカーペットが日に焼けて変色したままダッシュボードに張り付いていました。普通の車に比べると、車高が高く視界がよいので重いハンドルをまわすとトラック野郎のような図々しい気分になったものでした。窓は開いたもののクーラーもきかずガタついてさびも出て汚かったので、スーパーの駐車場でわざと新車の横につけて遊んだものです。重くてガソリンも喰いましたが馬力があり、日本なら廃車間違いなしの古さになってからも踏み込めばぐぐーっと加速する強さは失わず、ボートの牽引など朝飯前でした。

雨漏りがしだし,何度目かの修理が必要になった4〜5年前$500で売りました。『Bulliten』と呼ばれるコミュニティ冊子に載せると3件ほど問い合せがあり、前歯の全くないあやしい男が見に来て買って行きました。ハワイではスワップミートと呼ばれるフリーマーケットでお店の代わりに使いたいと言ってました。そのまま彼が乗っているのか、はたまた誰かに売られたのか、かなりひどい様相ですが、今も時々走っているのを見かけるとちょっと悔しい気がします。燃費も相当悪くなっているはずですが、あの“ブルドッグ”まだまだ頑張れたのです。 そう思うと最後まで大事にしてやらなかったのをくやむ気持ちさえうまれます。あの古いバンには、大きくて無骨だけど頑丈なアメリカの車のプライドがやどっていたような気がするからです。

2台目に乗ったのはシボレーでした。生まれて初めての新車です。3年リースで借りる事にしたのですが、1週間目にシートベルトの収納カバーと内装のパーツがはがれ落ち、1カ月後にインパネがガタガタなり出し、3ヶ月目にリコールが発覚、ディーラーで直したものの、ちょうど3年目ハレアカラ山にドライブしてミッションがおかしくなり、リース契約終了後そのまま購入する事もできたにもかかわらず返却してしまいました。大きさ以外はアメリカのメーカーがあわてて日本車を真似て作り出した見本のような車で、ちょっとした工夫もあって使いやすい車でした。 カーペットのビニールカバーをそのままつけていたので、返却する時ディーラーに驚嘆されました。

3台目はフォードです。ミニバンをまた新車で買ったのですが、なぜかエンジンの回転数が初めから高く、ハワイなのに冬は10分近くアイドリングをしないとエンストしそうになる車です。リコールはなんと3回、4万マイル(64,000キロ)を超える頃からエンジンの警告ランプが消えなくなり、ミッションの調子悪くなりました。日本の教習所でビデオを見た時、あんなの誰がなるんだろう?と思っていたバーストもこの車で経験しました。いつとまるか心配ですが現在も現役で走っています。この車とは長い付き合いになるかもしれません。

1台目のダッジはクライスラー、2台目のシボレーはGM 、そして3台目がフォードと、気がつけばビッグスリーの車を総ナメです。 意図した訳ではなく単に日本ブランドの車は価格が高く手が出なかったのですが、今になってみると色々なメーカーの車に乗って良かったなと思います。信頼性というとかなり?なところがありましたが、どれも馬力だけは十分ありました。そんな時代の流れにあわない無骨な力持ちたちが、最近徐々に姿を消して行くのを見るとなんだか寂しい気もします。スマートで完璧な友達というのは案外魅力が無かったりするものです。

週末を利用して空き地やスーパーの駐車場などで開かれる有志による自動車ショー。ただ車がおいて,オーナーたちは木陰に椅子を持ち出し車談義に終日花を咲かせる。

トヨタにホンダ、ニッサン、マツダ、ハワイでは日本ブランドの車がここ数年確実に増え続けて来ました。ハワイの人が特に日本に親しみを持っているからなのかもしれません、いや正確に言えばハワイの人は日本の物の良さをよく知っているのです。

あくまでも主観ですが、ローカルばかりが集まるレストランやスーパーの駐車場では日本ブランドの車の方がアメリカブランドの車より多い気がします。ローカル男性に一番人気の車、トヨタのタコマ(日本未発売の中型トラック)は男のトラック、荷台に犬やサーフボード、時には人も載せて走ります。重量が軽く燃費がいいので購入価格が高くても後に中古になってもで高く売れるそうです。ミニバンは家族の車、家族の多いハワイではお母さんの車としても人気です。また中に家財道具一式を積んで移動するホームレスの必需車とも言えます。

アメリカンビューティーと呼びたい昔風の曲線を持つ車は今なお、はっとするほど美しい。オヤジたちの夢だったアメリカ。

良き時代の車のエンブレムには遊び心がある。1車種ごとに違うのかと思うほどデザインがいろいろあって楽しい。このマークをデザインした人も誰が今日の事を想像しただろう?

では、どんな人がアメリカ車に乗っているかというと、重い荷物や資材を運ぶ大工さんや工事関係者、それにレンタカーです。

馬力のある大型トラックは大工さんの必需品、まだまだ未舗装の道が多いのでダッジラムなどの大型4WDのトラックが欠かせません。親の代から乗って来た古いトラックを丁寧に手入れして乗り続けている人もいます。

『Bulliten』はマウイの売ります、買います情報誌。毎週火曜日に発行される週刊で、無料でスーパーやレストランで手に入れられる。掲載料も安く、今なお最も一般的。
6月13日島のダッジ販売店が名前を変えてIsland Autoとして生まれ変わった。Dodgeの名前が取り去られた後が痛々しい。代わってメインに躍り出たのがSubaru。

それと以外なのがアメリカ人の老人です。大きなキャデラックがゆーーっくり角から現れそろそろーっと道を行きます。法廷速度より遥かに遅い25マイルぐらいです。中を見ると白髪の白人おばあちゃんが真っ赤な口紅をひいてゆるゆると運転しています。運が良ければ助手席におじいちゃんが乗ってたりするのも見られます。大きな車は安全,という神話がまだ生きてるのです。きっと30年ぐらい前から同じ車を運転して来たに違いありません。ガソリン代が高かろうがほとんど遠くに行かないので気にならないのでしょう。

軽い渋滞を引き起こしていても、誰もクラクションを鳴らさないで我慢して車線が増えるところまで着いて行きます。ぬかせるようになった時、ああ、おばあちゃんスーパーカーがいたのかと納得する訳です。無礼な若者でもハワイの子は滅多にクラクションを鳴らしません。どうです、こんな光景っていいと思いません?