from 山形 - 7 - シンプルなのに手仕事の温もりを
持つ「アトリエセツナ」の家具。

(2012.07.11)

地元で活躍する家具デザイナー。

東北芸術工科大学(以下芸工大)が山形市に設立されてからおよそ20年。徐々にではありますが、街は変貌を遂げたように感じます。元々城下町である山形市には、もの作りの伝統があります。しかしどちらかと言えば伝統的な感性のみが主に尊重され、育まれてきたように思います。しかし芸工大が設立され、そこを巣立った卒業生達が各々自立した活動を始めたことで、山形の街に新しく個性的なもの作りが生まれ始めたのです。

「アトリエセツナ」を主宰する渡邉吉太さんも、芸工大の卒業生。山形市を拠点に家具や、店舗、空間設計を中心とした創作を行っている、若きデザイナーです。私は彼の家具とインターネットで出会いました。独創的な家具を探して様々なサイトを探しているうちに彼のサイトに辿り着き、シンプルでありながら、その練り上げられたなデザインに目を奪われました。その中からいくつかの家具を紹介します。

「アトリエセツナ」の作品。

セツナチェアneo。一見オーソドックスな印象を与える椅子です。しかし細部を見ると、背もたれの木材の曲線が実に優しく繊細で、それでいて堅固な剛性をも併せ持っています。大げさに自己主張をするのではなく、穏やかでいて静かな存在感を持った美しい椅子。さりげなく、しかし作者のポリシーを感じるデザインです。

会議用のテーブル。野性味豊かな、見事な木目の神代杉を豪快に使用し、それをモダーンで鋭角的なステンレスの台坐が支えています。相反する質感を絶妙の対比で一つの家具として見事に調和させた、刺激的でいて洗練を感じさせるテーブル。これは是非ダイニングテーブルとして自宅に欲しいですね。

簡潔で直線的な木の枠組みが新鮮なソファー。木を使っていながら決して重たい印象を与えない、軽やかなイメージに仕上げられています。シンプルでいて実に秀逸なバランス。これも何気ない様でいて、じっくり練り上げられたデザイン性を感じます。


セツナチェアneo

左:会議用のテーブル、右:ソファー
渡邉さんが考えるデザインの基本。

渡邉さんに家具をデザインする上で心掛けていることを伺いました。

1、空間に調和すること(目立ちすぎないこと)。
2、他の家具作品を見すぎないこと(写真作品や映像作品など、他のジャンルの作品をたくさん見ること)。
3、各部材が、はかないバランスで成立すること。
4、自分のディテールを決めつけないこと。
5、顧客の要望を鵜呑みにしないこと(要望を超越した提案をすること)。

とのこと。芸工大卒業後、さらにスウェーデンで家具デザインを学んだ渡邉さんの家具は、自分のコンセプトと真正面に向き合って、それが確かに作品として表現されているのです。山形を代表する若き彼の作品にこれからも要注目です。

「アトリエセツナ」渡邉吉太さん

1981年 宮城県生まれ。2004年 東北芸術工科大学芸術学部美術科卒業、2004年スウェーデン国立芸術工芸デザイン大学/University College of Arts, Crafts and Design (通称Konstfack )留学、家具デザインを学ぶ。帰国後フリーランスデザイナーを経て、2006年アトリエセツナ設立。家具デザインを中心に、店舗、空間デザインを手掛ける。

アトリエセツナ日々日記
アトリエセツナ