from ヘルシンキ - 10 -  「“未来”に託して後悔しないために、今、変わる勇気を」by Taina

(2010.05.13)

「フィンランド女性に学ぶ 幸せ力」
File.9 Taina Manninen(41歳)

ヘルシンキから電車とバスを乗り継いで
1時間半ほどのところにある、
フィスカルス村。
豊かな自然に囲まれたのどかなこの村は、
アーティストがたくさん住む
「デザインの村」として
人気を集めています。
今回は、ここでBed & Breakfast
(宿泊と朝食を提供する小規模な宿泊施設)を
経営するTainaさんにお話をうかがいました。
「大学講師」から「Bed & Breakfast経営者」へ
転身したTainaさんの物語。

 
History:航空会社勤務から大学講師へ。

昔から語学や旅行が大好きで、学生の頃は海外で働くのが夢でした。
7ヶ国語と旅行ビジネスについて学び、航空会社で働いていました。
航空会社では様々な仕事を経験しましたが、人材育成の研修担当になったことで、
「教育」という仕事のおもしろさに目覚めました。
そのことがきっかけとなり、マーケティング分野の講師を目指し、
ビジネススクールで勉強。大学講師に転職しました。

 
Turning Point:3時間しか眠れない日々に、心も体も燃え尽きた。

大学講師の仕事は充実していましたが、あまりにも忙しい毎日でした。
大学側のカリキュラムが二転三転するので、常にその対応に追われていました。
3時間しか眠れない日々。5年働き40歳を迎えたとき、疲れすぎて、
このままでは心も体も燃え尽きてしまうと感じて、人生を考え直しました。
私の父は51歳で亡くなりました。私もあと10年したら、その歳になってしまう。
人生を変えるなら、今しかない。そう思い、大学講師を辞めて、
夫とふたりでイタリアに旅に出ました。

以前からイタリアに住みたいと考えていたので、イタリアでBed & Breakfastの経営を
始められないかと、旅しながら30軒の宿を見てまわりました。
でも、5ヶ月間イタリアに住んでみて、家族や友人のいるフィンランドで生活する方が
幸せだと考え直して、帰国。
フィスカルス村で、この歴史ある古い家が売りに出されているのを見て、
ここでBed & Breakfastを始めることを決めました。
この村にはアンティークの職人がいっぱいいるので、古い家の良さを最大限に生かして
修理、改良することができます。昨年9月にこの家を購入し、職人の力を借りながら、
宿作りを進めてきました。おかげさまで、12月からお客様をお迎えしていますが、
フィンランドからだけではなく、海外、そして日本のお客様にも宿泊いただいています。

会社員や大学講師をしていた頃と違って、今は、自分たちが経営者なので、
自分たちで仕事をつくり、決めることができます。
家族や友人との時間を持つこともできて、生活の質は格段に上がりました。
人生が自分のもとに返ってきたような気持ちです。

Tainaさんが経営する『Wanha Meijeri』の入口。
『Wanha Meijeri』の外観。
築150年の家。昔の暖炉やアンティーク家具が心を惹きつける。

Happiness and Dream:自分の人生を生きているという実感。

これまで自分が学んできたこと、語学、旅行ビジネス、マーケティング、
そして最近始めたインテリアの勉強が、この仕事ですべてつながりました。
今は自分の人生を生きているという実感があり、幸せです。
大学でマーケティングを教えていた頃は、大企業の話ばかりしていました。
今は自分が小さな会社の経営者になってみて、実践の中であらためて学ぶこと
発見することが多くて楽しいです。
この歴史ある家、自然に囲まれたライフスタイルを、1人でも多くのお客様と
分かち合いたい、楽しんでいただきたいと思っています。
滞在されるお客様に、忘れられないすばらしい思い出を作っていただけるよう、
新しいサービスやイベントを考えています。
 

5つの客室はそれぞれにテーマカラーがあり、雰囲気も異なる。
Tainaさんとご主人特製の朝食。

 
Message:「未来」に託して後悔しないために、今、変わる勇気を。

大学講師を辞めて、Bed & Breakfastを始めると決めたとき、
周囲には反対する人もいました。
でも、私たちにはいつまで生きる時間が残されているか分かりません。
若くして亡くなった父や、病に倒れ夢に挑戦することができなかった人を見てきました。
あるか分からない「未来」に託して後悔しないために、今、変わる勇気を持つこと。
周囲の目を気にするのではなく、自分自身でよく考えて、
優先順位を思い切って見直すことが大切だと分かりました。
挑戦することが不安になったときは、祖父がいつも言っていた言葉を思い出します。
「Everything will be fine!(すべてうまくいくよ!)」

ご主人と愛犬2匹、そしてお母様。

 

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■取材後記

Tainaさんの宿に一歩足を踏み入れると、幼い頃に読んだヨーロッパの童話の世界に
飛び込んだような気持ちになります。
アンティークの家具に囲まれ、窓の外の静かで豊かな自然を眺める時間。
Tainaさんとご主人の、あたたかい手作りのおもてなし。
フィンランド旅行される方には、ぜひ、体験していただきたいです。

Tainaさんの宿のHPはこちら

フィスカルス村にはデザインショップや素敵なカフェなど見所がたくさんあります。

 
※この内容は、2010年5月取材当時の情報です。