from パリ(河) - 21 - アスパラガスとガリゲットと一緒に
フランスの春がやってくる。

(2012.06.04)

春野菜と果物が美味しい季節になりました。

フランスで「ああ、今年も春が来たな」と感じるのは、メルル(merle)という黄色いくちばしを持つ黒鳥のさえずりが聞こえた時。夜明けが近づくと、愛嬌のある姿からは想像できない、ソプラノ歌手のようなきれいな声でメロディーを奏で、春の到来を告げてくれます。青い空の下で、マロニエとプラタナスの若葉が爽やかにそよぎ、市場は色とりどりの瑞々しい食材で賑やかに。野菜と果物が美味しい季節がやって来ました。

春のリュクサンブール公園。噴水では毎年恒例のボート遊びの始まりです。
青々と茂るマロニエの若葉。
春の果物の主役と言えば、やっぱりイチゴですね。

フランスの春の果物を代表するのはベリー系の赤い果実。4月から5月にかけて、八百屋の店先はイチゴやフランボワーズなどの甘い香りでいっぱいに。特にイチゴ(フランス語で「フレーズ(fraise)」」は1人当たりの年間平均消費量が約2kgというほど、フランス人に愛されている果物のひとつ。フランス産のなかで特に人気があるのは、ガリゲット(Gariguette)という少し縦長の中粒の品種。早生の品種で3月頃から市場に出始めますが、5月が食べ頃。様々な地方で栽培されていますが、ブルターニュ地方のプルガステル(Plougastel)村のガリゲットは、格別に美味しいと評判です。

イチゴの季節になると、街角のお菓子屋さんのショーケースも一層華やかになります。タルト・オー・フレーズ、シャルロット・ド・フレーズ、フレーズ・オー・シャンティなどなど、大人も子供も大好きな定番のデザートが出揃います。なかでも、フレジエ(Fraisier)という、丸ごとのイチゴがごろごろ入った、クリームたっぷりのスポンジケーキが大人気。この季節にしか味わえない期間限定のケーキです。

フランスで一番人気のイチゴ、ガリゲット。ブルターニュ産です。
イチゴをふんだんに使った春のケーキ。左がフレジエ(FRAISIER)。
青空の下に並ぶ新鮮な春野菜たち

この季節は美味しい春野菜もいっぱいです。グリンピース、そら豆、新玉ねぎ、新かぶ、にんじん、ズッキーニ、ラディッシュ……色鮮やかな野菜は、それだけで目にも舌にも贅沢なご馳走です。フランスでは春野菜を使ったレシピも豊富。春は子羊も美味しいので、新かぶをメインに小玉ねぎ、人参などと煮込んだ料理、子羊のナヴァランが食卓によく上ります。また、いろいろな野菜をル・クルーゼなどの鍋でシンプルに蒸煮してオリーブオイルで仕上げる野菜のココットも美味。魚や肉のソテーなどに良く合います。

フランスの春野菜の女王といえば、何と言ってもホワイトアスパラガス。星付きレストランのシェフたちにも愛されている高級食材です。ところで、ホワイトとグリーンの違いは栽培方法だということを知っていましたか? ホワイトアスパラガスは日光が当たらないように盛り土をした土の中で育った若芽を地上に出る前に収穫したもの。若芽が地上に20cmほど出た後で収穫したものがグリーンアスパラバスです。さらに、フランスには穂先だけが地上に出て紫がかった頃に収穫する、香りのよいヴィオレット・アスパラバスもあります。

ルイ14世がこよなく愛し、ヴェルサイユ宮殿の温室で栽培させたというホワイトアスパラガス。エシャロット入りヴィネグレットソースを添えて冷たい前菜と頂いても、穂先の部分を良質なバターとパセリで絡めてアツアツで頂いても最高です。SIMPLE IS BEST !

つくしに似た、細い野生のアスパラガス(アスペルジュ・ソヴァージュ)もあります。バター炒めにしてもおひたしにしてもおいしい。
ホワイトアスパラガス(アスペルジュ・ブラン種)の産地として有名なのは、ボルドーのあるランド地方、アルザス地方、ロワール地方など。
ホワイトアスパラガスとそらまめの前菜を作ってみました。合わせたワインはサンセール地方のオーガニックの白ワイン。
瑞々しい春の新野菜たち。