from ヘルシンキ - 15 - 「もっと自然の中へ!」by Karin

(2010.11.17)

「フィンランド女性に学ぶ 幸せ力」
File.14 Karin(50歳)

厳冬に向かって日に日に温度が下がり、
日照時間が短くなってきた
フィンランドからのリポートです。
今回お届けする物語は、
専業主婦期間10年を経て、
特別支援学級教師の道に進んだ
Karinさんのお話です。

 

■Work:幼児保育師3年、主婦10年、そして特別支援学級教師に。

最初の仕事は幼児保育施設の教師でした。
3年働いた後、結婚、子どもの出産をきっかけに専業主婦になりました。
3人子どもを授かり、10年間、家事と子育てに専念。
一番下の子が4歳になったときに、近所の学校で特別支援学級の教師を
募集していることを知り、働き始めることを決意。
幼児保育施設教師としての資格と経験はありましたが、特別支援学級の教師は新たな分野。
研鑽を積む必要があったので、働きながら大学院に通い修士号を取得しました。
家事、育児、仕事、大学院での勉強を同時進行するにはエネルギーが必要でしたが、
長い夏休み(フィンランドでは大人も1ヶ月間の夏休みをとる)を活用して、
なんとか乗り越えることができました。

私が担当している特別支援学級には、様々な学習障がいを抱えた生徒がいます。
ひとりひとり抱えている問題が異なるので、通常のカリキュラムにそって
学習指導することはできません。
保護者との面談を重ね、それぞれの生徒にあわせた独自のカリキュラムとゴールを設定し、
学習指導します。
一番大事にしていることは、生徒のできないことに目を向けるのではなく、
何ができるか、何が好きかを見つけ出し、それを伸ばすことです。
この仕事を14年間続けてきましたが、
子どもたちとの接触はいつも新しい発見がいっぱいでわくわくします。
 

Karinさんの職場である学校。

 

■Turning Point: 父と親友との別れ。夫との出会い。

35歳のとき父を事故で亡くし、続いて親友も亡くしたことは、
言葉にできないほど悲しい出来事でした。
でも、父や親友が教えてくれたことは、私の心の中に今でも生きています。
一方で、夫と出会い家族を持てたことは幸福な出来事でした。
夫と出会ったとき、彼はすでに結婚、離婚を経験して子どもがいました。
でも、私にとっては過去のことは問題になりませんでした。
彼の子どもたちとも交流を持っています。

 

■Happiness:Life is short.だから、楽天的でありたい。

楽天的であることは、幸せであるために大事です。
人生には難しいことはたくさんあるけれど、日々の何気ないことを大事にしたいです。
同世代の仲間を見ていると、夫に飽きてしまっている人が多いけど、
私は今でも夫に飽きることなく一緒に過ごす時間を楽しんでいます。
10年間専業主婦をした期間に、夫のことや個性の異なる3人の子どもたちのことを
よく理解し、家族がどうしたら幸せに暮らせるかを考えられたのが良かったと思います。

今は回復しましたが、夫は長らくうつ病を患っていました。
彼は限界を越えて働き続けて、燃え尽きてしまったのです。
大好きな人が、別人のようになってしまったことを受け入れるのは大変でした。
私たちは自分たちの人生を見つめなおしました。
彼が外で仕事をしなくても、一緒に幸せに暮らせる方法を考えました。
そして、私が外で働き、彼が主夫として家事全般を担当することにしたのです。
彼は家事だけでなく、私たちが週末や休暇を過ごすための山小屋を建てたり、
陶芸に打ち込んだりして、新しいリズムで生活できるようになりました。

3人の子どもも成長しそれぞれの道を歩き始めたので、
私は私で、仕事のほかに趣味であるガールスカウトのリーダーの活動をして、
アウトドアを楽しむ時間も大事にしています。
それぞれの仕事や趣味を尊重しながら、
夫との2人暮らしを2度目の「新婚生活」として楽しめたらと思います。

Life is short. 人生はとても短いです。
人の悪いところを見て文句を言っていても、何も良くなりません。
人生の貴重な時間を無駄にしてしまいます。
周りの人の良いところを見つける。
そして、自分や周りの人にとって何が一番良いことか
考えて行動できる人間でありたいです。

夫Runeさんの建てた山小屋。
暖炉も手作り。
Runeさんのつくった陶器。

 

■Dream For Next 10 years:生きている限り、最善を尽くしたい。

今、自分はとても幸せだと感じます。
今年、乳癌を患い、手術と治療をして乗り越えました。
死は、いつか現実に起こることだと理解できるようになりました。
だから、生きている限りいつも最善を尽くしたいと思います。
そして、子どもたちが丈夫であること、失敗をしても学びながら成長してくれることを
願っています。

左からKarinさんの母、Karinさん、夫Runeさん

 

■Message: もっと自然の中へ!

私はいつも、自然からたくさんのことを学んでいます。
自分で野菜を育て、食べること。
森の中で、自然のエネルギーを感じながら過ごすこと。
そうすることで、幸せに生きるために何が必要なのかがわかるのです。
自然の中に入り自分たちもその一部であることを感じて、
自然を、自分の人生を大切にする方法を考えてみませんか。

Karinさん家族が週末や休暇を過ごす森。
庭でとれるベリー。
家庭菜園。

 

 

■取材後記

取材にあたって、Karinさんご夫妻のご自宅そして山小屋にお邪魔しました。
Karinさんの生活は自然とともにあります。
自然の力を借りる、自分の手で作る、近所の人と助け合う暮らし。
人生と人と向き合うKarinさんの姿勢は、
そうした暮らし方と密接に結びついているものなのだと感じました。

 

※この内容は、2010年10月取材当時の情報です。