北フランスの旅 3 
塔の上から眺める国境。

(2011.07.04)

カリオンが鳴る街

フランスの最北にあるベルグは、星形の堀と城壁に囲まれた中世の小さな街だ。中央の広場には物見塔が残っている。私たちが予約したホテルは中世の教会の前にあり、1階はレストランになっていた。夕方この街へ到着したので、迷わずここで晩ご飯を食べることに決める。メニューを見て、私は白身魚のブイヤベースみたいなクリームグラタンを注文、この地方の名物料理らしい。前の晩にリールで食べた牛肉のビール煮込みが、美味しかったのだが量が多過ぎたので、今宵は胃に優しいセレクトで。

翌朝、朝食を済ませ、ミシュランガイドを見ながら街の東と北側に残っている堀を時計回りに散歩する。遊歩道になった城壁の上は菩提樹の並木が続き、堀沿いには白い野バラが満開だった。時計の針で20分ぐらい歩いたところで、中央の広場にある物見塔へ向かう。狭い螺旋階段を登り、屋上へ出るとカリオンの演奏室があった。鍵盤を叩いて鐘を鳴らすそうだが、15分おきの音楽はモーターによる機械仕掛けだった。人間が演奏するのを一度見てみたい。演奏室の周りは細い通路になっていて、ベルグの街が360度見渡せる。晴れた日には、北海も見えるんだろうか? どこからがベルギー領なんだろう。



国境

2年前にスイスのバーゼルへ旅行したことがある。友人のクルマに乗って近くのスーパーマーケットへ買物に行く時に、検問所を通った。スイスからドイツへ国境を渡ったのだ。パスポートを見せたりはしなかったが、自動小銃を持った警察官(?)の前を通過するのは、気持ちのいいものではない。

バーゼルはドイツ語圏なので言葉が変るわけではないが、たとえばスーパーマーケットの商品の陳列の仕方や品揃えに、スイスとドイツの微妙な違いがあるらしい。島国の日本では、陸の上での国境がない。隣りの国は海の向こうだし。私はヨーロッパを旅行する時に、いつも国境を超える時に少なからず緊張する。国際電車に乗っていて、検察官が来ないまま隣りの国へ移動したりすると、なんだか肩すかしを食ったようで、物足りなかったりする。

今回訪れた北フランスのベルグという街をグーグルマップで調べてみると、西へ10キロほどでベルギー国境、北へ5キロほどで北海だ。ベルギー国境には山や川があるわけでもなく、平坦な畑が連続している。国境は、どうなっているんだろう、見たいものだ。ベルギーはフランス語圏だし、うーん、国境と言うよりは、日本の県境みたいなものだろうか。

ダンケルク

フランスの北のはずれまで来たんだし、せっかくだから海が見えるところまで行こうと言うことになり、電車で20分ぐらいだったかな、ダンケルクへ向かう。終着駅で下りて、人気のない北の港町を帰りの電車の時間を気にしながら足早に散策する。ヨットハーバーになった入江の、跳ね橋の向こうに見える静かな外洋がたぶん北海だ。ダンケルクと言えば、ジャンポール・ベルモンドの映画を思い出すぐらい、戦争映画好きの友人に「ダンケルクに行ったよ」と軽く自慢できるくらいのアリバイは作れたかな。


旅の打ち上げ

再びリールへ戻りパリ行きの切符を買い、少し時間があったので駅前のテラスで一休み。フランスのカフェテラスは、どこもどうしてこんなに気持ちがいいのだろう。なんだか、客はみんな遊んでる人のように見える。私がお気楽になっているだけのことか? 行き当たりばったり、成り行き任せの旅行にしては、なかなか楽しかった。これも、フランスの旅に慣れた稲葉さんのおかげだな、きっと。TGVはあっという間にパリに着き、北駅の混雑とアフリカ系の人の多さに、パリだなあと実感する。地下鉄に乗り換えて、アールゼメチエの古い小さな中華街へ向かう。フォーやボブンを食べながらもう一度、パリへ戻ってきたんだと実感する。