from 北京 - 34 - ここは日本? 北京のワイン居酒屋
『萬火(Vin Vie)』。

(2013.03.26)

やはり落ち着く、日本の味

こんにちは。その後、日中関係は落ち着きを見せており、出張等で日本と中国を行き来していると、機内で日本からの観光客の方々を目にする機会も増えて来ました。こちらに住んでいる我々からすると、とても嬉しいコトです。私のところにも「北京に遊びに行きたいから、ドコが面白いか教えて」「上海の美味しいお店教えて」など、友人からの連絡が回復してきたことも一つのバロメーターかと感じています。

さて、友人から中国滞在時のレストランについてアドバイスを求められた時、私がアドバイスしているのは「中華だけでなく、フレンチや和食に行くことも予定しておいた方が良い」ということです。実際のところ「中国行くなら、中華でしょ」と言って、全ての食事を中華料理でスケジュールしようとする人が居ます。しかし実際には、数回ですぐにリタイアしてしまう人がほとんどです。

これまでの連載では、フレンチなどはご紹介してきましたが、肝心の和食をご紹介してきませんでした。そこで、今回は私がプライベートで最も良く行く、お気に入りのお店をご紹介したいと思います。


日本人、やっぱり和食が落ち着くんです

萬火(Vin Vie)、その店名に込められた意味

今回紹介するお店、そのお店の名は『萬火(バンビ)』といいます。オーナーシェフの小野さんと店長の金城さん、お二人の日本人が経営されるワイン居酒屋です。店名を見て、ワイン居酒屋と聞くと、このサイトの読者の方であれば、勘の良い方はピンと来るかもしれません。「萬火」の「萬」の字は、オーナーシェフ小野さんの修業先である、浅草の『萬鳥』さんに由来しているそうです。

もともとはこちら、数年前まで「萬菜」の名で、小野さんのフレンチやイタリアンの経験を下敷きにした、和食のおばんざいのお店として営業されていました。当時のお店は、建物が、法律上火を扱うことが出来なかったそうなのですが、移転をされて念願の串焼きを提供出来るようになったとのこと。「火」の文字はそれを表したものということでしょう。バンビという音を、フランス語に当てて、Vin=ワイン、Vie=人生ということでWine Life、という意味を持たせているのも、洒落ています。

「萬菜」時代から「萬火」となった現在に至るまで、変わらないことの一つは、その立地。相当分かり難い場所なのです。周りに目立つ建物があるわけでもなく、目立った看板もありません。「まさかこんなところにお店が?」という路地の先にありますので、誰かに紹介されない限り、踏み込んで行くことはないでしょう。

この辺りは戦略でしょうか。以前の「萬菜」から、看板も宣伝も無しに「とにかく予約が取れないお店」ということで有名でした。座席数も増えた今は、過去のように全く予約が取れないということはありませんが、予約が取り難いことに変わりはありません。


左:この右手の暗い道を直進したところに、お店はあります
右:念願の焼き場で、笑顔の絶えないシェフ
手間を掛けた真っ当な美味しさが、嬉しい

外国に行くとよくある話しだと思いますが、現地の方が経営している日本食レストランなどでは、表面的に和食を模したものが出てくることが多く、どうしても日本人からすると「美味しくない」となりがちです。そんな話しを引き合いにするのも失礼ですが、こちらは真っ当に美味しい。それを支えているのは、その丁寧な仕込みにあるのだと思います。やはり「手間」は味に直結するのだなあ、と感じずにはいられません。各種おばんざいやら煮込みやら、どれも美味しいですし、細かいところでは、焼き物に添えられるジェノバペーストなども自家製で、いつもフレッシュなことに感心しています。

飲み物は、まずは店名にもあるワインでしょう。リストには、いわゆる量販的な銘柄は少なく、リーズナブルで美味しいワインを選んで揃えています。大体いつも200元(3000円程度)前後のワインを頼んで、ハズレがありません。あとお気に入りは、不定期に仕込まれる自家製サングリアや生姜、オレンジなどを漬け込んだウイスキーで作るハイボールなど。料理にとどまらず、ドリンク類までしっかり手間が掛けてあって、どれも美味しい。

そういったことは、やはり伝わるのでしょうか。あまり宣伝していないにもかかわらず、昨年はTime Out Beijing誌のBest Asian Casual Diningに選出されました。その影響もあってか、最近では中国人や欧米人のお客様も多く、日本でも有名な映画監督や俳優などが夜な夜な出没しているそうです。

ということで。北京にお越しの際は、是非旅程の一つに加えてみてはいかがでしょうか? お店の中は現地で働く日本人で一杯ですし、小野さんや金城にも、話し掛けてみて下さい。きっと、とっておきの現地の情報等を教えてくれると思いますよ。


左:トマトと椎茸、味付けもひとつひとつ丁寧に変えています
右:本日のお勧め、この日はイタリアンテイストな牛肉のタタキでした

左:グラスワインも、赤白合わせて10種類くらい、常時あります
右:店長の金城さん(左)とシェフの小野さん(右)トロフィーを持って