土屋孝元のお洒落奇譚。パリのお気に入りアドレス パッサージュ、ふたつ。

(2014.12.18)
パッサージュ『ギャラリー・ヴィヴィエンヌ』のエントランス。パリで一番美しいと言われるパッサージュの美しい天井と壁、床の風景です。
パッサージュ『ギャラリー・ヴィヴィエンヌ』のエントランス。パリで一番美しいと言われるパッサージュの美しい天井と壁、床の風景です。
パリに行くと必ず訪れるパッサージュ
「ギャラリー・ヴィヴィエンヌ」

パリにはパッサージュと呼ばれる 日本で言うところのアーケード商店街があります。正確には印象はちょっと違うのですが……。

作られたのは時代的に19世紀末から20世紀初頭。アールヌーボー様式時代に作られ、今も残るのはパレロワイヤルの北側に数カ所くらいです。

僕は、そのパッサージュのひとつ『ギャラリー・ヴィヴィエンヌ Galerie Vivienne』にはパリを訪れるたび 必ず足を運びます。まず入口の装飾が素晴らしい。メトロ入り口のアールヌーボー様式のエントランスが30数年前のパリにはたくさんありましたが、今ではメトロの改装工事により少なくなりました。

それと同じ様なアールヌーボー様式の入り口の装飾、中に入ると壁から床のタイルの素晴らしいこと、天井のガラスからの光がまた綺麗なのです、誰が撮っても美しいポートレイトが撮れる? かな。

パッサージュ・ヴィヴィエンヌについてもう少し詳しく。ここには布地屋さん、古本屋、時計の修理屋、地図屋、サロン・ド・テ、インテリアショップ、帽子屋さん、などなど、このようなお店が並んでいます。

 
修理屋さん、帽子屋さん
お気に入りのお店がたくさん。

僕は時計の修理屋さん『Garde-Temps』にて時計ベルトを付け替えてもらうことが多いですね。東京では銀座4丁目角の有名時計店でもスイスのジャガールクルトへ発注してから約2ヶ月くらいは待たされて、届いたベルトの色が今いち気に入らないなんてコトもあるのですが、ここでは気に入った色があればその場で10分くらいできちんと付け替えてくれます。お爺さんがひとりでやっている修理屋さんで価格的にもリーズナブルでとても助かります。

地図屋さんもよく見に行くお店です、地図屋さんというか古本絵葉書の『Libralrie Jousseaume』。パリやヨーロッパの都市の地図がいろいろと揃っていてナポレオン3世以前の都市計画前のパリ全図とか、なかなか面白いのです。

帽子屋さん『Cellne Robert』でも以前 バスク帽、(ベレー帽)を購入しました、男が被って様になるベレー帽はなかなか見つからないのですが、ここのお店にはサイズや種類が豊富で自分にあったものが見つかりました。

本の背表紙。美しい本は見ていると気持ちが豊かになります。
本の背表紙。美しい本は見ていると気持ちが豊かになります。
オープンテーブルで休んでいるとやって来た
中年男性。彼の職業は……。

ある時、このパッサージュにあるサロン・ド・テ『APriori The』のオープンテーブルで休んでいるとこのカフェに中年の男性がやって来て、おもむろにパソコンを開き仕事を始めました。多分編集者か、そのようなもの書きの仕事をする人なのかなと、何気なく観察していると、そこへ待ち合わせの老年、いや中年の男性がやって来て打ち合わせをしていました。たぶん これから食事にでも行く相談でしょうか。しばらく話してからまとまったのか何処かへ出て行きました。

オープンカフェで休んで観察していると、いろいろな人達がこのパッサージュを訪れているので面白いのです。いちばん人数も多いのはアメリカ人の団体でパッサージュを巡り観光するツアーなのかな? と思う一団です。天井や床のタイルを熱心に写真に収めていきます。

次に面白かった一団は、自転車でパッサージュ巡りをするツアーで、みなフランスの人達でした。この界隈にはパッサージュが幾つかあるのでそのパッサージュを巡るのでしょうね。パリではレンタル自転車システム『ヴェリブ Vélib’』があり誰でも使うことができ便利ですが、この人達は自前の自転車でした。

 
パッサージュの床は美しいモザイクタイル。
パッサージュの床は美しいモザイクタイル。
 
もうひとつ、お気に入りのパッサージュ
『パッサージュ・ディ・グランセール』

ここの並びと言ってもかなり歩くのですが『パッサージュ・ディ・グランセール Passage du Grand Cerf』と言うパッサージュもあります。ここにはレストランがたくさんありタイ、中華というかベトナミーズ、コリアンなどのエスニックレストランからのエキゾチックな匂いが漂っています。他には女性の靴屋さん、画材屋、洋服屋、雑貨屋さんが並んでいて少しだけ庶民的な雰囲気です。僕はここの画材屋さんで道具を買います、フランス製品の筆などは日本で購入するよりかなり安く手に入るのでとても重宝します。

ここの靴屋さんには女性ものが多いのですが、色や形がたくさんの種類があり、サンダルもイスラム風、モロッコ風の刺繍を施したものなど並んでいました。

このパッサージュの周りには靴屋さんが多く、昔は職人街で下町の雰囲気が残っていて風情があったのでしょう。日本では浅草橋あたりの雰囲気でしょうか、パリも街角ごとにがらりと変わります。