from パリ(たなか) – 9 - サン・マルタン運河の観光船。

(2009.06.29)

夏を思わせるような晴れた午後、10区の東駅でメトロを降りてサン・マルタン運河を目指す。映画好きな私として、このエリアを一度は見ておかないと。モノクローム時代の『北ホテル』と、それに比べれば最近の映画『アメリ』の舞台になったロケ地を歩いてこの目で確かめるのが目的だ。フィールドワークと言えば聞こえはいいが、要するにミーハー気分。北ホテルは、まあ想定通りの、運河沿いの観光スポットだった。(映画はすべてセット撮影だったと聞くが、それにしてもセットそっくりの風景だった?)

運河沿いの北ホテル。建て直されたあと、昔風に改修されたらしい。現在はカフェとして営業中。
鉄の橋は階段付き。船のための信号や標識が立っている。

キャナル(運河)というからには流れる川をイメージしていたが、短い区間を水門で塞き止めた大きなプールだった。波が立たないから、アメリが映画の中で水切りして遊ぶのには絶好の水辺だと納得。その後で運河に架かる鉄橋を渡っていたら、こちらへ向かって来る観光船が見えた。散歩のおまけに、落差のある運河を船がどうやって通過するのか、橋の上からじっくり観察することにした。

バスティーユのメトロからも見えるアルスナル港を出た観光船は、すぐに暗渠となった地下運河(トンネル)に入るらしい。長いトンネルを抜けたところがここサン・マルタン運河。しかしこの先は水位差があるので、水門の開閉を繰り返しながら水位の調整をして、階段を登るように徐々に進んでいくことになる。

水路の両側にはプラタナスの並木が続き、気持ちのいい木陰を作っている。水門を通過した船は岸壁に繋留され、後の水門は再び閉じられ、前の水門から水が落ちてきて水位が徐々に上がり、差がなくなると前の水門も開き、次へ進んで行く……。私が見ている間だけでもこの作業が3回繰り返された。20分ほどかかっただろうか、ゆったりしたものだ。

観光船の終着地はこの先にあるヴィレットの船溜まりらしいが、運河はさらに外国まで続いている。船溜まりには運河上で生活している人たちの小さな船がたくさん繋留されている。住所不定の気ままな暮らしって、実際はどうなんだろう。ちょっと惹かれるが、家はやっぱり地上にあるほうがいいような気がするなあ。

 

サン・マルタン運河を上る観光船

観光船がやってきた。後ろのトンネルの先はバスティーユ。トンネルを出て1段上がり、今2段目と3段目の水位がそろった状態。
3段目に進み右岸にロープで繋留されると後方の水門が閉まり、前方の水門から水が落とされ、水位が上がる。
前方の水位とそろったら水門が開く。
橋の下を通過。
上の広い運河へ進む。両岸には、日光浴をする人、釣りをする人、ぼんやりとくつろぐ人、恋人たち、そして寝る人。残念ながら、アメリの姿はなかった。ルソーの絵のような空と雲、時間が止まったような。
船が通過したら可動橋が90度回転して、静けさが戻る。