from 鳥取 – 50 - 透き通る海と迫力の断崖。スリル満点の海上冒険へ。

(2010.06.23)

紫陽花の美しい季節になりました。少し遅めの梅雨入りでちょっぴりお疲れモードだった花たちも、やっと訪れた恵みの雨に打たれ、しっとりと咲き誇っています。

さてその梅雨の晴れ間、鳥取県の東端・岩美町にある浦富(うらどめ)海岸で夏を先取りしてきました。リアス式の入り組んだ海岸にはいくつもの小島が浮かび、遊覧船による島めぐりが人気の場所です。その島めぐりに先月ニューフェイスが登場、その名も「うらどめ号」。全長7.5m、総重量0.9t、12人乗りの小さな船ですが、そのコンパクトさゆえに驚きの海上散策ができると、もっぱらのウワサです。

実際この目で見てみたいと、早速出かけます。晴天&微風という絶好のお天気のなか、出航です。

地元出身の伹井(たい)船長のガイドで、船は沖へと進みます。小型船といえども、スピードはけっこうなもの。水しぶきがバンバンかかり、早くも潮まみれ。やはり日本海、侮れません。

気を取り直し、ここからが小型船の本領発揮です。リアス式の入り組んだ海岸線にぴったりと沿うように、徐々にスピードを落としゆっくりと進みます。日本海の激しい波や風雪が創り上げた、壮大な自然美をじっくりと観賞します。ほとんどは花崗岩(かこうがん)と呼ばれる種類の岩で、ある場所はブロック状に、またある場所ではたくさんの石のまじった岩肌を見せています。色も赤茶色、黒色、黄色などその岩の成り立ちにより違いがあり、自然の驚異を感じます。なかには高さ70mもの断崖もあり、そのずっしりと迫るような迫力に圧倒され、思わず「うわっ~」と声が出てしまいます。
 

今日の主役、うらどめ号。小さな腰掛があるだけのシンプルな造りにいささか不安が…。しかしこの後、抜群の機動力で驚かせてくれます。
その大きさ、その存在感に圧倒されます。なかには野生の海鵜のふんが白くお化粧したように見える“白粉(おしろい)の断崖”と呼ばれるものも。

そそり立つ断崖ばかりを見上げていて首がちょっと痛くなった頃、ふと下を見るとすばらしい海原が広がっています。水深25mという驚異的な透明度を誇るこの海。岩にはりついたわかめがゆらゆらゆれ、海底に沈む石や砂がはっきりと見えます。ここで水中観察タ~イム! 箱めがねを使って水中をのぞきます。サザエやあわび、小さな魚たちが太陽の光に照らされ、生き生きと暮らしています。この日はなんとネコザメまで現れ、船内は大興奮。これからは海水温度の上昇とともに生き物の数は増え、9月頃には色鮮やかな熱帯魚も見られるとか。楽しみです。

 

けっこう重たい箱めがねですが、さすがによく見える! 岩の間にいる貝や小さなエビなどが動く様子もバッチリ。残念ながらネコザメは動きが速すぎ、撮影失敗でした…。
みんな夢中でのぞきます。写真の左端に小さな魚がいるの、見えますか?

いよいよメインイベント! 洞門くぐりがやってきました。小型船だからできる最大のお楽しみです。
実際に近づいてみると、意外な大きさや造形の不思議さなど手に取るようにわかります。洞門をくぐっている時間は短いですが、し~んと静まり返る不思議な瞬間がありとても神秘的です。

コースには洞窟もあります。もちろん行き止まりなので中には入れませんが、伹井船長の熟練の舵さばきでほんの少しのぞいてみることができました。薄暗く大きな口を開けた洞窟はさすがに不気味。これからの季節にはぴったりのクールスポットかもしれません。
 

奥行き20mの洞門を有する“千貫松島(せんがんまつしま)”の洞門くぐりへ、いざ。通れるとわかっていても、ちょっぴりドキドキ。スリル満点です。
うらどめ号就航のため、新たに色々と勉強をした伹井船長。しかし「お客様からの疑問や質問など生の声を生かすのが一番。」と、日々わかりやすいガイドを目指し奮闘中だ。

1周約50分間のクルージングは、まさに冒険。大海原に漕ぎ出す爽快感、奇岩・断崖が迫る緊張感など、ドキドキ・ワクワクがたっぷり味わえます。またエメラルドグリーンに輝く小さな入り江などは、まるで映画のワンシーンを見ているかのよう。ウットリ幸せな気分にさせてくれます。

今秋には、地質学分野の世界遺産とも言われる「世界ジオパーク」への認定が期待される浦富海岸。そのすばらしい自然をもっと詳しく知りたい人は、うらどめ号の乗り場から車で10分足らずの“山陰海岸学習館”がおすすめ。4月にリニューアルされ、地質地形模型などを使いさらに詳しく、よりわかりやすく学べます。また隣接する“渚交流館”ではカヌーやシュノーケリングなど、体験メニューが豊富。海中からの眺めもまた格別です。どれもまさに今が最高の季節。この夏は、日本の魅力を再発見する旅、鳥取で楽しみませんか。

断崖絶壁、小さな入り江、奇岩、小島。ぐるり360度どこを見ても不思議で神秘的な光景。島影に入ると風もなくなり、静かな波音だけが響きます。

 

【お問い合わせ】

山陰松島遊覧
遊覧船乗り場には、新鮮な海の幸を味わえるお食事処やここだけ限定のお土産もあり。

山陰海岸学習館
日本海の海底地形模型を見下ろせる立体展示物のほか、生物の標本や化石なども展示。

渚交流館
各種体験メニューの予約を受付。