from パリ(石黒) – 2 - フランスのコーラにまつわるエトセトラ。

(2009.09.11)
フランスでは、全般的にコーラ飲料を、一番古い歴史を誇るコカ・コーラ社の名前にちなんで、「コカ(coka)」と呼ぶ。「コーラ」と呼ぶ日本とは異なります。

タイトルにコーラと題打っておきながら、私自身はコーラ愛飲者とは程遠く、飲まなくなって10数年。カフェで皆がコーラを注文しているのを横目に見ながら、私はシロップを混ぜたソーダ水「ディアボロ」かリモナード。自分が飲まないものだから、私のコーラに関する記憶は、小学生ぐらいの時点で止まっていた。

暑い日には、テラスで、冷たい炭酸飲料を飲んでリフレッシュ。写真左が、ディアボロ・パッションフルーツ。爽やかなオレンジ色がきれい。ディアボロのシロップで定番なのは、ミントやグルナディン。パッションフルーツのシロップは、結構珍しい。

そんなコーラ暗黒時代を生き抜く覚悟だった私に、つい最近、ちょっとした転換点が。それが、この夏、オーヴェルニュ地方を訪れた際に発見した「オーヴェルニャ・コーラ(Auvergnat Cola)」。ご当地ビールならぬ、ご当地コーラ。日本でいうなら、ご当地ソーダのような感覚でしょうか。

「火山の力(La force des volcans)」と銘打ったコーラ。いかにも炭酸が強そうな感じだが、意外とさらっと飲めるよう。パッケージは、オーヴェルニュ地方の雄大な山々と、風景に溶け込んだ牛達からのインスピレーション。この地方の方言で書かれた「全部吹っ飛ばせ!」というスローガンは、読めないだけに、尚一層、恐怖心(もとい、好奇心)をそそります。

フランスでのご当地コーラ発祥の地は、ブルターニュ。2002年から製造が始まったBreizh Colaは、郷土産業の担い手として、もはやブルターニュ名物の一つとしての不動の地位を築くまでに。このコンセプトは、瞬く間に他の地方にも飛び火し、コルシカ島のコーラCorsica Cola、アルザス地方のコーラElsasse Cola、北フランスのコーラChtilà Colaなどなど、今ではフランスご当地コーラが、産業を作り出し、観光産業にも一役買うと同時に、住民もご当地コーラを進んで購入することで、地元意識の高揚にも役立っているようです。フランス旅行の際には、ご当地コーラを探してみる、というのも面白いかも。

それにしても、コーラ飲料には、ゼロ、ライト、ダイエットなど、カロリーオフものから、ゴールドやら、レモン味やら、カフェインレスやら、コーヒー味やら…、バリエーションが豊富なんですね。コーラ飲料は常に発展しているらしいとうすうす感じつつも、これまでは全く未開拓の分野だったのでした。

そんな話をフランス人の友人にしたところ、さらに、ご当地コーラだけではなく、地方ならではの飲み方があることも教えてくれました。その名は、「カリムチョ(Calimucho)」、略して「カリ(Cali)」。赤ワインとコーラのミックスに、氷を加えて出来上がり。ライムを加えることもあるそう。特にスペインで、手軽で経済的なカクテルとして、若者を中心に飲まれるらしく、フランスでは、スペインに近いバスク地方の町、バイヨンヌの夏のお祭りでも、見かけるのだそう。赤ワインを使ったカクテル自体、あまり数多くは無いような気がするけれど、スペインには他にも、フルーツを漬け込んだ赤ワインカクテル、サングリアがありますね。

聞くところによると、ブルターニュ産コーラBreizh Colaは、なんと日本でも手に入る模様。クレープ&シードル、塩キャラメル、そしてクイニー・アマンに続いてブームを作れるか。
スーパーマーケットのオリジナルコーラ。普段、素通りだったコーラ売り場にも、ちょっと足を止めてみることに。お値段は、本家本元に比べてお安めなのが魅力。
カリムチョに使用する赤ワインは、ブドウ品種をよく選んだほうがいい気がする……。裏を返せば、混ぜ具合が非常に奥深いカクテルかも。

最後にもう一つ、フランス人のコーラ事情。体がだるい時、風邪をひいた時は、「コーラを飲め」。フランス人に「ちょっと具合が悪い」と話すと、たいていこの返事。確かに、コーラに含まれているカフェインが、疲れた体に刺激を与えてくれそうだけれど、中には「コーラを鍋に入れ、にんにくのかけらを加え、火にかける。適度に気泡が抜けたら火から降ろし、飲む」というツワモノレシピを教えてくれた友人も。聞いただけでも、刺激が強すぎるこのレシピ。私自身でその効果を試せる日は来るのだろうか……。