from 北海道(道央) – 21 - 小樽雪あかりの路。

(2010.01.13)
小樽運河会場では、各種団体が作ったモニュメント(光のオブジェ)を楽しむことができます。

北海道。2月は「冬のイベント」花盛り。

2月になると、北海道内では一斉に「冬のイベント」が開催されます。観光客の月別の平準化を図るためには、多少時期をずらして1月に開催されたりするイベントがあってもよいのでしょうが、年末年始を挟んで準備しなければならないという都合や降雪量などを勘案すれば、どうしても2月に集中してしまうのでしょう。

北海道の冬のイベントで国際的にも有名なものは「さっぽろ雪まつり」ですが、小樽では、市民を中心とした手作りの、とてもロマンティックな小樽ならではのイベントが開催されます。

1999(平成11)年に始まり、今年で12回目となる「小樽雪あかりの路」。今年は、2月5日(金)から2月14日(日)までの間に開催されます。

「小樽雪あかりの路」公式ホームページ
 

小樽運河の水面にはガラスの「浮き玉キャンドル」が400個も浮かびます。浅草橋方面からの光景。
小樽運河、運河沿いに立ち並ぶ倉庫、さらには浮き玉キャンドルが一体となり、幻想的な空間に引き込まれます。浮き玉の中に入れられる蝋燭も、小樽のメーカーによるものです。
小樽運河に浮かぶガラス職人さんたちによって作られた「浮き玉キャンドル」。17時の点灯に備えた事前点検も欠かせない作業です。
日中の運河公園前では、「浮き玉キャンドル」を見学することもできます。

 
雪質の変化は、地球温暖化による影響か?

北海道に長く住んでいて感じることは、「雪質」が変化していることです。

札幌に住んでいた大学生時代、夜ススキノでお酒を飲み、自宅まで独り歩いて帰る路。

「しんしん」と降り続く雪は「さらさら」していて、降り積もった粉雪の上を歩いていると、「キュッキュッ」という自分自身の歩く音が冬の夜の静寂さの中「心」に響く。そういう「雪質」だったと記憶しています。

地球温暖化の影響かどうかは分かりませんが、最近はむしろ湿った雪が降り続き、去年の「小樽雪あかりの路」の期間中も、どちらかと言えば「霙(みぞれ)」に近い雪が降り続いていました。

そうした雪質の変化は、雪を素材としてオブジェを作ったり、スノーキャンドルを作ったり、あるいは作り上げたオブジェなどを維持管理する皆さんのご苦労に、大きな影響を及ぼすことになります。
 

「スノーキャンドル」。これら一つ一つが小樽市民を中心としたボランティアによる手作り。手作りならではの「イベントの暖かさ」を感じることができます。
手宮線跡地にも、様々な光のオブジェが出来上がっています。
会場を離れた小樽警察署前にも、イベント期間中このような飾り付けが行われており、市民の目を楽しませてくれています。このほか、それぞれの自宅や店舗の前に、期間中スノーキャンドルを飾られている建物も多く、小樽全体が「雪あかり」に充たされます。

 

詩集『雪明かりの路』。

伊藤整(いとう・せい)。1905(明治38)年-1969(昭和44)年)をご存知でしょうか?

自分にとっては、いわゆる「チャタレー事件」といわれる『チャタレー夫人の恋人』(D・ローレンス著)が刑法第175条で定める「わいせつ物頒布等」に該当するとされましたが、同条がそもそも日本国憲法第21条第1項に定める「言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」という規定に違反するか否かの「合憲性」について争われた事件の主体としての印象が強く残っています。

詩人でありながら、『チャタレー夫人の恋人』の翻訳を行い、さらには自伝的長編小説を執筆するなど、幅広く活動された伊藤整。

北海道・松前(まつまえ)に生まれ、翌年、小樽・塩谷(しおや)に移ったとされ、小樽高等商業学校(現在の小樽商科大学)を卒業し、1926(昭和元)年21歳のときに最初の詩集であり、このイベントの名称となった『雪明かりの路』を自費出版したのです。

この詩集『雪明かりの路』に掲載されている「雪夜」に表現されている小樽の冬の情景は、「雪のあらし」と嵐が過ぎ去った後の情景を描いており、のほほんと酒を飲んで自宅へと歩いて帰る自分自身の姿からはほど遠い情景でありながら、当時の小樽の人々の生活感が感じられる力強い情景とも言えるでしょう。

なお、『雪明かりの路』が「道」ではなく「路」になった由縁については、『若い詩人の肖像』(伊藤整・講談社文芸文庫)を是非ご一読くださいませ。

 

是非とも小樽に宿泊して「小樽雪あかりの路」へ!

さて、前置きが長くなりましたが、「小樽雪あかりの路」は小樽の町内会、市民ボランティア、団体、さらには韓国からのボランティアの皆さんなどによる「手づくり」「参加型」のイベントであり、「キャンドルの灯り」によって小樽運河や手宮線跡地を中心会場として街全体が覆われるという、とても幻想的な小樽の「冬のイベント」なのです。

期間中17時から21時までの間、キャンドルは灯されています。親子連れ、カップル、仲間同士など、全国各地から小樽に人々が集い、賑わいます。また時節柄、スキーで来道されている外国からのお客さまも多く足を運ばれています。

キャンドルが灯されていない日中も、ボランティアの皆さんが「キャンドルボール」や「モニュメント」の修理を行っている場面を通して、小樽市民や韓国からのボランティアの方々との会話や交流も楽しむことができます。

この機会に小樽に足を運んでいただき、是非とも小樽に宿泊してみてください!!

幻想的な雰囲気を味わった後に、「寿司」はもちろん、小樽の美味しい料理に舌鼓を打たれ、心ゆくまで小樽の冬の魅力を、日帰りでは楽しむことができない宿泊という形で触れていただければと思います。(小樽のお寿司屋さんなどは、次回以降にご紹介したいと思います。)
 

幻想的な雰囲気を味わった後には、是非小樽のお店で様々な味覚を楽しんでみてください!!
手宮線跡地に設けらる「雪のトンネル」。夜はスノーキャンドルが立ち並び、柔らかな光に囲まれたトンネルの中は「美しい」という感動を味わうことができます。
各種飲み物が準備されている「アイスバー」も用意されています。
日中、モニュメントを修復する作業を行っている韓国からのボランティアの皆さん。短い期間ではありますが、小樽市民との国際交流の場ともなっています。
韓国人ボランティアによる作品。人面模様の瓦である「新羅時代の微笑」をモチーフに。
韓国人ボランティアによる作品。韓国の伝統的模様であり、門・飾り物・家具などに使われている「ジョントンムンヤン」を表現。今年はどのような作品が作られるのか、楽しみです。

☆ちなみに、札幌・小樽間は、JR快速エアポート(1時間に2本)を利用すれば最短で32分。また、JR快速エアポートは、その名の如く、新千歳空港始発・小樽終点ですので全国の各空港からのアクセスは非常に便利です。

※写真はすべて去年のイベント時に筆者が撮影