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サン・ルイ・アン・リル通りでは、アイスが通行許可証になっている。(ウソ)この島は、古くは貴族の館、いま高級住宅街としても有名だとか。 |
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アイス舐め終わったら、キャンディーだからね。 |
サン・ルイ島はシテ島の隣り、セーヌに浮かぶ小さな島だ。右岸(北側の4区)とは三つの橋、左岸(南側の5区)と二つ、シテ島と一つ、合計六つの橋が架かっている。シテ島は警視庁や裁判所、病院など、固めの公的機関で埋め尽くされているせいか、散歩するにも心底リラックスできない雰囲気なのに比べ、サン・ルイはどことなく南欧風の明るく開放的なリゾート気分が漂っている。シテ島のノートルダム寺院裏からサン・ルイ橋へ向かうと、橋の上には必ずミュージシャンや芸人がいて、遊園地の入口へ来た印象だ。アコーディオン、ジャズピアノ、クラリネット……、暖かくなって大道芸も楽しめるようになった。この橋の上はいつも歩行者天国。この橋を渡ると別世界。
橋の界隈でアイスクリームを舐めている人の姿が気になるが、サン・ルイへ渡りきると両側にカフェがあり、テラスでアイスを食べている人がちらほら。カフェの売店には、なにやらアイスのスタンドらしきものも。この地点でアイスの誘惑を振り切って、カフェの角を右へ曲がり、サン・ルイ・アン・リル通りRue St-Louis en I’lleへ進むと、アイス食べ歩き率はさらにアップし、55%ほどになる。これから初夏の休日には90%まで行くかも。通りの両側20メートルおきくらいにあるアイスクリーム屋と、その店頭の行列、すれ違う人が舐める旨そうなアイスを見ると、普通の人なら“この島に来たらアイスを買わなきゃいけないんだ”、という単純な刷り込み行動に駆り立てられ、気がついたら店に並んでいるはず。それは正常な食欲の健康体であることの証明で、パブロフの犬みたいなもんです。私は甘いものに敏感で、犬のように“待て”が出来ないので、橋を渡ってすぐの店に並びます。
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愛する人の為なら、行列も厭わない。それにしても男子の方が多くないか。自分の為か。Berthillonのロゴに注目。アイスクリームはフランス語でグラスglace。 |
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サン・ルイ橋を渡ってすぐの店という単純な理由で、私の行きつけ。本店ほど種類はないが、それでも15はあるかな、こないだはイチジク、その前はアイスの王道、もちろんヴァニラ。この列だと7分待ちかなあ。 |
何度か行くうちに、この島にある大半のアイスクリーム屋には、ベルティヨン(Berthillon)のロゴが書いてあるのに気がついた。島の中央にあるベルティヨン(本店?)のアイスを、島内のカフェやアイスクリーム屋(支店? 提携?)で出している、という仕組みらしい。本店ではサンプル(シングル)2.1ユーロだが、ダブルが確か3.2、トリプルが4.3で、値段は単純な掛け算じゃないんだ。同じシングルのコーンでも、店によって詰め具合がビミョーに違うような気がする(値段も違うが)。食べ物の量に関しては、子どもの時からうるさい世代なのだ。しかし味は同じ、はずだ。東京のアイスと比べると甘味が強い。ダブルがいいとこ、トリプルなんて……。私はいつもシングル食べ歩き派だが、もちろん店内で各種組み合わせてゆっくり食べることも出来る。ある時ベルティヨン本店に入って、薄暗い店内奥のショーケースに並んだケーキを発見、そうか、元は菓子屋だったんだ。巨大なタルトタタンと、チョコレートケーキを試しに買って、食べた。甘い! パリの、特に古く伝統的な菓子屋の味は、基本的に甘く濃厚な傾向がある。東京でよく聞く褒め言葉「甘くなくて美味しい」という価値観は、パリでは通用しないと思った方がよい。私は、ガツンとくる直球の甘さ、好きです。お菓子の王道です。毎日は勘弁だけど。