from ハワイ – 7 - 秋から冬へのハワイ。

(2009.11.16)

カリフォルニアあたりの学校が夏休みを終える9月、観光客もめっきり減ってハワイは束の間の休息に入ります。エルニーニョの今年はドッピーカンに照りつける太陽にあえぐむし熱い夏でした。明け方にお湿り程度の雨が降った10月9日には、ノースショアにこっそり小さな波が戻って来ました。気がつけば秋の気配。

子供たちが楽しみにしているカウンティフェア*のシーズンです。ローラ・インガルスの物語にも出てくる古き良きアメリカのお祭り、カウンティフェアは夏から秋にかけて全米のあちこちで催される地域のお祭りです。ハワイではオアフ島アロハスタジアムのステートフェアが5月から6月にかけて、カウアイ島リフエカウンティフェアが8月末,その後ハワイ島ヒロカウンティフェアが9月中旬、最後がマウイ島カフルイで10月上旬に締めくくられます。

観光客でも気軽に楽しむことのできるこのカウンティフェアですが、移動遊園地が各島をまわるためか夏から秋の間に少しずつ時期をずらしながら催されます。さらに土日を絡めるため毎年少しずつスケジュールのずれがあるので、各島役所のウェブサイトでもチェックする事をお薦めします。

フェアは通常木曜日から週末にかけての4日間。初日のパレードから始まって,コンサート,牛や馬といった家畜・農作物・園芸・手芸や絵画工芸品、警察・消防・地元スモールビジネスの展示,教会やカヌークラブなどが作る食べ物の出店、そして子供たちの大好きな移動遊園地と内容盛りだくさんです。

入場料は大人が$5、5歳〜11歳の子供が$2、5歳以下の子供は無料となっています。入場料と食べ物、乗り物はそれぞれ別料金のため一家をあげて楽しむとなるとかなりの出費になる、親たちには結構つらいお祭です。

カウンティフェアの4日間は、連日深夜2時ぐらいまで夜空にこだまする絶叫を聞きながら、過ぎてゆく夏を思うのです。

参加する人の方が見る人より多い? パレード。ボーイスカウトや、チアリーダー、劇団など参加者も様々。沿道に椅子を持ち出してゆったり眺めるのがハワイ流。
それぞれのフードブースで買って特設テント内で食べる、大食堂みたい。人種のるつぼハワイの縮図を見ているようで楽しい。食べ物はBBQプレートからマルサダまでいろいろ。
地元芸能界の花と言えばやっぱりフラ。地元ハラウの踊りに大勢の家族や友達から大声援。ハワイアンの大物歌手も気軽に出演。いつもと違う表情を見せてくれる。
大きなハワイの人を何年も乗せて頑張る、古くて小さい組み立て式移動遊園地。昔からずっと同じと聞いて、そんな分けないだろ?と、突っ込んでみるけど、あり得る……。

カウンティフェアで軽くなった財布を次に襲うのは、10月31日のハロウィーンです。カボチャと「Trick or Treat」でおなじみのハロウィーンはもともとキリスト教カトリックの万聖節にまつわるかなりダークなお祭りですが、合理的商業主義とぴったりマッチした今日のアメリカでは、かなり明るく楽しいお祭り騒ぎに様変わりしました。

仮装やらお菓子やら子供のいる家庭では避けて通れないこのお祭り、カボチャをくりぬいて作ったジャック・オー・ランタン(ジャコランタンと発音)と呼ばれる飾り付けをして、お菓子を買い込み、暗くなってから現れる子供たちに備えます。騒ぎに参加する気のない家庭では、お菓子を集めにくる近所の子供たちをいかにやり過ごすかが課題、選択肢は二つあります、電気を消して一晩ひっそり過ごすか同じような友達同士で集まって飲むかです。

当日は夕方4時ぐらいから仮装した子供を連れた親がまずショッピングセンターに繰り出します。あちこちのショッピングセンターではイベントが催され、子供たちは安全にお菓子が集められる訳です。 

そこでしこたま集めた後はご近所にもどって本番、6時から8時の間がピークアワーです。10月と言ってもまだ暖かいハワイ、子供たちは仮装で汗をかきながら一杯お菓子を集めます。

さてバケツや枕カバーに集めたお菓子は持ってかえられると親の検品を受けます。「あら、これは高いお菓子あそこの家は奮発したわね」「これはまずいから学校で誰かにあげておいで」。魔女もゴーストもどこへやら、おとぎ話から現実にもどる瞬間です。でも、検品には訳があるのです。

