from 北海道(道央) – 52 - 夏の北海道観光。
札幌に来たなら「北海道大学」へ!!

(2011.07.16)

「北大は危ないから近付かないこと」。

実家が北海道大学から歩いて10分程度のところにあった。当時から北大の構内は、池や林など、自然環境に恵まれていて、子供たちにとっては絶好の遊び場に成り得た場所だった。

ところが、池やプールは人目がない中では「事故」の原因ともなり兼ねず、自分が通っていた小学校では「北大は危ないので、子供同士で絶対に遊びに行かないこと」という指導が、いつも担任から行われていた。
 
しかし、子供にとってルールは破るためにあるようなもので、自分も放課後には近所の子供たちと一緒になって、おたまじゃくしやクワガタを探しに遊びに通ったものだ。

世の中、いつも「投書」やら「密告」という手段で「悪事」と思われる事柄を通報し、正義の味方になったような「錯覚」を覚えて快感を得る人物はいるものだ。忘れもしない小学校2年のとき、突然朝の集会の際、担任から名前を呼ばれて皆の面前に引き出された。
 
「理由はわかっているな?」と言われても、全然分からない。いきなり、殴られた。

今であれば、モンスター・ペアレントが即刻学校に怒鳴りこんでいるのだろうが、大らかな雰囲気の当時、どこぞの親からご丁寧に自分を含めた数人が吊るし上げを受け、「二度と北大に近付くな!!」とお叱りを受けたことは、今となっては懐かしい想い出の一コマである。


環境の素晴らしさが、学習環境にも影響。

「二度と北大に近付くな」と叱られたことが原因かどうかはいざ知らず、結局、実家から最も近くにあった北大とは生涯「縁」がない(笑)。
 
今も北大は、広大なキャンパスの中、豊かな自然環境に恵まれ、学問を究めるには最高の環境にあると言っても過言ではあるまい。ノーベル化学賞を受賞した鈴木章(すずき・あきら)先生をはじめ、各界に優秀な人材を輩出している名実ともに「北海道の最高学府」である。
 
ちなみに、北大が全国で5番目の「帝国大学」となったのは、1918(大正7)年のこと。

その前身は、1872(明治5)年に芝の増上寺に設けられた「開拓使仮学校」、1876(明治9)年に北海道の札幌に「札幌農学校」、1907(明治40)年には宮城県・仙台市に設けられた東北帝国大学の下、「東北帝国大学農科大学」といった変遷を経ている。

なお、札幌農学校は、近代技術を導入し北海道開拓の指導者を養成する目的で開校した。


「朱鞠内湖」に沈んだ北大演習林と北大との不思議な縁。

札幌農学校の初代教頭として「少年よ、大志を抱け」という言葉を残したとして有名なクラーク博士(William Smith Clark。1826-1886)は、マサチューセッツ農科大学勤務中の1年間の休暇を利用してこの役職に就き、札幌には8か月間だけ滞在したという記録が残っている。専門の植物学に限らず、自然科学、キリスト教についても講じたことから、クラーク博士と接点がなかった農学校2期生の新渡戸稲造(にとべ・いなぞう)、内村鑑三(うちむら・かんぞう)らが、特にキリスト教の影響を受けた。
 
北大が帝国大学として総合大学へと進んでいくためには、財政面での課題が大きなネックとなっていたようであり、当時最も広大な国内演習林を有していた北大にとっては、その演習林を売却することにより、大学運営資金を賄うことができたようだ。(参考文献:「札幌農学校の総合大学化と維持資金 −北大理学部の創設と雨龍演習林を中心に−」(秋林幸男ほか『北海道大学農学部演習林研究報告第54巻第2号』
 
特に、以前『web dacapo』にてご紹介した国内最大湛水面積の「朱鞠内湖」によって湖底に沈むこととなる「北大演習林」の売却利益が、大きな役割を担っていたのではなかろうかと想像できる。

戦後A級戦犯に名を連ねた「藤原銀次郎(ふじわら・ぎんじろう)」の妙な「影」が、ここに見え隠れする。

 

札幌の隠れた「観光名所」。

観光で札幌に足を伸ばされた皆さんは、「札幌時計台」に一度は訪れたことはあるだろう。ご承知のように、札幌時計台は、札幌農学校開学3年目の1878(明治11)年に、農学校生徒の兵式訓練や心身を鍛える体育の授業に使う目的で、「札幌農学校演武場」として建設されたものであり、1906(明治39)年に現在地に移転した。
 
羊が丘展望台にも「クラーク博士」の像があり、大倉山ジャンプ台などが札幌の観光名所となっているが、JR札幌駅を降りて、北へと徒歩約7分程度で「北海道大学正門」がある。

正門を入ればすぐに「インフォメーションセンター」があり、大学構内を散策するためのガイドマップを入手し、約1時間程度北大構内を散策しながら、「明治期以降の北海道の歴史」に触れてみてはいかがでしょうか。思いがけない「発見」が、皆さまをお待ちしているはずです。