from パリ(たなか) – 82 - 弾丸パリツアー。

(2010.11.29)
ヴェルサイユ宮殿の村上隆展へ。みんな女の子に大注目。

先週末、娘二人が観光旅行にパリへ来た。金曜日の午後にパリ到着、土、日と観光して月曜夕方の飛行機で東京へ戻るという、私には考えられない(出来ない)弾丸ツアーだ。もう少しゆっくりすればと思うのだが、二人とも有給休暇が残ってないそうで、週末と飛び石連休を使った弾丸往復になるらしい。若い人の海外旅行もいろいろたいへんだ。パリに着いた翌日の土曜日には、早朝まだ暗い時間からモン・サン・ミッシェルへ日帰りツアーに行って、日曜日は目いっぱいパリを見物したいということで、とーさんが一日ガイドをすることになった。

11月に入ってパリは記録的に雨の日が続く。この日曜日も雨、おまけに風も吹いて寒い。4、5℃くらいだろうか。いつもだったらアパートでぐだぐだしてるところだが、10時ごろにはサン・ミッシェル駅へ行き、RER-C線に乗って最初の目的地ヴェルサイユへと向かう。駅構内に降りて時刻表を見ると20分ちょっと待ち時間があったので無駄に過ごさず、セーヌ河を渡ってノートルダム寺院を見学。日曜日のミサの最中だったがステンドグラスを見る。素早く駅へ戻り、切符を買おうと窓口へ行くと、駅員は突然カーテンを下ろしてホーム反対側の窓口へ行けと言う。この国の駅員の大半はサービス業だという自覚を持ち合わせていない。おかげで予定してた電車に乗り遅れたじゃないか、マッタク。フランス語で強引に頼み込めないところがくやしい。

ヴェルサイユ宮殿に着いて入場券を買い、寒い雨の中、皇居前広場みたいなだだっ広い吹きさらしの石畳で傘をさして15分ほど待って入場。待ち時間としてはまあ普通かな? 指先は凍りそうだったが。ところで私は2年近くパリにいて、ヴェルサイユ宮殿へ入るのは初めて。娘に誘われなかったらたぶん行かなかっただろう。広すぎるし、金ぴかだし、たくさんある絵もなんだか御用絵描きみたいだし。この期間は特別展示中で、あちこちの広間には村上隆の作品が何点も置いてあり、子どもに大人気。ヴェルサイユ宮殿の豪華な悪趣味にちっとも負けてないところが、意外と面白かった。庭に出て、マリー・アントワネットの離宮まで行こうとしたが遠いし雨だし寒いし、断念。体も冷えたしお腹もすいたのでレストランへ。だが日曜日、近くで営業しているのは駅前のマクドナルドのみ。大人になった娘二人とパリの郊外のマックでハンバーガーだなんて、得難い体験。
 

こんなに広くても、庭と呼ぶのだろうか?
フランス人は金ピカがお好き。
ヴェルサイユ宮殿中庭、新旧の彫刻対決。
チュイルリー公園の鴨、餌を求めて並んで来る。

3時過ぎにC線でパリへ戻る。次の目的地はルーヴル美術館。オルセー美術館で電車を降り、風吹きすさぶソルフェリーノ橋を渡ってチュイルリー公園へ。コンコルド広場側の観覧車がすごいスピードで回っている。凱旋門は霧に霞んでよく見えない。水たまりを避けながら傘をさして枯れ葉の公園の中を歩く。中央の噴水池にはカモメと鴨が仲良く泳いでいた。ピンクの大理石のカルーゼル凱旋門をくぐり、ようやくピラミッドに辿り着く。私はパリに住むようになってルーヴルへ行くのも、数えるほどしかない。いつでも行けると思うと、なかなか行かないものだ。階段の下から見上げるニケの像は、何度見てもドラマチック。右へ曲がってボッティチェッリのフレスコ画を見て、もちろんモナリザ、向かいにあるダヴィンチ・コードで有名になった大作「カナの婚礼」も見て、奥の暗い部屋のドラクロワやジェリコーの、世界史の教科書に出て来る大作もチェック。カフェには寄らずセーヌ沿いのドゥノン翼へ戻り、ゴヤなどスペインの絵を眺め、アポロンのギャルリーに戻ってルイ王朝の王冠など見て、フェルメールが見たいと言うのでシュリー翼から上の階に上がり、オランダ、フランドル派の絵があるリシュリュー翼へ向かう。この辺り、回路が複雑で私はよく迷う。レースを編む女は小さな絵で、見学者もいなく、間近に見ることが出来た。すでに暗くなった中庭に降りて白い大理石の彫刻を見て、ふう〜っ、2時間は見学したかなあ。

ピラミッドを入ってすぐの螺旋階段は、歩くと揺れる。
朝から降り続く雨、寒そうだなあ。
夜の白い中庭で一休み。
ルーヴルの特等席です。
ボッティチェッリの絵が意外とたくさん。
見た、という証拠だけ。
長い廊下のドゥノン翼の奥にはスペインの絵も。
フェルメールがある部屋はいつも静か。
ルーベンスの部屋は通過するだけ?

美術館を出てパレ・ロワイヤル広場のカフェに入り、クレープを食べて一休み。きょう最後の予定はセーヌ河クルーズ。地下鉄でアルマ橋のバトー・ムッシュ乗り場へ向かう。橋の袂にあるダイアナ妃慰霊の金ピカの炎が、まるでヴェルサイユで見た村上隆のオブジェのようだ。タイミングよく7時発の船に間に合った。キラキラ光るエッフェル塔を見ながら出発、まずセーヌ河を上る。アンヴァリッド橋、夜目にも豪華なアレクサンドル3世橋、ポン・デザール、ポン・ヌフ、サン・ルイ島を過ぎオーステルリッツ橋あたりまで遡ってUターン。水面近くから見る風景が新鮮だ。下りはビル・アケム橋の先まで、たっぷり1時間ちょっと。雨はまだ止まず、外は寒いのでほとんど船内にいたが、8時にイエナ橋付近でエッフェル塔が点滅するのにまた会えたのはラッキーだった。その5分間は、もちろんデッキに出て見物。バトー・ムッシュに乗るのも今回初めて。思った以上に楽しい。初夏のいい季節にでもまた乗ってみたいものだ。
 
二人の娘は、小学生の時以来およそ20年ぶりのパリ。昔、エッフェル塔の下のメリーゴーランドに乗せてもらえなくて、泣いて独りぼっちになった、とかいう強烈な記憶(根負けして結局は乗せた、と私は記憶しているのだが)はあるらしいが、父親にあちこち引きずり回された思い出は残ってないらしい。今回の旅行で見たいところも私とはほとんど共通していない。日曜日だったのでビストロに連れて行くこともできず、弾丸ツアーでは食べる時間が十分取れないものだ。老いては子に従えと、普段行かないところを見物できて楽しかったかなあ、それにしても老いた私にはハードスケジュールだったが。

8時から5分間の点滅ショーを見る。