60年代頃まではこの日には人種や障害者差別暴行が横行していたというからハロウィーンはやっぱりダークです。 20年ぐらい前まではリンゴに針を入れられたり、キャンディーに毒をぬられたり、子供が被害に遭う気持ちの悪い事件が後を絶たなかったため、今ではフルーツや個別包装されていないお菓子はタブーになりました。     

ダークな部分が過去のものになり、今日のような平和な楽しいお祭りとしてのハロウィーンが続くことを願ってやみません。

魔女の仕業かハワイになぜかパンプキンパッチが出現。いろんな色や形のパンプキンの中から好きな大きさや色を選んで買う。値段はかなり適当で$3〜$10ぐらい。
ショッピングセンターでは格店舗ごとにお菓子を用意してこの日に備える。正直言って夕方からは商売あがったり。でも、みんな楽しいからそれでOKなんですね。
スーパーマッケットの冷蔵庫にはまるまると太った七面鳥肉。卵みたいに大きさ別に分けられて「お1人様1日2個まで」の大奉仕価格で値段は1個$4〜$6ぐらい、安い!!

オアフ島ではワイキキのカラカウアアベニューに夕方から仮装した人達が集まります。ゴージャスなドラッグクィーンやショーガール、「プロ」が多いワイキキですから夜遅くなればなるほど“濃い”人達が見られます。マウイ島ラハイナのフロントストリートも有名ですが、こちらの方はもう少し素人っぽく手作りの凝った着ぐるみや仕掛け付きの仮装をする人が集まります。ハワイ島ではコナ、島ごとにお祭り人間の集まるスポットがあります。

無礼講が暗黙の了解となるハロウィーンナイトはワイキキでは建物からビール瓶をなげる暴漢も現れるのでくれぐれも気をつけて。

いよいよ11月になると朝のテレビニュースに“コロラドで初積雪、高速道路でスリップ事故”なんていうのが飛び込んできます。こういうのを見てハワイの人は「ああ、冬が来るわあ」と感じるのです。

ハロウィーンのお菓子でふくれかえった冷蔵庫にお母さんが冷凍の七面鳥をねじり込むといよいよサンクスギビングの準備です。

11月の第4木曜日、 サンクスギビングはアメリカ建国当時を忍ぶお祭りです。17世紀にイギリスから渡って来た最初の清教徒たちが先住インディアンから、トウモロコシなど収穫物を分け与えてもらったことから感謝の意「Thanks Giving」を表し、忘れない様につくられた国のお祭りです。先住インディアン系の人達はお祝いしないそうですが、(アメリカという国は実に複雑です。)多くのアメリカ人家庭では丁度日本のお正月的なお祝い事として浸透しています。

サンクスギビングはディナーがメイン、離ればなれになった家族が一年に一度集う日でもあります。ハワイではメインランドに住んでいる家族や、他島に住む家族の大移動があるのでインターアイランドエアーが大変混雑します。

またホストにあたる家族の家では当日の朝はニューヨークから中継されるMacy’のパレードやフットボールをテレビで見乍らローストターキー(七面鳥)の準備です。午前中は買い忘れた食料品やビールを買う人でスーパーも大忙ですが,午後にはみんなクローズしてしまい街は水をうった様に静まり返ります。

ホームレスたちには教会や慈善団体からターキーディナーが配られ、みんな誰かの事を思って優しい気持ちになる日なのです。

かつてアメリカの小売業界は10月末のハロウィーンをかわ切りに、続くサンクスギビングとクリスマスの約3カ月間で、一年の売り上げの60%近くを稼ぎだすと言われていました。確かに,カウンティフェアからはじまる秋のイベントは財布に優しくないこと目白押しです。

サンクスギビングが終わればクリスマスまで残り1カ月です。プレゼントのリストアップや離れた家族への郵送、ツリーの飾り付け、パーティ、カードの用意……。誰もがクリスマスの準備に本腰を入れ始めます。

ハワイの短い秋は毎年こうしてあわただしく過ぎ去って行くのです。

 

*カウンティフェアのカウンティとは郡の意味。ステートフェアのステートはもちろん州。ハワイではオアフ島のフェアだけがステートフェアと呼ばれ,他の島ではすべてカウンティフェアと呼ばれています。

全島のスケジュールは以下の遊園地のサイトで確認出来ます。
http://www.ekfernandez.com/comingevents.html