from 山梨 – 3 - 山梨のぶどうで日本のワイン その1 ~デラウェアの新酒~

(2009.10.05)

「夏の暑さは日本一レベル、冬は極寒の盆地」の山梨県は、「フルーツ王国」の異名が決して言いすぎではないくらい、国内でも有数の果物の生産地です。
中でも「もも」「すもも」「ぶどう」は全国一の生産量。
山梨県で果物栽培が盛んな理由には、
   ・山に囲まれた内陸性の気候であるため、昼夜の気温差が大きい。
   ・扇状地が発達していて、土地の水はけが良い。
   ・首都圏に近いので、新鮮な果物を早く出荷できる。
などが挙げられますます。
「もも」と「すもも」は前々回の記事で取り上げたので、今回は「ぶどう」……を原料とした「ワイン」の事。

日本におけるワイン醸造は明治3年頃に山梨県の甲府で始まったと言われていて、府県別物産表によれば、明治7年には山梨県で白ぶどう酒四石八斗(約900リットル)、赤ぶどう酒十石(約1800リットル)を生産した記録があるそうです。
現在、山梨県で生産されているワインの量は、国内生産量の約4割(平成18年度)で、全国一。(参照URL: http://www.yitc.go.jp/wine/
大手酒造メーカーや個人経営のワイナリーが、甲州市勝沼町を中心とした県内のあちらこちらにある風景というのは、それまでワインに馴染みがなかった私にとって「日本酒の酒蔵ですらこんなに集中しているところを見たことがないのに……」とかなり驚きの風景でした。

勝沼町のぶどう畑。
橋の欄干にもぶどう。

先日、新酒を買ってきました。
もちろん、ワインの。
ワインの新酒と言えば、毎年11月の第3木曜日に解禁されるボジョレー・ヌーボーが有名ですが、私が毎年楽しみにしている新酒は、山梨県産デラウェアの新酒。
初夏、ぶどうシーズンの初めに出回るデラウェアから作られるワインです。

夏の初めのデラウェア。

収穫時期が早い品種なので、新酒は9月の中旬頃から店頭に並びます。
県内のスーパーマーケットでも手に入るんですけど、今年のぶどうの出来栄えや仕込みの様子を伺いながら試飲をするのが楽しみなので、まずはワイナリーさんに伺います。
毎年伺っているのは、甲州市勝沼町にある中央葡萄酒株式会社

蔦に覆われた、中央葡萄酒株式会社エントランス。

「毎年」と言っても、私がワインをまともに飲み始めたのは山梨県に引っ越してきてからのことなので、今年で3年目。
前々回の記事でも触れたように、今年は5月頃からの天候不順でももが不作だったこともあり、ぶどうは大丈夫だったんだろうかと気になっていました。

試飲カウンターへ行き、早速デラウェア新酒を注文。
ワインをグラスに注ぎながら、ワイナリーの方が「今年は良いですよ、当たりです」とおっしゃる。
「えっ、お天気悪かったのに?」と聞くと、「8月に入ってから、ほとんど雨が降ってないんですよ、勝沼は」との事。
言われてみれば、ぱっとしたお天気ではなかったけど、暑かったし雨も少なかった。
そうか…ぶどうはももよりも後だもんね。

今年のデラウェア新酒は、ぶどうの甘み、酸味が凝縮された猛烈にフレッシュな仕上がりでした。
去年のものより、一昨年のものに近い感じ。
去年はもう少しドライ気味だったように記憶しています。
なーんて、ワインの味を語るほどの技量は持ち合わせていませんが、とにかく今年のデラウェア新酒はその「フレッシュなデラウェア感」みたいなものが非常に気に入り、1,500mlのボトルを購入。
後日、そのボトルを空けた瞬間に「今年のデラウェアは今年しか飲めないんだ…」という未練な気持ちに捕らわれて、1,500mlをもう1本購入してしまいました。
正直、さらにもう1本飲んでおきたいくらいですが、以前、田崎真也さんがご自身の著書に
「一生かけても世界中の全てのワインを飲むことが出来ないほど、数多くのワインがあるのですから、いつも同じワインを選んでしまうのは残念です。今日美味しいと感じたら、明日はもっと美味しいワインを選ぼうとする気持ちが、毎回の食事をより楽しい時間に演出できるポイントのひとつです」(PHP研究所発行「田崎真也の安くて旨い!ワイン&簡単おつまみ」)
と書かれていたことを思い出し、今年のぶどうがあたりなら他のワインも飲まなくてはいけないなと思い自重。
…あ、そうだ、山梨豆知識をひとつ。
山梨では一升瓶入りのワインが売られています。
(前述の1,500mlは珍しいサイズで、これは一般的な750mlの2倍ということですね)
この一升瓶ワインは決して特別というわけではないようで、スーパーマーケットのお酒コーナーでも見ることのできる、ごく当たり前のサイズです。

右端が1,500mlデラウェア新酒、左下が一升瓶に入ったグレイスカンパーニュ、その上が750mlデラウェア新酒。

9月のデラウェアを皮切りに、「巨峰」「あじろん」「マスカット」「甲州」「マスカット・ベリーA」など、他品種の新酒が次々に出てきます。
10月~11月は、県内のあちらこちらでワイナリー単独主催、組合主催、自治体主催など様々な「ワイン祭」「新酒祭り」が催され、その会場ではいろんなワインを試飲して、購入することができます。
もちろん試飲できるのは新酒だけではなく、「1本買うには手が出ない」ワインなんかも格安で試飲できたりして、これが結構楽しみなんですよねー。
「富士の国やまなし観光ネット」「特集 ワイン!日本一のワインの里!」のページに、これから開催される「ワイン祭り」「新酒祭り」が掲載されていますので、興味のある方は参考にしてみてください。