from 鳥取 - 86 - 蜜蜂の贈り物! 万葉の里に光る
金色のはちみつとれんげ米。

(2012.02.01)

歴史の町、万葉の里、鳥取市国府町

福田養蜂場は80年以上前から続く稲作と蜂蜜の生産販売を行う専業農家です。鳥取県東部の鳥取市国府町に位置し、そこは天平時代に因幡国の国庁が置かれて政治と経済の中心として栄えた歴史を持っており、万葉の里として重要な遺跡が多い事で知られています。

万葉歌人、大伴家持が「万葉集」の最後をかざる歌 ~新しき 年の始めの 初春の 今日降る雪の いや重け吉事~ をよみ、そして在原行平が「古今和歌集」に因幡山をよんだ地でもあります。

現在は、その歴史の跡を感じさせる一方で、鳥取市街地に隣接していながら辺り一面が水田という、大変のどかな田園風景を残しています。 

はちみつは天平の世の頃、時を同じくして日本でも利用されていた記録が残っています。万葉の里で生まれ、風光明媚な自然環境の中で育まれた福田養蜂場のはちみつは、四季折々の花の素晴らしさを感じさせ、蜜蜂という小さな生き物が自然界に重要な役割を担っていることを改めて実感させてくれます。       

のどかな田園地帯の中に因幡国国庁跡が残っています。福田養蜂場も歴史を感じさせます。
はちみつと言えども…

福田養蜂場で採蜜(はちみつを採る作業のことをいいます。)されているはちみつの種類は主に4種類で、4月の菜の花、桜などの百花(ひゃっか)から始まり、れんげ→アカシア→とち→栗、ウツギなどの百花の順に7月中旬まで採蜜が行われます。はちみつって春に採れるものと思っていたのに違うんですねぇ。種類も沢山あることを改めて知りました。百花って百の花の種類のことを総称して呼ぶんですって。

蜜蜂は巣箱の近くの蜜源(花)を見つけると、ダンスのことば(8の字ダンス)で仲間に伝え、せっせと花みつを巣箱へ持ち帰ります。この習性を利用して、れんげやアカシアなど目的の花の近くに巣箱を設置してやることで同じ花の蜜を集めることができるそうです(訪花の一定性と言います)。一方で、百花は採蜜時期により、栗など主になる花はあっても少量だったり、目的の花がない場合は、多種の花の蜜が混入している場合などを総称して呼んでいます。

気になるはちみつの味の方は、やはりそれぞれの味が違います。色や香りも花の種類によって異なっており、好みは人それぞれとのこと。

そして、改めて知ったこと。それは、「はちみつ」と当たり前のように言うけれど、蜜蜂が花から集めて来る時はまだ花みつ(しょ糖)ですが、巣に持ち帰り蜜蜂の体内を通し、水分を蒸発させることではちみつになるんですって!! それも消化の良いブドウ糖と果糖に分解されて……すごい!!

その4種類のはちみつを試食させてもらいました。

れんげ  ⇒ 柔らかな香りと上品な味 人気があるのわかるぅ!
アカシア ⇒ ほとんど無臭で癖がなく淡白な味 誰でも好きになれるわぁ!
とち(マロニエ)⇒ 濃厚で独特な味と香り 慣れたら癖になりそう!
百花 ⇒ 複雑な風味なのに美味しい いろんな花蜜だから贅沢かも?

左かられんげ、鳥取砂丘に群生するアカシア、とちの花、試食した4種のはちみつ
うじゃうじゃ?

昨年、生まれて初めて採蜜を体験させてもらいました。「蜜蜂に刺されないかなぁ、怖いなぁ…。でも仕方ないなぁ…。でもちょっと興味もあり!」。こんな気持ちでいざ蜂場へ。(蜜蜂の巣箱が並べてあるところを蜂場:ホウジョウって言うんですよ。)

蜂場は周り一面がピンク色に染まったれんげ畑の中心にあり、それはみごとな景色でした。東京ドームの3個分に匹敵する広さのれんげ畑を、蜜蜂さんたちは自由に飛び回っています。

蜂場に置いてある大きな木製の巣箱は、今まで遠くから眺めていただけだったので、中を見るのは初めての体験でした。煙をモクモクと吹きかけて(蜜蜂が煙でおとなしくなるんですって。)、恐る恐る覗いてみると…なんとビックリ! 巣箱の中には、何万匹もの蜜蜂がうじゃうじゃ! 「怖い!」と鳥肌が立ちました(ちなみに巣箱の中には多いときには5万匹くらい住んでいるそうな)。

場長さんが刷毛でてきぱきと蜜蜂さんたちを払い除くと、箱の中の巣には蜜の板ができていて(これを巣蜜と言うそうな)、巣蜜は想像以上に重く、きらきら光る金色のはちみつが溜まっていて「綺麗だなぁ。すごいなぁ!」と大感動!

