Par-delà le Pont – 2 - マリー橋(Pont Marie)橋の下では、おじさまが願いをかなえてくれるかも?

(2010.12.06)

こんにちは~!
12月になって、いよいよ寒さも本格的になってきましたね。
みなさんはお元気ですか?

ところで、今年のパリはとても寒いらしいですね。
11月末からすでに雪が降って、最高気温が氷点下なんて日もあったみたい。
雪が降ること自体が珍しいのに!
いらっしゃる方は、いっぱい暖かくして行ってくださいね。

さて、パリ市内の、セーヌ川に架かる30本の橋を追っていく連載。
「マレ/シテ島地区」シリーズ・第2回目の今回は、マリー橋を渡ります。
どうぞよろしく、お付き合いいただけたら嬉しいです。

 

サン・ルイ島の河岸から

前回のシュリー橋をサン・ルイ島に渡った後、島の北側をセーヌ川沿いにブラブラとくだってみます。

サン・ルイ島は、パリでも指折りの高級住宅街。セーヌ川も、他の地域より優雅に流れているように見えるのは、気のせいだけとも思えません。静かで余裕たっぷりのセレブ空気を吸いながら、河岸を大きく左に曲がると、カーブの先から見えてくるのが、右岸とサン・ルイ島を結ぶマリー橋です。
 

シュリー橋から。左の岸が大人セレブなサン・ルイ島。
今は、橋の上に住むことはできない。

ところでマリー橋は、サン・ルイ島の中ではトゥルネル橋の次に古いんです。建設が始まったのは1614年。その後21年をかけて、やっと1635年に橋が竣工します。

そして当時は、「橋の上には人が住むもの」というのがみんなの共通認識。竣工後は、普通に橋の上に50軒の家が建てられました。

ところが6階建ての家や商店まで建って、やれやれようやく完成か、と思ったところで、1658年にセーヌ川が増水。橋の半分以上が流され、22軒の家と住民も流されてしまいました。

流された橋の部分の修復は、1670年に完了します。しかし修復した橋の上には、もう家を建てる人はいませんでした。そして18世紀に入ると橋の上に残っていた家も壊されて、18世紀の末にはついにパリ中の橋の上から家がなくなったといいます。これで、セーヌ川が増水しても家が流されたりする心配はなくなりました。一安心ですね。
 

休日のお昼間。誰もいませんでした……。パリの真ん中なのに静かすぎ。
カモの親子も静かなところが好きなんだねえ。

マリー橋の河岸も、他のセーヌ沿いのほとんどの河岸と同じように、のんびりとお散歩出来るようになっています。同じサン・ルイ島でも、賑やかな南側と違って、マリー橋の架かる北側は散歩道も静か。快晴の日でも少し薄暗くて湿ったように感じる空気の中、歩いているのは上品な老夫婦やシックな装いで犬の散歩をするご婦人たち。ラブラブカップルたちも、バカ笑いをしているというよりは、囁くように愛を語り合っています。まあ、バカ笑いしながら愛を囁くフランス人というのもどうかと思いますが、いずれにしても、騒がしい日常に疲れたときに心を休めるのにぴったりの場所なのかもしれませんね。

そういえば、マリー橋の下で願い事をすると叶う、と何度か聞いたことがあります。マリー橋の下で願い事──5径間のオシャレな石造アーチの下で、美少女マリーちゃんが天使のように降りてきて願いを叶えてくれるシーンを思い浮かべますが、マリー橋の名前の由来は美少女マリーちゃんではなく、この橋担当の建築家おじさん(レミ・コリン・ジャン・ドルグランジュ・クリストフ・マリー)の苗字なんですね。がっかり(?)。

でも、ちょっとゴツい髭面のマリーおじさんが、天使のように降りてきて願いをかなえてくれるのも、また悪くないのかもしれません。

次回は、サン・ルイ島をさらに西に歩いてルイ・フィリップ橋を渡ります。

 

Pont Marie
マリー橋

竣工:1635年
長さ:92m
幅:22m
建築家:レミ・コリン・ジャン・ドルグランジュ・クリストフ・マリー
形式:アーチ橋
素材:石
最寄駅:Pont Marie駅(メトロ7号線)
付近の観光スポット:サンス館