from パリ(たなか) – 3 - タンポポのサラダをパサージュのレストランで。

(2009.05.19)

パリの4月は夏時間なので、午後8時半ごろからようやく薄暮となり暗くなるのはなんと9時!だ。パリに来て10日、時差ぼけも無くなり、長く続く夕方の時間帯にもようやく慣れてきた。午後が長いせいかパリの人は晩ご飯を食べる時間も遅い。レストランもほとんどが7時半以降からの営業となり、店が賑わうのは9時頃だったりする。

オペラ座近くのサンタンヌ通りR.Ste.Anneには日本料理店が多い。パリとは思えない風景だが、何軒もあるラーメン屋は若いフランス人で行列ができる盛況ぶりだった。しかし日本人たる者、パリに来てまでラーメンを食べる気にはまだなれない

オペラの近くで仕事の打ち合わせが終わった夜8時ころ、スタッフと食事に行こうということになり、イナバさんにレストランを案内してもらう。パレ・ロワイヤル裏Rue des Petits Champsのコルシカ料理の店へ歩いて向かったが、残念ながら花金(パリにもあるか?)ということもあって満席。予約なしでレストランへ行くのはリスクが高いのは東京と同じ。急遽、近くにある第二候補のビストロへ進路変更する。

この界隈にはパサージュと呼ばれる、日本で言うところのアーケード街がいくつか残っている。イナバさんの説明によると、19世紀初頭に鉄とガラスの最先端技術を駆使して出来た屋根付き商店街で、右岸の繁華街に多いそうだ。百貨店の出現などにより時代の流れにとり残されたそうだが、伝統皮工芸品や古書店、家具、アクセサリーなどを売る魅力的な専門店が軒を連ねている。第二候補のレストラン『Bistrot Vivienne(ヴィヴィエンヌ)』は、そんなパサージュの角にあった。

『たんぽぽのお酒』というブラッドベリの小説がある。読んだのはあまりにも昔のことで、内容はほとんど忘れたが、そのタイトルに惹かれてこの前菜を選んだ。メニューを読み取れるほどのフランス語力はまだないので、イナバさんに訳してもらった次第。南仏産の白いタンポポの葉は、ほのかに青い初夏の草の香りがした

店に入る時には暗くて気がつかなかったが、案内されて店内を奥へ進み、再びドアを抜けて通された席が中庭ではなくパサージュだったのでびっくりした。夜ではあったが、広い空間でゆったりと食事をするのはいい気分だ。この晩私が選んだメニューは、タンポポのサラダ、“小さな鳥”のグリル、デザートはシトロンとヴァニラのソルベ。終電近くまで、食事とおしゃべりを楽しみながら、幸せな春の夜長を過ごした。

夜になるとパサージュの扉は閉ざされ、このレストランの専用中庭となる。向かいは有名なワイン専門店だそうだ。私は体質的にアルコールと仲が悪く、おいしい料理をワインで楽しむということが出来ない。フランスに来てワイン飲まないなんて、人生の半分を楽しんでないかも?と思うと、残念ではあるが
小さな鳥(写真左下)というのが、もう少し小さい?と勝手に思っていたのだが……鶏の小さいのはやっぱりこんなものか。小さなテーブルに5人分の皿が乗って寿司詰め状態。右の皿はセップ茸(ポルチーニ)の料理、奥はタルタル。メニューのイメージと実際に出てくる料理の一致度が私の場合まだ低く、レストランの注文では毎回サプライズの連続だ。経験を積まなくてはいけない