土屋孝元のお洒落奇譚。 ホノルルの海ではなく『ホノルル美術館』。名画鑑賞と穴場のカフェ。

(2014.05.22)
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ミュジアムカフェのハムサンド。今回ホノルルでサンドイッチをかなり食べましたが、『ホノルルミュージアムカフェ』のハムサンドは美味しかったです、サラダも生食のほうれん草、パルメザンチーズ、クルミ、パクチー、とバランスも考えられています。©Takayoshi Tsuchiya
ホノルルの楽しみのひとつ
『ホノルルミュージアム カフェ』

ホノルルへ来たら一度は訪れるカフェがあります。『ホノルルミュージアムカフェ Honolulu Museum of Art Cafe』、ここは火曜から土曜までの11時半から1時半までの時間制で、中庭に面したオープンテラスのレストランです。サンドイッチやサラダ、パスタも種類が豊富で美味しく、訪ねた日の日替わりのスープ、例えばマッシュルームチャウダーも美味しくて食べ応えがあります。ここへやってくるお客さんはみなさん このミュージアムのメンバーの印をつけています、たぶん日本にもある美術館メンバーシップで年間会費を払い来ているのかなと思います、僕は前に来ていたので事前にホテルのコンシェルジュから予約を入れてもらい席が取れましたが、ランチの時間に直接来ても席は難しいかもしれませんね。

『ホノルル美術館』
オススメの部屋。

以前もご紹介したことがありますがこのミュージアムには 古代オリエントからメソポタミア、ギリシャ、ローマの人物像、中世、ルネッサンス、17世紀ヨーロッパ美術、18世紀ヨーロッパ美術。ここがハワイ? と思うほど、世界の名作美術が揃っているのです。

特に印象派、ポスト印象派。美術の教科書でも見たことのある名の知られた作家、ゴーギャン、モジリアーニ、ボナール、ディフィ、マチス、キリコ、ドローネー、セザンヌ、ルノワール、ピカソ、ダリなど一通り見ることが出来て、日本とは違いガラス越しではなく触れるほど近くで見れるのです。しかも作品によっては写真撮影も可能です。前回来た時に見たジョージア・オキーフが展示替えで入れ替わっていたのがとても残念でしたが。

世界各地の美術展示があり見応えがあります。東南アジア、インド、インドネシア、フィリピン、太平洋諸島、古代ラテンアメリカ、北アメリカ大陸、アメリカ、イスラム圏、韓国、中国、日本、染織、それぞれ展示室があり、アジア圏の仏教美術、小乗仏教、大乗仏教の石仏や乾漆、陶器まで豊富に揃っているのです。

特にここは広重や晴信などの浮世絵のコレクションで世界的に知られており、今回も日本の版画展示スペースには少しですが飾られていました。以前来た時にはかなりの数の枕絵の展示がありました。

人物像の部屋でも
作品にグッと寄って鑑賞。

もちろん撮影もでき、中でも僕が特にオススメしたいのは、ギリシャ、ローマの人物像の部屋。ここの古代の人物像は至近距離で見れて触ろうと思えば触れるくらいです。『ルーブル美術館』などでも作品に近寄れるのですが、台座が高くて人物像の顔までは眼が届きません。でも、ここでは展示室に段差があり間近に顔など見ることができます。来場者が多くないので貸し切り状態。ゆっくり落ち着いて細かな部分を鑑賞できます。パリなどの邸宅美術館と同じように壁の色は濃いブルーで白い大理石の人物像が浮き立ち印象的です。モザイクの壁画も良いですね、タイルのひとつひとつ色の違いなども味わい深いです。中でも特にライオンの壁画が魅力的でした。