待ってましたとばかりにスプーンで舐めた100%純粋蜂蜜はとっても甘くまろやかで、「うまっ!!」の一言です。

うじゃうじゃの下にはきらきら光るはちみつがいっぱい!
蜜蜂に感謝です!

蜜蜂の命はたった1カ月ほどとのこと。一生の間に集める蜜の量は小さじ一杯と聞きます。まさに貴重品だなぁ……。たった1カ月のはかない命から集めたはちみつをいただいている人間は蜜蜂に感謝感謝です!

ちなみに、蜜蜂はイチゴ栽培には欠かせないんですって。このかわいい蜜蜂さんが農家の代わりにイチゴの花を回って交配し、美味しいイチゴの実がなるんです。蜜蜂がいなければイチゴも食べられなくなるんですね。他には、メロン、すいか、ブルーベリーなども蜜蜂による交配が必要だそうですよ。

我が家ではこの蜜蜂さんからいただいた素晴らしい天然の甘味料を、お砂糖の代わりに日常生活に取り入れています。以前はトーストにつけて食べるだけの私でしたが、今は料理、お菓子つくり、飲み物など気軽になんにでも使います。

特にピッタリなのがお魚の煮付けです。意外と思われるでしょうが、はちみつにはギ酸という刺激性のある酸が含まれており、魚のにおいを抑える働きをするそうです。また、はちみつの主成分であるブドウ糖と果糖が、魚のたんぱく質に含まれるアミノ酸と反応し、魚の臭みを抑える働きをします。お肉料理に使うとお肉が柔らかくなることは結構知られていますよね。

特に嬉しいのは、はちみつは後味にしつこさがないこと、それとなんといっても甘さは砂糖より30%アップなのに、カロリーは60%オフなんですって。それにビタミンやミネラルも豊富で、自然の甘味が美味しさを増すと実感です! みなさんもぜひ試してみてください。

蜜蜂さんからいただいたはちみつを使ったはちみつプリンは最高!
はちみつだけじゃないんです。

そして、もう一つの生産物がれんげ米です。蜜蜂のために田んぼに種を蒔かれたれんげ草は、春には花を咲かせ、はちみつを提供してくれますが、その一方で、れんげ草の根に出来る根粒菌が土壌に良い有機肥料となり、美味しいお米になります。これがれんげ米です。

一般的な米作りは、化学肥料や農薬を使って、できるだけ手間をかけないように作られていますが、このれんげ米作りは昔から変わらず、現代農業の中でも自然環境を守りながら、肥料、農薬を控えて手間をかけながら作られているそうです。鳥取県が推進している環境にやさしい農産物として、鳥取県特別栽培農産物にも認証されているんですよ。

そういえば、最近れんげの花が一面に咲いている風景って見かけなくなりましたよね。あれって、昔の農家は毎年秋になるとれんげ草を蒔いていたからなんですって。はちみつも採れるし、美味しいお米も獲れる、それに美しい景色。まさに先人の知恵ですね。

春には一面ピンク色のれんげ畑が、秋の収穫期には一面金色のれんげ米の田んぼに大変身!です。春はピンク、夏は緑、秋は金色、冬は真っ白な雪と、万葉の里のれんげ畑は四季折々の姿を見せてくれます。皆さんも是非一度見に来てください。

最後にもう一つ。我が家ではSANYO(今はパナソニックですよね。)のゴパンで作る、このれんげ米のパンの美味しさに満足しています。れんげ米パンとれんげはちみつってとっても最高! 是非お試しあれ!

ピンク色のれんげ畑が金色のれんげ米変身! れんげ米を使ったゴパンメニューをいろいろ考え中です。