from 北海道(道央) – 66 - 『ミシュランガイド北海道2012』。
小樽の食を、もっと楽しみたい。

(2013.01.18)

今年も「冬の小樽」を楽しみましょう!

新年明けましておめでとうございます。今年も一年、dacapoにてのお付き合い、よろしくお願い申し上げます。

さて、今年も小樽では、2月8日(金)〜17日(日)までの間、「小樽雪あかりの路」が開催される。今年でこのイベントも15回目を迎えるが、その期間中であってもなくても、冬の小樽運河は、この時期にしか見ることのできない表情で皆さまをお迎えすることになる。

まだ冬の小樽を体験されていない皆さまには、是非この機会に、宿泊にて小樽へと足を運ばれますことをお薦めしたい。

「小樽雪あかりの路」を読む。

冬の小樽運河は、水面がまるで鏡のようで、写真フアンにとっても人気が高い。
あまりに外気温が下がると、運河の表面には「蓮の葉」状の氷が出来る。
『ミシュランガイド北海道2012』による評価。

冬の小樽に観光で足を運ばれたなら、やはり「食」への期待は大きいだろう。

北海道の外食産業にとって、2012(平成24)年は、『ミシュランガイド北海道』が発刊されるということで、大きな話題を呼んだ一年となった。

外食産業の評価本については、『ミシュランガイド』のほかにも、消費者からのアンケート集計によって評価を定める『ZAGAT サーベイ』などもあり、ミシュランの評価が絶対的であるとは到底考えられないながらも、不思議なもので、その評価は、消費者の視点にも多少なりとも影響を与えることになる。

そもそも「小樽と言えば寿司」と言われてみたり、「小樽の寿司には期待が外れた」と言われてみたり、その評価は左右に大きくブレるのだが、小樽市民にとってもミシュランによる小樽の寿司店に対する評価は気になっていたところだ。 

ミシュランの星によって、何かが変わるのか。

今回の『ミシュランガイド』によって、小樽で二ツ星を獲得したのは『握 群来膳(くきぜん)』さん一店舗であった(三ツ星はなし)。これが小樽における寿司店での最高評価であった。

率直に言って『握 群来膳』と言われて、小樽市民であってもお店自体を知っていた人は、かなりの食通であったはずだ。

群来膳の代表であり大将でもある進藤勝利(しんどう・かつとし)さんは、現在45歳。小樽に生まれ、15歳から職人の道へと進み、札幌と小樽で修行を重ねて今日に至った。

昨年末に店が移転となったこともあり、新たな群来膳さんのコンセプトなりを伺ってきたのだが、「ミシュランの星獲得前後によって、何かが変わるものでもないし、自分なりのやり方はこれからも変わらない」と、進藤さんは語る。驕ることのない姿勢、実直な受け答えには、とても好感が持てる。

進藤勝利さん
『握 群来膳(くきぜん)』カウンター
芸術性と繊細さをも、楽しみたい。

小樽の産業でもあり工芸財産でもある「硝子細工」に関し、進藤さんは、硝子食器に対してこだわりを持って使っている。旬の料理を、芸術とも言える繊細さで盛り付けて提供する姿勢は、間近で拝見していても、実に素晴らしさを感じる。同時に、自分独りがよければよいということではなく、地元の産業間連携をも考え実践する姿勢には、心を打たれた。

また、何より、「旬」の素材を最高の脇役を用いて引き立てる姿勢も、とても共感を持つことができる。例えば、軍艦に用いる海苔は佐賀の最高級品を、山葵は伊豆、山椒は和歌山の契約農家、塩はフランスの特定業者から入荷するなど、妥協を許さない姿勢に共感を覚えるし、そういった会話で盛り上がることができること、なにより「食」という貴重な時間に付加価値を与えてくれるのだ。

進藤さんの繊細さを示すものの一つとして、写真にある「七福神の切り絵」。自らが包丁一本で作り上げたという作品だが、まさにこの絵を仕上げる繊細さが、料理の端々から我々にさりげなく伝えられるのであろう。

小樽には、『握 群来膳』さんのほかにも寿司屋さんはたくさんある。いつもdacapoにて紹介しているように、創作和食、イタリアン、フレンチなど、用途に応じて様々な名店が軒を連ねているので、是非「旬」の素材を味わいに足をお運びいただければと思うのです。

『握 群来膳』のお料理