from 東北 – 10 - 山間、美、kaiseki、こんにゃく番所。

(2009.12.03)

山間、美、kaiseki、こんにゃく番所。

「え!?」と思わずにはいられない。
これが全て、こんにゃくでつくられているなんて。
しかも懐石料理として、目の前に運ばれてくる。

山形県と宮城県の山間に、ここ『丹野こんにゃく番所』はある。
奥深い峠の一軒宿のような風情ある佇まいは、昔話にでも出てくるかのよう。
その昔は江戸時代の参勤交代でつかわれていた街道らしい。
武家屋敷のような門をくぐりぬけると、何とも味わいのある日本庭園が姿をあらわす。
このシチュエーションだけでも、涎ものである。

雰囲気を愉しむ時間はここまでにして
さて、お目当ての食事処へ。
手渡された、こんにゃく専門店のお品書きへ目をやると。
なんと! 懐石コースが並ぶ。
こんにゃくで懐石料理??
どう転んでも、どうひっくり返しても、イメージが結びつかない。
こんにゃくは、コンニャクだろと思っていた私は
自分の創造力のなさを実感することになる。

「お待ちどうさま」
目の前に、職人技ともいえる美しい懐石料理が運ばれてきた。
「え!?」
これが全て、こんにゃく??
誰が見ても、どこから見ても、同じ感想を持つことだろう。

よし、見た目のことは認めよう。味は、こんにゃくにちがいない。
そう自分に言い聞かせ、お膳の一品に箸をのばし、いざ賞味。
さらに「え!?」となった。
これが、こんにゃくか??
「え!?」の連続である。
見た目だけでなく、味わいまで。
それは、こだわり抜かれた逸品。
口の中に「侘び寂び」が広がる。
日本人であることに喜びを感じる、優雅なひととき。
淡白でありながら、奥の深さを覚える。

見た目や本質だけで、思い込むのが常であるが
それがいかに愚かなことか。
いかに見識を狭めてしまっていることか。
こんにゃくとは比較にならないかもしれないが
人間も同じこと。
「俺はこうだ」「どうせ私は」と
決めつけることが、どれほどもったいないことか。
変われば、変わるものである。
変わろうと思えば、変われるものである。
出来ないのでは、出来ないと決めつけているだけである。
自分の可能性を決めつけてしまわないこと。
物事を諦めてしまわないこと。
そう意識することが、とても大事なことではないだろうか。

職人の磨き抜かれた技と情熱の結晶の中に
哲学を感じるはず。
これも日本人ならではなのかもしれない。

と、こんにゃくの極みを食しながら、思った。
食後はたくさんのこんにゃくのお土産を購入した。
これぞ、こんにゃくづくし。

 

『丹野こんにゃく番所』

住所:山形県上山市楢下1233-2
電話:Tel.023-674-2351
定休日:火曜日
駐車場:200台(無料)