土屋孝元のお洒落奇譚。今朝、起きたら霧でした。
ニューヨーク郊外の霧の思い出。

(2012.11.26)

グッケンハイムの前あたり
休戦記念日のパレードに遭遇。

東京でこんな霧に会うのは久しぶりというか珍しいです。昨夜からの雨で地上に湿度が残り日の出の気温の変化とともに霧が発生したのでしょうか。昔、ロケーションにて体験したニューヨーク郊外の霧を思い出しました。

ちょうど今ぐらいの季節で、ロングアイランドへ移動する前にマンハッタンにて打ち合わせがあり打ち合わせを終えてセントラルパークを少し出たところ、グッケンハイムの前あたりだったでしょうか、休戦記念日のパレードに遭遇しました。セントラルパークの横で見ていた僕達の前をいろいろな色の団体が行進して行くのです。それはそれは壮観な眺めでした。

マンハッタンの風景。星条旗がいっぱいです。

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中でも目を引いたグリーン、このグリーンもアイリッシュグリーンと言われる色でビリジアンや普通のグリーンとは違いC100%+Y100%のパーマネントグリーンよりはやや黄色みが強いC80%+Y100%くらいの優しいグリーンでした。このグリーンからの連想で、前に見たマイケル・コリンズの映画を思い出しました。その映画の中で僕はアイルランド独立の事を知りましたが、第一次世界大戦後イギリスからあれ程の弾圧があったとはまったく知りませんでした。

これも余談ですが、アイリッシュポプリンの質感が好きでそのネクタイを見かけると購入してしまいます。今でも日本橋丸善のネクタイ売り場で扱っていると思いますがさてどうですか? ネクタイ好きな方はお調べください。

可愛い制服のチアリーダー達。
楽しい
出身国別のパレード。

話は戻り パレードの長さはおおよそミッドタウンからエンパイアを超えワシントンスクエアぐらいまでは伸びているように見えます。女学生のチアリーダーを先頭に学生や消防士のマーチングバンドが続き、お巡りさん、消防士さん、退役軍人の人々、ボーイスカウト、ガールスカウト、などなど、ここニューヨークでは毎週末に自分達の出身国別のパレードがあり偶然に居合わせるとこれもまた楽しいものです。

パレードのミス・ニューヨーク

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話をロングアイランドに。

この季節、ハロウィンからサンクスギビングデーのオーナメントの飾りが各家々ごとに趣向を凝らし、それぞれの家々の前に飾られていて微笑ましく見たのを思い出しました。お金を掛ければ良いものができるとは限りませんね、その人のセンスでしょうか。ハッとする様な取り合わせ、カボチャと箒とブリキのちりとりの飾りもあり、このブリキの錆び具合に味があるというか良いのです、美しいと思いました。

最近は日本でも盛んなハロウィンですが、こちらニューヨークのカボチャの大きさには言葉を失うくらいです。100kgは軽く超えるようなカボチャ達が飾られているのですから、一人では運べないし、終わったあとは食べるのかどうするのだろうかと思ったのを記憶しています。

ニューヨーク郊外、ハロウィンのカボチャ売り風景。
霧の中の撮影隊、
ブルーモーメントを待つ。

霧の話に戻り、ニューヨーク。この時の撮影では早朝2時にホテルを出て、ホテルと言っても名ばかりのモーテルというかロッジの様なところでしたが、一時間ほど霧の中を車で移動して撮影現場に到着するとまだあたりは真っ暗で何も見えません。それに加えて霧のため隣のスタッフの顔も定かではないような有様です。湿度があるせいか 体感温度はそれ程でもなく、僕の個人的な経験では早春の襟裳岬よりはましで寒いのですが、耳など切れるような寒さとは違い不思議な感覚でした。

スタッフとともにセッティングをしながら日の出を待ちます。この時の日の出は6時前後だったでしょうか、光が差すと霧が晴れ、周りの風景も一変して今まで見えなかった景色が綺麗に見えてきます。

この日の出少し前のこの時間「ブルーモーメント」、風景も植物も建物も人も一番綺麗にに見えて僕は本当に好きな時間帯です。この時間や空気感、その場所の空気の独特な匂いをいろいろなところ……マンハッタン、サンフランシスコ、ベネディクトキャニオン、デスバレー、オーランド、マイアミ、バンコク、ビクトリアピーク、カオルーン、クライストチャーチ、オークランド、オン・フルール、ブローニュ、モン・サンミッシェル、ドービル、アンカレッジ、ワイレア、プーケット……経験してきましたが何度経験していても美しいと思います。

たしか、モネさんの絵画にも『印象・日の出』( Impression, soleil levant )というタイトルの絵があったかと思いますが、モネさんもこの光や空気感を愛していたのでしょう、あの睡蓮のシリーズではこの時間の水面に映る光の揺らめきや一瞬の輝きを描いているように見えました。