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常設展のポートレイト肖像画コーナーでは、古今の肖像画作品をまとめてあり、こちらもオススメです。アメリカ人画家で世界的にも知られたジェイムス・ホイッスラー(James Whistler)の肖像画 『19世紀の貴婦人のポートレイト Arrangement in Black No.5 : Lady Meux』があります。その横にアレックス・カッツ(Alex Katz)の作品が並んでいるのです。カッツはニューヨークのブルックリン生まれの画家で版画や彫刻、ポスターでも知られており、大好きな画家の一人です。僕は以前にある企業広告制作で、カッツのエスキースとペインティングを使わせていただいたこともあり、思い出深い作品です。この部屋はオレンジ色の壁でアレックス・カッツには ぴったりの色彩でした。時代も作風も関係なくポートレートというテーマでまとめているのでわかりやすい? かな。

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『ホノルル美術館』にはもちろんハワイの独自の文化の展示もあります。ハワイ独特の絵画一派の展示があるのです。ハワイの火山を描くグループで「火山派」とも呼ばれているようです。火口から流れる溶岩や噴煙の様子を克明に描写していて迫力があります。これは他の地域や国では見られない絵画ですね。ハワイアンは神話にも残る昔から、火山を火の神 ペレ神として崇めているので特別な思い入れがあるのでしょうか。

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ホノルル美術館、1Fの見取り図です、ほぼ平面ですがかなりの広さです、ひとまわりすると世界の美術史を巡った気分になります。©Takayoshi Tsuchiya

余談になりますが、僕が学生時代に憧れた世界的にも知られた版画家の一人、高柳裕さんの版画の展示がこの夏にあるそうです。昨年末 銀座の『ギャラリーゴトウ』での高柳さんの個展の時にご本人からお聞きしました、『ホノルル美術館』には版画に詳しいキュレーターがいるのだそうです。

『高柳裕 版画展』
会期:2014年7月7日~9月14日。
会場:ホノルル美術館

地中海式、チャイニーズ……
素晴らしいコートヤード。

それぞれの展示の部屋を出ると回廊と中庭があり、回廊の先にはチャイニーズコートヤード、地中海コートヤード、セントラルコートヤード、パームコートヤード、キナウコートヤードがあり 先ほどのカフェのテラスの前はハワイ美術への外階段のある空間です。

コートヤード、日本風に言えば中庭ですが、この『ホノルル美術館』にはいくつかのコートヤードがあって、その周りを囲むように展示室があります。中でも気に入ったのは地中海コートヤード。この地中海コートヤードには中央に水盤がしつられてあり涼しげに水音を立てています。ホノルルは季節にもよるのですが晴れているとかなり強い日差しです。そんな中で、木陰とターコイズのタイルの壁の相乗効果は、視覚的にも涼しいのです。

もう一つのお気に入りはチャイニーズコートヤード。その空間を背景に写真を撮ると香港か何処かの中国寺院にいるような気分になります。植栽や石の配置、池の作りまで完璧に中国式です。

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地中海コートヤード。ミュジアム館内の中庭でターコイズブルーのタイルが貼られた飾り壁があり、中央の水盤の水が涼しげに水音たたてています。©Takayoshi Tsuchiya

もちろんミュージアムショップはとても充実していて、浮世絵特に北斎、広重のレターセットや作品集、あの広重の江戸名所図を使った文具など、「JOHN MELVLLE KELLY ジョン・メルビル・ケリー」のカラー・アクアチント・エッチングの作品集「Hwaiian Idyll ハワイアンアイドル HONOLULU ACADEMY OF ARTS 」や写真集や画集も東京の専門書店と変わりません、またハワイのアーティストのジュエリーなど意外に廉価でいろいろ揃います。

ワイキキビーチで読書などして過ごすのも良いのですが、こんな ワイキキの別の楽しみ方もあるのではと思いますが、いかがでしょう。

 
ホノルル美術館
Honolulu Museum of Art

Tel:808-532-8700
所在地:900 S Beretania St, Honolulu, HI 96814
料金:大人10ドル、17歳以下無料
開館時間:火~土10:00 ~ 16:30、日13:00 ~ 17:00
休館日:月、アメリカ独立記念日、感謝祭、クリスマス
入館無料日:毎月第1水、第3日